ペコちゃんでお馴染みの不二家。
ケーキの店舗販売から、ミルキーやカントリーマアムといったお菓子の販売も手がけており、誰しも一度は不二家の商品を手にしたことがあるかと思います。
そんな不二家の創業時から続く洋菓子事業が、実は毎年赤字で足を引っ張っていることをご存知でしょうか?
今回はそのような点を中心に、不二家の決算書について解説していきます。
1. 不二家とは?
1) 基本情報
2) 事業内容
2. 収益性
1) 売上高・営業利益(全社)
2) 売上高・営業利益(セグメント)
3. 安全性
1) 短期の安全性
2) 長期の安全性
4. 終わりに
5. まとめ
1. 不二家とは?
1) 基本情報
① 会社情報
会社名 | 株式会社 不二家 |
創業日 | 1910/11 |
従業員数 | 2,199名(2020/12) |
部門 | ① 洋菓子事業 ② 菓子事業 ③ 飲料事業 ④ キャラクターライセンス事業 ⑤ グループ会社 *詳細は後述 |
上場日 | 1965/2(東証一部) |
決算情報 | IR情報 |
② 沿革
1910/12 | クリスマスケーキ販売開始 |
1950 | 「ペコちゃん」誕生 |
1951 | ミルキー発売開始 |
1962/6 | 東証二部上場 |
1963/10 | フランチャイズ第1号開店 |
1965/2 | 東証一部上場 |
1984 | カントリーマアム発売開始 |
2007/1 | 消費期限切れ原料使用問題により生産・販売が停止 |
2007/3 | 山崎製パン株式会社と資本提携し生産・販売が再開 |
2008/11 | 山崎製パン株式会社の子会社となる |
2016/12 | 台湾に不二家洋菓子店の第一号が開店 |
2) 事業内容
*事業区分と決算書のセグメント区分が異なるため、セグメント区分をかっこ書きで表記しております。
① 洋菓子事業
(洋菓子セグメント)
創業時から続く一番のメイン事業である、洋菓子事業。
ケーキやギフト菓子の店舗販売や、スーパー・コンビニ向けの洋菓子も手がけております。
② 菓子事業
(製菓セグメント)
スーパーやコンビニで販売されるチョコレート・ビスケット・パイ・キャンディなどのお菓子を製造する、菓子事業。
「ミルキー」「カントリーマアム」「ホームパイ」といったメジャーな商品を手がけており、洋菓子事業に次ぐメイン事業となります。
③ 飲料事業
(製菓セグメント)
缶・ペットボトル・チルド飲料の卸売販売行っている、飲料事業。
「ネクター」「レモンスカッシュ」の2つが代表商品となります。
④ キャラクターライセンス事業
(その他セグメント)
不二家のキャラクターであるペコちゃんのライセンス管理などを行う、キャラクターライセンス事業。
不二家公式のネットショップ「ファミリータウン」の運営も行っております。
⑤ グループ会社
その他グループ会社が行っている事業として、不二家レストラン(洋菓子セグメント)、高級フランス菓子の製造販売、和菓子の製造販売、アイスクリームの製造などがあります。
2. 収益性
1) 売上高・営業利益(全社)
まずは、不二家の全社的な売上高・営業利益について見ていきましょう。
① 売上高
不二家の全社的な売上高は、以下の通り2017年を境に毎年微減している状況となります。
よく言えば安定していると言えます。
しかし、メイン事業である洋菓子・菓子事業ともに成熟した事業であり、新規事業などその他事業が大きく育たない限りは、全社的な売上高が今後大きく成長することはあまり期待できないとも言えます。
② 営業利益・営業利益率
不二家の全社的な営業利益・営業利益率は、以下の通りとなります。
赤字ではなく毎年一定の営業利益を稼いでおりますが、営業利益率は5%を下回る低い水準であり、利益面でも苦戦している様子がうかがえます。
2) 売上高・営業利益(セグメント)
ここでは、「洋菓子」「製菓」「その他」の3つのセグメント別の、売上高・営業利益について見ていきます。
不二家の伝統事業であり一番メインの事業でもある、洋菓子。
しかし、洋菓子セグメントの売上高は毎年下がっており、さらにここ数年はずっと赤字の状態です。
洋菓子やレストランなどの店舗事業において、不採算店舗の存在が原因の1つとして考えられます。
その証拠に、2019年までは不採算店舗の整理により店舗数が大幅に減っていき、また、不採算店舗に対する多額の減損損失も計上しております。(*反対に製菓セグメントの減損損失は毎年ゼロ。)
背景としては、郊外のショッピングセンターやコンビニスイーツの充実などが挙げられます。
一方で不二家は、2019年までに不採算店舗をあらかた整理し、再建のために「納品店」を増やしていく方針を掲げております。
納品店とは、スーパーなどに不二家専門コーナーを設けて行う販売方法のことを指します。
従来も行っていた業態ですが、人件費や店舗の賃料はスーパー負担のため出店コストを抑えられるなどのメリットがあり、再建の柱として納品店を増やす計画です。
確かに納品店の影響で、2020年に店舗数は大幅に増加しましたが、前述の通り売上高・営業利益はともに苦戦している状況と言えます。
また、洋菓子セグメントにおいて、不採算店舗に対して計上している減損損失が2020年も引き続き計上されており、利益・減損損失の面から不採算店舗はまだまだ残っていることが想定されます。
洋菓子事業は不二家を支えてきたメイン事業であり、事業売却というわけにはいかないためテコ入れしている状況ですが、赤字を垂れ流し続けており現状は足を引っ張っている状況と言えます。
反対に製菓セグメントにおいては、ロングセラーの「カントリーマアム」を中心に、主力ブランドの根強い人気に支えられ、また健康面を意識したアーモンドチョコレートや糖質を制限したカントリーマアムなどを消費者に訴求することで、毎年60億円超の利益を稼いでおります。
さらに、製菓セグメント単体の営業利益率を計算すると約9%あり、5%を大きく超える収益性の高い事業と言えます。
不二家は直営店の他に、フランチャイズ方式の店舗運営も行っております。
フランチャイズ方式を1963年から導入しており、実は日本最初のフランチャイズを導入した企業でもあるのです。(第1号店は京都伏見店)
3. 安全性
次に、安全性について短期・長期それぞれの観点から、以下の指標をそれぞれ見ていきましょう。
・流動比率
・手元流動性比率
【長期の安全性】
・自己資本比率
1) 短期の安全性
流動比率は目安である200%近くの数値となっているため、問題ないと言えます。
また、月商何か月分の資金があるか(売上がなくても手元資金で何か月間活動できるか)を計算した手元流動性比率も見てみましょう。
大企業の手元流動性比率の1つの目安である1か月を超えており、手元流動性比率についても問題ない数値と言えます。
2) 長期の安全性
自己資本比率も目安である50%を超えており、長期的な安全性の面からも問題ないと言えます。
不二家の配当利回りは高配当株の目安である3%をいずれの年も大幅に下回っており、配当目的の投資対象として現状は魅力的でないと言えます。
4. 終わりに
不二家の決算書について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
お家芸であった洋菓子事業を今後立て直せるのか、注目していきましょう。
(本記事で扱っている決算書分析の指標や知識は、ビジネス会計検定で学ぶことができますので、ぜひ挑戦してみてください。)
5. まとめ
◆洋菓子事業は毎年赤字。
◆不採算店舗の整理を進めて2019年までは店舗数減少。
◆2020年からは納品店を増やすことで店舗数増加。