簿記は経理や会計事務所で働いていなくても、すべてのビジネスパーソンに役立つ資格です。
しかし、なぜ簿記が役に立つのか、知らない人も多いです。
この記事では、簿記を勉強するメリットや、簿記3級と簿記2級ではどちらが良いのか解説します。
簿記を学ぶデメリットについても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 簿記を勉強するメリット
1) 就職活動や転職活動で有利になる
2) 簿記の知識を仕事に活用できる
3) 起業する際に役に立つ
4) 他の資格へステップアップできる
5) 新聞の経済欄を理解できる
6) 株式投資に役に立つ
7) 家計管理に役立つ
8) 大学入試で有利になる
2. 3級より2級がおすすめ?
1) 3級でもメリットは十分
2) 経理は2級まで必要
3. 簿記を学ぶデメリットは?
4. 終わりに
5. まとめ
1. 簿記を勉強するメリット
簿記を取得すると、転職活動や大学入試で有利になり、その後の社会人生活でも役に立ちます。
ここでは、簿記を勉強するメリットを紹介します。
1) 就職活動や転職活動で有利になる
簿記は就職活動で有利になる資格として知られています。
特に銀行や証券などの金融業界では、簿記の知識が必須とされ、就職活動を有利に進められるでしょう。
学生のうちに簿記の資格を取得すれば、目標を持って学業に取り組んできたことをアピールでき、面接でのアピールポイントにもなります。
金融業界に就職するために、簿記を取得したと面接で伝えれば、本気度が伝わるでしょう。
転職活動においても、簿記の知識は役立ちます。
経理や会計事務所に転職をする場合、未経験では採用されないことがほとんどです。
しかし、簿記の資格を取得していると、即戦力とみなされて採用される確率が上がります。
(参考「簿記2級・3級は転職に有利?履歴書の書き方もご紹介!」)
2) 簿記の知識を仕事に活用できる
簿記の知識は、ビジネスパーソンにも役立ちます。
簿記は経理や会計業務に就いている人に必要だと思われていますが、実際は多くのビジネスパーソンに必要な知識です。
営業職であれば、自社の決算書などを読めるようになり、経営的な改善点やリソースを投入すべきポイントを判断できます。
また、営業先で経済や金融の話ができるようになり、経営者とも同じ視点で会話ができるでしょう。
会社で働いていると、経費の精算の際などに、出金伝票を作成する機会があります。
なぜ出金伝票が必要なのか、出金伝票はどのように処理されるのかなどは、簿記の知識がないと理解できません。
日々の仕事の仕組みを理解しながら働けば、より大きな視点で俯瞰的に仕事に取り組めます。
簿記の知識がない人よりも評価され、業績の向上にも寄与して、昇進に近づくでしょう。
3) 起業する際に役に立つ
起業をすると日々の会計処理や法人税申告(確定申告)を、自分でおこなう必要があります。
税理士に依頼したり、経理の社員を雇ったりもできますが、起業直後は資金的余裕がなく、経営者自らが作業することがほとんどです。
簿記の資格を取得していれば、小さな会社あれば自力で確定申告が可能です。
会社が成長して大きくなり、税理士に会計処理を依頼したとしても、経営者は財務諸表から会社の状況を読み取る必要があります。
税理士からは定期的に経営状況の報告がありますが、簿記の知識がないと何を言っているのか理解できません。
財務諸表を読めれば、数字から経営状況の変化をすぐに発見できて、業績を改善するための策を講じられます。
4) 他の資格へステップアップできる
簿記の知識は、簿記検定以外にも多くの資格で役立ちます。
例えば、税理士試験の受験資格の一つに、「日商簿記検定1級合格者」があります。
簿記検定1級を持っていることにより、税理士の受験資格を得られるのです。
その他にも、以下の資格では簿記の知識が必要となります。
・中小企業診断士
公認会計士は日商簿記1級以上の知識を求められる、会計資格の最高峰です。
簿記1級に合格できないようでは公認会計士に合格するのは難しく、簿記検定は公認会計士を受験するための試金石になります。
中小企業診断士の試験科目には財務・会計があり、会計帳簿や決算処理に関する問題が出題されます。
一次試験の財務・会計は、簿記2級の知識があれば合格できるとされていて、勉強時間を大幅に減らせるでしょう。
その他にも、会計関係の資格は、以下のようにさまざまな種類があります。
・建設業計理士
・財務報告実務検定
・米国公認会計士
・経理・財務スキル検定
(ビジネス会計検定については「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」も合わせてご確認ください。)
簿記を勉強すれば、上記の資格を取得するための近道にもなります。
簿記の知識を持っていると、人生の選択肢を広げて、さまざまな業界にチャレンジできるでしょう。
5) 新聞の経済欄を理解できる
新聞の経済欄には、会計や金融の難しい専門用語が出てきて、内容を正確に理解できないことがあります。
簿記を勉強すると、以下のような専門用語が理解できるようになります。
・割賦販売
・セールアンドリースバック
・資本準備金
・持分法
・損益分岐点
・企業会計原則
上記の用語は、簿記で学習する内容の一部です。
簿記検定に合格するには、これらの用語の意味や使い方を覚える必要があり、おのずと専門用語が身に付いていきます。
新聞の経済欄や経済ニュースのテレビ番組などを、容易に理解できるようになります。
6) 株式投資に役に立つ
日本では政府が「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げて、国民に投資を促しています。
しかし、諸外国と比べると、日本人の金融リテラシーは低いとされ、投資に不安を感じる人も多いです。
簿記の知識を持っていると、企業が株主や投資家に経営状態や財務状況を広報するための、IRを理解できます。
IRは企業の業績や、今後の経営に関する重要事項が掲載されていて、投資の判断に役立つでしょう。
また、簿記の知識を活用して財務諸表を理解すると、ファンダメンタルズ分析といって、企業の各種指標から長期投資に向いているか判断可能です。
ファンダメンタルズ分析は長期投資に向いているとされ、税制優遇されるiDeCoや、新NISAにも役立ちます。
今後ますます投資をする人が増える中で、簿記の知識が必要とされる場面が増えるでしょう。
7) 家計管理に役立つ
家計の収支を改善したいけど、家計簿の付け方が分からない人も、多いのではないでしょうか。
家計簿は、企業の決算書の簡易版です。
そのため、簿記の知識があれば、簡単に家計簿を作成できます。
簿記の知識を活用して家計簿を付けると、以下のようなメリットがあります。
・家計の資産を把握して資産運用できる
家計を企業として考えると、どのように収支を改善して、資産を増やすか考えやすくなります。
例えば、簿記の知識がない人が家計簿を作成すると、収入から支出を差し引いて、月にいくら手元に残るか確認する程度になります。
簿記の知識がある人は、スーパーでの買い物代金を食費、友人へのプレゼントを交際費など、勘定科目ごとに分類します。
毎月の支出を勘定科目に置き換えることにより、何の支出が多いのか分析でき、収支を改善できるでしょう。
(家計管理にはFPの知識も役立ちします。詳細は「簿記とFPとるなら両方?それとも片方?」をご確認ください。)
8) 大学入試で有利になる
簿記を取得している受験生に対して、出願資格を付与する、加点で優遇するなどの措置を取っている大学は複数あります。
簿記を取得していると、出願や選考が有利になる国公立大学は、以下の通りです。
・一橋大学
・大阪公立大学
・広島大学
その他にも、100校近い大学が簿記の取得者を優遇しています。
高校生のうちから簿記を勉強することにより、将来の選択肢が広がり、思い描いた未来を掴めるでしょう。
また、大学に入学後には、簿記の授業で良い成績を取れます。
大学の簿記の授業は、一般的に3級レベルの内容から学習します。
高校時代に簿記の学習をしていれば、授業を受けなくても、テストで高得点を取れる可能性が高いです。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
2. 3級より2級がおすすめ?
簿記検定で何級を取得するべきなのかは、何のために簿記を勉強するかにより異なります。
ここでは、簿記3級より2級がおすすめか?について解説します。
1) 3級でもメリットは十分
簿記3級は、少し勉強をすれば合格できる資格と言われることもありますが、取得するメリットは多くあります。
先ほど挙げた簿記を勉強するメリットである、「簿記の知識を仕事に活用できる」「他の資格へステップアップできる」「起業する際に役に立つ」などは、3級であっても感じられるでしょう。
そもそも簿記3級は、「小規模企業において適切な経理処理をおこなうために必要なレベル」と定義されています。
小規模企業の経理業務は、比較的簡単な作業が多いです。
しかし、経理処理の流れを把握していて、さまざまな仕訳ができるレベルでないと務まりません。
簿記3級はそれほど難しい試験ではありませんが、実務でも役立つ知識を多く学べます。
簿記2級の取得を目指す人でも、簿記3級を丁寧に勉強した人は合格する可能性が高いです。
簿記2級の出題範囲の多くは、簿記3級の延長線上にあります。
簿記3級の知識が不十分のまま簿記2級に挑戦すると、分からない点が多く、挫折する人も多いです。
まずは、簿記3級で基礎を固めてから、簿記2級に挑戦するのがおすすめです。
2) 経理は2級まで必要
簿記2級を持っていると他の社員との差別化ができ、実践的な知識が身に付くことにより即戦力となれます。
ここでは、経理や会計業界で働くなら、簿記2級まで必要となる理由を解説します。
① 差別化要素とはならない
経理や会計業界で働いている人は、全員が簿記の資格を持っていると思うかもしれませんが、実際は試験を受けたことがない人も多くいます。
しかし、ほとんどの人は簿記3級レベルの知識は持っているため、差別化要素とはなりません。
簿記2級では、連結会計や工業簿記などを学習して専門性が増します。
簿記検定を受験したことが無い人との知識の差は大きく開き、簿記2級を取得しているだけで差別化要素となるでしょう。
② より実用的な知識を学べる
簿記2級の学習範囲は実践的な内容が多く、実務ですぐに使える知識ばかりです。
具体的な学習内容は以下の通りです。
・連結会計
・有価証券の処理
・有形固定資産の除却
・子会社株式
・リース取引
・税効果会計
これらはほんの一部であり、その他にも実践的で役立つ知識ばかりです。
さらに、簿記2級では工業簿記も学習して、製造業での経理の知識も身に付けられます。
簿記2級を取得していれば、多くの業界で経理ができる人材になれるでしょう。
③ 資格手当がつく可能性がある
簿記検定はビジネスパーソンに重要な資格とされていて、資格取得者に資格手当を支給する企業があります。
しかし、資格手当の多くが簿記2級からを対象としていて、簿記3級は対象外のケースが多いです。
簿記2級は月に3,000円~10,000円ほどの資格手当が付く可能性があり、年収アップを見込めるでしょう。
また、資格手当だけでなく、簿記2級を取得すれば会社から学習意欲のある社員だと判断され、昇進のきっかけになります。
長期的に考えると、大きなリターンを得られる資格です。
④ 一定の学力があることを示せる
簿記2級を取得するには、一般的に350時間~500時間の学習が必要だといわれています。
仮に簿記2級の合格までに500時間かかったとすると、毎日2時間勉強したとして250日継続する必要があります。
実際には、数年かけて簿記2級を取得する人も多いです。
真面目に長期間、コツコツ勉強しないと取得できない資格のため、取得すれば一定の学力があり努力できる人間だと示せます。
企業の人事など採用する側からすると、簿記2級の取得者は安心して採用できます。
就職活動や転職活動の際に、アピールポイントがなく悩んでいる人は、簿記2級を取得するのがおすすめです。
⑤ 難易度とメリットのバランスが良い
簿記2級の合格率は、平均すると20%ほどです。
まじめに勉強すれば多くの人が合格的できる試験ですが、簡単に取得できるとは言い難い合格率です。
そのため、社会的な評価が高く、未経験でも会社の経理や会計事務所で働ける知識が身に付きます。
簿記1級は経理や会計のエキスパートと呼ばれるほどの専門家になれますが、取得難易度が高く、合格には簿記のセンスが必要といわれています。(参考「簿記1級の独学は無理?何から始めればいいの?」)
合格率は10%前後で、数百時間の学習をしても取得できない人も多いです。
しかし、難易度の割には評価が高くなく、コストパフォーマンスは簿記2級の方が上です。
他の資格と比べても、簿記2級はコストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
3. 簿記を学ぶデメリットは?
簿記を学ぶことはメリットが多く、基本的にデメリットはありません。
ただし、簿記2級や簿記1級など、より深く学習するのであれば、すべての人にメリットがあるとは言えません。
例えば、簿記1級は初学者が取得するには、600~1,000時間が必要だとされています。
専門性が高く、簿記の専門家にもなれる知識が身に付きますが、経理・会計業界以外の人には不要な知識も多いです。
経理・会計業界の人が簿記を1,000時間学習するのであれば、自分が働いている業界の資格試験を受験した方が、人生に役立つ可能性があります。
社会人が働きながら合格するには、並大抵の努力では難しいでしょう。
家族と過ごす時間や趣味の時間を削り、学習時間を確保する必要があることはデメリットになります。
それだけ努力をしても合格できる保証はなく、途中で挫折する可能性も高いです。
時間を無駄にしないためにも、簡単に受験を決めずに、プライベートを犠牲にする覚悟はあるか考えてください。
4. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
簿記を学習すると、就職や大学受験に有利になり、多くのビジネスシーンで役に立つ知識が身に付きます。
簿記3級でも十分にメリットを感じられますが、簿記2級を取得すると他の社員と差別化でき、昇進や年収アップにも繋がるでしょう。
簿記を学ぶとメリットが多く、デメリットはありません。
強いて言えば、学習する時間を確保するために、プライベートの時間が減ることです。
しかし、コストパフォーマンスの高い簿記2級を取得できれば、費やした時間以上のメリットを感じられるでしょう。
簿記の学習は、人生の選択肢を広げてくれます。
自分の人生を良い方向に導きたい人は、まずは簿記3級の学習から始めてみてください。
5. まとめ
◆簿記2級は学力の証明になり、簿記3級よりも就職に有利。
◆簿記の学習にはデメリットはないが、勉強時間を確保する必要がある。