最近では、監査法人から退職する公認会計士も、それなりに増えてきました。
・監査法人での待遇の変化
・転職というものが一般的になった
など、理由はいろいろ考えられます。
そのため、公認会計士をこれから志す人や、既に公認会計士である人の中には、キャリアプランの1つとして、監査法人の退職を考えている人も多いかと思います。
そこで気になってくるのが、「退職して後悔しないかな。。」といった点ではないでしょうか?
そこで今回は、大手監査法人を退職した私の経験をもとに、監査法人を退職して後悔したことについて、お伝えしていきます。
1. そもそもなぜ退職したの?
まず初めに、そもそもなぜ私が監査法人退職という道を選んだのか?といった点について、3つ理由をお伝えしていきます。
退職の動機の一例として、参考にしてみてください。
1) 自分で稼ぐ力がほしかった
1つ目の私が監査法人を退職した理由としては、「自分で稼ぐ力がほしかった」ことが挙げられます。
結論からお伝えすると、私は監査法人入所前から、修了考査(公認会計士になるための最後の試験)に合格した後のどこかのタイミングで、退職することを決めていました。
そもそも大学生の時に自分のキャリアを考えた際に、これからの変化が激しく不確実な世の中を生きていく上で、会社の力ではなく「自分で稼ぐ力」を手に入れたいと考えていました。
ただ、稼ぐ上でよって立つことのできる、自分の専門性を身に付けることがまず先だと考え、公認会計士という道を目指しました。
そのため、修了考査に合格して公認会計士として登録できるようになったら、今度はその専門性と掛け合わせる、「自分で稼ぐ力」を磨こうと考えていたため、監査法人を退職したのです。
監査法人時代の私に、自分一人で稼ぐ力は全くなかったため、今でもこの決断は間違っていなかったと思っています。
以上より、「自分で稼ぐ力がほしかった」ことは、私が監査法人を退職した1つ目の理由となります。
2) 実力を勘違いしそうだった
2つ目の私が監査法人を退職した理由としては、「実力を勘違いしそうだった」ことが挙げられます。
監査法人時代の私の肩書・経歴を列挙すると、以下の通りとなります。
・公認会計士試験合格
・外資系投資銀行の監査を担当
・外資系投資銀行の経理も経験
・大手町の最新ビルに毎日勤務
・非常に優秀な同僚達と働く
・初任給としては十分すぎる給料
上記だけを見ると、かなり優秀な人物を想像してしまう人も、いるかと思います。
しかし、「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」でお伝えしている通り、私自身は人の何倍も時間をかけて、公認会計士試験に何とか合格した凡人です。
にもかかわらず、分不相応な肩書ばかりが追加されていき、それを自分の実力と勘違いしそうになっていました。
監査法人に限らず、1つの会社だけでしか働いていない人は、どうしても視野が狭くなってしまい、今の会社で自分ができることが、そのまま自分の実力だと勘違いしてしまいやすいです。
そのため、「これではダメだ!」と一念発起して、給料を半分にしてベンチャー企業に転職しました。
以上より、「実力を勘違いしそうだった」ことは、私が監査法人を退職した2つ目の理由となります。
3) 楽しくなかった
3つ目の私が監査法人を退職した理由としては、「楽しくなかった」ことが挙げられます。
もちろん、楽しい・楽しくないといった理由だけで、退職するか否かを判断するのは、あまり望ましいことではありません。
ですが、退職を決断する1つの理由になるのも事実です。
と言うか、楽しくないことをやり続けて成果を出す方が、今後は甘い考えとなるかもしれません。
まずは難しくても、それなりに楽しめそうな環境を探して、そこで頑張り続ける方が、最終的には大きな成果を手にしやすいです。
かく言う私も、正直なところ監査法人時代の業務は、楽しくありませんでした。
また、先輩を見て自分が監査法人でずっと働き続けるイメージが、全く湧きませんでした。
前述の通り当初から退職することは決めていましたが、楽しくなかったというのが、結果的に修了考査合格後の早い段階で辞めた、大きな理由となったのかもしれません。
以上より、「楽しくなかった」ことは、私が監査法人を退職した3つ目の理由となります。
2. 退職して後悔しそうなこと
それでは本題ですが、監査法人を退職して私が後悔したことについて、お伝えしていきます。
、、、と言いたいところですが、正直なところ私は監査法人を退職して、全く後悔しておりません。
ベンチャーでつらくも楽しい経験を積むことができ、また、今は自営業として新たなキャリアに挑戦できております。
ただ、私は後悔していないですが、自身の体験も踏まえ、一般的に監査法人を退職した人が抱きそうな後悔について、以下で順に3つお伝えしていきますので、参考にしてみてください。
1) 安定を失う
1つ目の監査法人を退職して後悔しそうなこととしては、「安定を失う」ことが考えられます。
公認会計士という手に職を持ち、監査法人という公認会計士の集まりに属しておけば、安定的なキャリアを歩めることは、比較的容易に想像できるかと思います。
AIの脅威も叫ばれていますが、今のところ全く脅威となる気配がありません。
(AIと公認会計士の詳細については、「公認会計士のAIによる代替可能性は8割!?今から勉強しても…」をご参照ください。)
そのため、そんな環境を捨ててまで監査法人を退職することに、大きなリスクを感じるのは、当然のことと言えます。
監査法人から転職するケースが増えているということは、逆に言えば、監査法人内でのキャリアアップの機会は増えている可能性があります。
そんな監査法人での安定を捨ててまで退職することが、後の大きな後悔につながることも、あるかもしれません。
以上より、「安定を失う」ことは、監査法人を退職して後悔しそうなことと言えます。
気を付けてほしいのは、監査法人という組織が安定していることと、監査法人内の個々人の会計士のキャリアが安定することは、全く別問題だということです。
若いうちは監査法人外への流出を防ぐために、法人側から丁寧に扱われることもあります。
ただ、一定の年次までいくと、監査法人内でしか生きられないような状態になりやすく、こうなってしまったら、言葉は悪いですが、後は監査法人からいいように使われるだけとなってしまいます。
そのため、必ずしも監査法人に勤め続けることが、個々人の会計士にとって安定につながるとは限りません。
2) 給料が減る
2つ目の監査法人を退職して後悔しそうなこととしては、「給料が減る」ことが考えられます。
もちろん、監査法人を退職して転職するにあたり、最低限監査法人時代の給料を超える転職先を探す人が多いかと思います。
ただ、一時的に給料が上がったとしても、その後継続的に上がるとは限りません。
一方で、監査法人であれば、人によって昇給スピードは異なりますが、年次に応じて一定のところまでは一律に給料が上がっていきます。
(監査法人の給料については、「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は・・・万円でした!」も合わせてご確認ください。)
そのため、数年の給料を合計した際に、監査法人にいた方が高くなり、監査法人を退職したことを後悔するケースも考えられます。
以上より、「給料が減る」ことは、監査法人を退職して後悔しそうなことと言えます。
監査法人の給料はある程度安定している代わりに、天井も決まっています。
1,000万円稼ぐことは可能ですが、2,000万円となると一部の人に限られ、さらにそれ以上となると、ほんとにごくわずかな層に限られます。
これはもはや本人の実力だけでどうこうなる領域ではなく、社内政治や運などの要素も多分に関係してきます。
一方で、監査法人を退職して、転職ないし独立開業した場合は、本人の努力次第で監査法人以上に稼ぐことが十分可能となります。
つまり、給料面に関しては、必ずしも監査法人にいた方が得するとは限りません。
3) 社会的信用力が下がる
3つ目の監査法人を退職して後悔しそうなこととしては、「社会的信用力が下がる」ことが考えられます。
特に大手監査法人に所属している時は、社会的信用力は大きいです。
社会的信用力が大きいと何が良いのか?というと、例えば住宅ローンを組みやすかったり、周りの人からちやほやされたり、もてたりします。
実際に監査法人時代の先輩で、1億円近い住宅をローンで購入した人もいました。
一方で、監査法人を退職すると、「○○監査法人の△△さん」という肩書が消え、特に独立開業ともなると「△△さん」という自分の名前だけで勝負することとなり、社会的な信用力はないに等しいです。
私も自営業として自分の名前1つで勝負していますが、当然にはじめは誰からも相手にされませんでした。
以上より、「社会的信用力が下がる」ことは、監査法人を退職して後悔しそうなことと言えます。
監査法人に所属していることで得られる社会的な信用は、しょせん借り物に過ぎません。
反対に、監査法人や○○会社といった肩書が失うことで、強制的に自分自身をブランディングせざる負えない環境に追い込まれ、その結果として借り物ではない、本物の社会的信用を身に付けることができます。
一朝一夕でできることではありませんが、自分自身を一番の商品にできれば、キャリアで苦労することは少なくなるでしょう。
3. 退職前にやっておくべきこと
それでは最後に、退職後に後悔しないために、退職前に「これだけは押さえた方がいい」ことを、2つお伝えしていきます。
1) 同僚とのつながりを持っておく
1つ目の監査法人を退職する前にやっておくべきこととしては、「同僚とのつながりを持っておく」ことが挙げられます。
監査法人内でひと時でも苦楽を共にした同僚達との縁を、その場限りで終わらせるのは非常にもったいないです。
監査法人内にそのまま残る人も、転職する人も、独立開業する人もいますが、5年後・10年後にお互いキャリアを重ねて、仕事面で助け合うことができるかもしれませんし、偶然にも助け合うことになるかもしれません。
監査会社と被監査会社という関係であったり、人材をお互いに紹介し合ったり、一緒に事務所を立ち上げたりと、いろんな可能性が考えられます。
また、監査法人には財務会計面の最新の情報が集まるため、監査法人内に残っている同僚に、最新情報を共有してもらうことも、有益なつながりとなります。
以上より、「同僚とのつながりを持っておく」ことは、監査法人を退職する前にやっておくべきことと言えます。
2) 極力遺恨を残さない
2つ目の監査法人を退職する前にやっておくべきこととしては、「極力遺恨を残さない」ことが挙げられます。
もちろん、誰でももめるのは好きではなく、遺恨を残したくて残す人はいないかと思います。
しかし、監査法人に限らず複数人が集まれば、いざこざの1つや2つは発生するものです。
ただ、将来的に退職することを考えているのであれば、いざこざに巻き込まれても、グッとこらえてください。
遺恨を残したままでも、自分が監査法人を退職すれば関係なくなるのでは?と思われるかもしれませんが、公認会計士の業界は意外に狭い業界です。
同僚が自分と同業界の経理に転職して、監査法人内での自分の評判が、そのままその業界に広がることも考えられます。
以上より、「極力遺恨を残さない」ことは、監査法人を退職する前にやっておくべきことと言えます。
4. 終わりに
監査法人を退職した場合に後悔することについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
事前に後悔する理由を押さえておくことで、将来退職するか否かの決断に迫られた時に、冷静に対処できるかもしれません。
監査法人だけが公認会計士のキャリアではありませんので、ぜひ自由なキャリアプランを描いてみてください。
5. まとめ
◆給料が下がる?
◆社会的信用力が下がる?