難関資格の1つである、中小企業診断士。
一方で、SNSなどで「取っても仕事がない資格」と言われることもあり、中小企業診断士を目指すべきか否か迷う人も多いかと思います。
そこで今回はまず、一般的に中小企業診断士は仕事がないと言われる理由を4つ解説した上で、過去に私が出会った中小企業診断士の具体的な活躍事例を紹介していきます。
また後半では、中小企業診断士となった際に仕事に困らないために、受験勉強段階から意識しておくべきことを4つお伝えしております。
1. 診断士は仕事がないと言われる理由
1) 独占業務がない
2) 無資格のコンサルタントが多数いる
3) 診断士の知名度がまだ高くない
4) 周りで事例を聞いたことがない
2. 過去に出会った診断士事例紹介
1) Fさん(30代)
2) Tさん(40代)
3) Kさん(30代)
4) Mさん(20代)
3. 仕事に困らないために今できること
1) 専門分野を決めておく
2) 横のつながりを作っておく
3) Webマーケティングを学ぶ
4) 勉強を頑張り1年でも早く受かる
4. 終わりに
5. まとめ
1. 診断士は仕事がないと言われる理由
1) 独占業務がない
中小企業診断士は仕事がないと言われる1つ目の理由としては、「独占業務がない」ことが考えられます。
以下のような独占業務のある資格の場合、資格取得がそのまま仕事に結びつきやすいです。
⇒監査業務
⇒税務書類の作成、代理、相談
⇒弁護士業務
⇒労務申請書の作成代理・手続代行
⇒官公署に提出する書類の作成代理
一方で中小企業診断士の場合、経営コンサルの国家資格ではありますが、独占業務がなく、無資格者でもコンサルティングを行うことができます。
そのため、中小企業診断士の資格を取っただけでは、直接的に何か仕事に結びつくわけではありません。
以上より、「独占業務がない」ことは、中小企業診断士は仕事がないと言われる理由となります。
独占業務のある資格の方が、一見するとメリットが多そうに見えるかもしれません。
ただ、独占業務のある資格の場合、特に独立開業している同業者同士で、顧客を奪い合う環境となっていることが多いです。
一方で、中小企業診断士の場合は独占業務がない分、横のつながりで仕事を紹介し合って、資格の価値を維持していこうという風潮があります。(もちろんある程度は同業者同士の競争もあります。)
そのため、独占業務がないことが、必ずしもデメリットになっているとは言えないのです。
2) 無資格のコンサルタントが多数いる
中小企業診断士は仕事がないと言われる2つ目の理由としては、「無資格のコンサルタントが多数いる」ことが考えられます。
前述の通り経営コンサルタントというのは、無資格者でもできる職種となります。
マッキンゼー・ボストンコンサルティング・デロイト・アクセンチュア・PwCなどの大手コンサルティング会社出身の人達が独立開業して、経営コンサルタントとして活躍しているケースも多いです。
経営コンサルの主な対象となる中小企業は、全国に無数にあり市場自体は広いのですがその分ライバルも多く、中小企業診断士の仕事はないのでは?と一般的に思われてしまうのです。
以上より、「無資格のコンサルタントが多数いる」ことは、中小企業診断士は仕事がないと言われる理由となります。
確かに経営コンサルは無資格者でもできますが、能力のバラツキが非常に大きいです。
この点、中小企業診断士であれば、試験範囲となっている経営・会計・法務・IT・経済・店舗運営などの、コンサルタントとしての基礎力があることを証明することができます。
また、大手コンサル出身者でない人にとっては、中小企業診断士の肩書があることで相手に最低限の安心を与えることができ、新規顧客獲得の入口としての機能を期待することができます。
3) 診断士の知名度がまだ高くない
中小企業診断士は仕事がないと言われる3つ目の理由としては、「診断士の知名度がまだ高くない」ことが考えられます。
公的機関や金融機関にお勤めの人、あるいは受験生にとって、中小企業診断士は比較的メジャーな資格に見えるかもしれない。
また、日本経済新聞社と日経HRが2016年に公表した、『新たに取得したい資格』(ビジネスパーソンを対象)の首位にも中小企業診断士が選ばれており、一定の知名度が証明されているのも事実です。
しかし、一般的にはまだまだ知名度の低い資格であり、職場の同僚に聞いても知らない人の方がはるかに多いかと思います。
そのため、「知名度が低い=仕事がないのでは?」と考えられやすいのが、中小企業診断士という資格なのです。
以上より、「診断士の知名度がまだ高くない」ことは、中小企業診断士は仕事がないと言われる理由となります。
仕事のある・なしを判断する上での大切なのは、一般的な知名度があるか否かではなく、顧客となりえる層の知名度です。
この点、中小企業診断士の主な顧客である中小企業の社長、公的機関や金融機関の人に対しては、一定の知名度がある資格と考えられます。
そのため、一般的な知名度がないからといって、必ずしも中小企業診断士の仕事がないとは言えないのです。
4) 周りで事例を聞いたことがない
中小企業診断士は仕事がないと言われる4つ目の理由としては、「周りで事例を聞いたことがない」ことが考えられます。
周りで中小企業診断士として活躍している人の事例を見聞きすることは、多くの人にとってほとんどないことかと思います。
一方で、X(旧Twitter)などのSNS上では、中小企業診断士に対する以下のようなネガティブな意見も少なくありません。
・取っても意味のない資格。
・資格予備校のための資格。
・中小企業診断士は使えない。
このようなネガティブな印象が、結果として中小企業診断士は仕事がないの?という疑念につながっているのです。
以上より、「周りで事例を聞いたことがない」ことは、中小企業診断士は仕事がないと言われる理由となります。
周りに中小企業診断士がいない人のために、次項で具体的な事例として、4名の中小企業診断士の活躍ぶりについてお伝えしていきます。
ベンチャー時代に中小企業診断士講座を運営していた際に、一緒に働いていた人達の実際の事例ですので、ぜひ参考にしてみてください。
2. 過去に出会った診断士事例紹介
1) Fさん(30代)
・5社以上の転職経験者
・営業や債権の取り立て、経理など
・診断士取得後は管理部門で活躍
・今は某ベンチャーのCOO
1人目は、ベンチャー時代に同僚として一緒に働いた、Fさん。
Fさんは30代にして転職経験が非常に多く、多種多様な経験を積んでいる人でした。
私と一緒に働くようになった時は、既に中小企業診断士となった後であり、経理として活躍していました。
中小企業診断士なのに経理?と思われた人もいるかもしれませんが、中小企業診断士試験では財務会計も出題範囲となっており、実は経理というのも選択肢の1つなのです。
また、Fさんは中小企業診断士の知見を活かしながら、経理などの管理部門だけでなく、ビジネスサイド(営業やマーケなど)でも活躍できる人材であり(今もCFOではなくCOOとして活躍しております。)、中小企業診断士の活躍機会の広さを体現しているような人でした。
中小企業診断士として副業もされており、仕事がないといった素振りは微塵も感じさせない人でした。
(中小企業診断士と経理の関係については、「経理が中小企業診断士を目指す4つのメリット」も合わせてご確認ください。)
2) Tさん(40代)
・元銀行マン
・元ベンチャー取締役
・某マネジメント・スクールの講師
・CFOが相手の経営コンサルタント
2人目は、ベンチャー時代に取締役として一緒に働いた、Tさん。
その会社は教育系のベンチャーであり、講師やその分野の勉強経験者、教材制作のスタッフ、あるいは取引先となる企業など、多くの人脈が必要でした。
そして、この人脈を持っていたのが、Tさんでした。
Tさんに相談すれば、中小企業診断士としての人脈から、誰かしら紹介してもらえる可能性が高く、まだ知名度がない若い会社にとって、この人脈は非常にありがたかったです。
中小企業診断士同士の横のつながりを駆使して、「この人に相談すれば誰か紹介してもらえる」といった存在になることで、仕事がない状態を回避することができます。
また、Tさんは管理部門を統括する立場でもあったので、知財検定1級を取得するなど、中小企業診断士で学んだ法務の内容をさらに掘り下げて、知識を磨いていました。
このように、中小企業診断士試験で経営・会計・法務・IT・経済・店舗運営といったビジネスの基礎スキルを学び、実務の中でさらに専門性が必要となれば、関連資格の勉強をしてより深く学ぶことができるのも、中小企業診断士のメリットと言えます。
中小企業診断士試験の各科目と関連資格の関係については、「中小企業診断士試験の関連資格7選」をご参照ください。
3) Kさん(30代)
・エンジニア
・元大手&中小システム会社勤務
・診断士取得後に独立開業
・エンジニア兼診断士として活躍
3人目は、中小企業診断士講座を運営していた際に講師をお願いしていた、Kさん。
元々は大手システム会社にエンジニアとして従事しており、その後中小のシステム会社に転職して、中小企業診断士試験合格後に独立開業された人です。
前述の通り中小企業診断士試験の出題範囲にはITも含まれており、また、エンジニアに足りないビジネス面の知識を学べるため、実はエンジニアとの相性も非常によい資格なのです。
Kさんは独立開業後、週3は業務委託のエンジニアとしてとある会社で活動し、残りは診断士としてコンサルや講師業を行っておりました。
このように、前職での知見や専門性を活かしながら、柔軟な働き方ができるため、中小企業診断士は仕事がないといった事態を回避することができるのです。
中小企業診断士とエンジニアの関係については、「エンジニアが中小企業診断士を取得する4つのメリット」も合わせてご確認ください。
4) Mさん(20代)
・大手運送会社勤務
・経営戦略部に所属
4人目は前述のKさん同様に、中小企業診断士講座を運営していた際に講師をお願いしていた、Mさん。
マネージャーや経営層が受験するケースが多い中小企業診断士試験を、20代の若さで合格しており、非常にロジカルで頭の良い人です。
大手運送会社の経営戦略部に所属しており、中小企業診断士の知見を活かしながら、各種マーケティング施策を立案されておりました。
経営戦略部・経営企画部とは、会社経営のかじ取りをする部署であり、経営コンサルタントとしての知見を大いに活かすことのできる場所です。
枝葉の作業ではなく、経営に近い立場でビジネスを経験してみたい人は、中小企業診断士を取得した後の進路として、検討してみても良いかもしれません。
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
3. 仕事に困らないために今できること
それでは、仕事がない状態を回避するために、中小企業診断士試験の勉強をする段階で、考えておくべきこと・できることはあるのでしょうか?
ここでは、仕事に困らないために今できることについて、順に4つ紹介していきます。
1) 専門分野を決めておく
中小企業診断士となった際に、仕事に困らないために今できることの1つ目としては、「専門分野を決めておく」ことが考えられます。
中小企業診断士は多岐にわたる分野を学ぶことができますが、逆に言えば、1つの分野を深く学ぶわけではなく、スペシャリストと言うよりは、ゼネラリストとして考えられることが多いです。
一方で、仕事を依頼する側からすると、経営全般のコンサルというよりは、その中でもボトルネックとなっている分野について、より詳しい専門家に依頼したいと考えます。
例えば、会計分野に大きな経営課題がある場合、「経営全般のコンサルなら任せてください!」と言ってくる専門家よりも、「会計分野のコンサルなら任せてください!」と言ってくる専門家に依頼したくなるものです。
具体的に想定される専門分野としては、以下のような分野があります。
・IT/プログラミング
・Webマーケティング(後述)
・組織/人事労務
・事業承継
漠然とでもいいので、「この分野で勝負していこう」という分野を、勉強段階から決めておくことが大切となります。
また、余裕があるなら、その専門分野のスキルアップに手を出すのも、1つの方法です。(あくまで勉強優先ですが。)
例えば、プログラミングを強みにしたい場合、空いた時間でプログラミングの勉強をすることなどが考えられます。
(中小企業診断士とプログラミングについては、「中小企業診断士がプログラミングを学ぶ5つのメリット」もご確認ください。)
以上より、「専門分野を決めておく」ことは、仕事に困らないために今できることと言えます。
2) 横のつながりを作っておく
中小企業診断士となった際に、仕事に困らないために今できることの2つ目としては、「横のつながりを作っておく」ことが考えられます。
前述の通り中小企業診断士は横のつながりが強く、互いに仕事を紹介し合ったり、情報交換したりしています。
「であれば、わざわざ受験生時代からつながりを作っておく必要はないのでは?」と思われるかもしれません。
確かに無理して作る必要もないのですが、一方で、今勉強している人は同じ時期に合格して同期となる可能性が高く、中小企業診断士に限らずですが、同期のつながりというのは特別なものとなりやすいです。
また、いくら診断士同士の横のつながりが強いと言っても、人によってつながりの広さや深さは異なり、当然に広くて深いつながりを持っている人の方が、仕事に困りにくいです。
そのため、受験生時代に同期となりうる人達とある程度つながっておくことは、仕事がない状態を回避するための1つの事前策となりえます。
ただ、過度に関わり過ぎると、勉強のマイナスになる点には注意してください。
以上より、「横のつながりを作っておく」ことは、仕事に困らないために今できることと言えます。
3) Webマーケティングを学ぶ
中小企業診断士となった際に、仕事に困らないために今できることの3つ目としては、「Webマーケティングを学ぶ」ことが考えられます。
この後の「4) 勉強を頑張り1年でも早く受かる」でお伝えする通り、あくまで勉強をしっかりと頑張ることが前提ですが、もし余裕があるのであれば、Webマーケティングについて最低限学ぶのがおすすめです。
前述の通りWebマーケティングは専門分野の1つとなりますが、実は中小企業診断士として独立開業して活躍していく上で、最低限のWebマーケティングの知識は必須とも言えるのです。
と言いますのも、独立開業した場合はお客様を自分で集客する必要があり、その際にWebマーケティングを利用する必要があるためです。
もちろん中小企業診断士協会から仕事を紹介してもらう方法もありますが、中小企業診断士として頭一つ抜け出るためには、自らの集客力を強化する必要があります。
…どうやって学べばいいの?と思われたかもしれませんが、おすすめは「アフィリエイト」です。
アフィリエイトをやることで、
・Web上での情報収集力
・SNSの運用スキル
・アフィリエイトの仕組み
・Web上での商品の販売方法
・HP作成スキル(HTML、CSSなど)
・ライティング
といった、最低限のWebマーケティングスキルを学ぶことができます。
アフィリエイトの具体的な始め方は、ネットで検索すれば多数出てきますので、ここでは割愛させていただきます。
以上より、「Webマーケティングを学ぶ」ことは、仕事に困らないために今できることと言えます。
4) 勉強を頑張り1年でも早く受かる
中小企業診断士となった際に、仕事に困らないために今できることの4つ目としては、「勉強を頑張り1年でも早く受かる」ことが考えられます。
1年でも早く合格して、1年でも早く中小企業診断士として活動し始める方が、仕事に困らないのは言うまでもありません。
そもそも中小企業診断士試験は非常に難易度の高い試験であり、合格するまでが大変です。
そのため、長々といろいろな点を述べてきましたが、とにかく勉強を進めることが1番大切と言えます。
仕事があるのか・ないのか心配になる気持ちはわかりますが、その心配が合格時期を遅らせて、結果的に仕事に困る状況を作ってしまいかねませんので、手を動かして勉強を進めましょう。
以上より、「勉強を頑張り1年でも早く受かる」ことは、仕事に困らないために今できることと言えます。
4. 終わりに
中小企業診断士は仕事がないと言われる理由と、実際の活躍事例について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
中小企業診断士として活躍している先輩方はたくさんいますので、少なくとも仕事が全くないと言うことはありません。
心配する気持ちもわかりますが、その時間を勉強に充てて、1日でも早く合格しましょう。
5. まとめ
・独占業務がない。
・無資格のコンサルタントが多数存在する。
・診断士の知名度が高くない。
・SNSなどで時々悪い評判を目にする。