公認会計士試験は、数年間の勉強期間を要する、非常に難しい試験です。
難関試験になればなるほど、より短い時間で合格できる方法を、誰しも探したくなります。
そして行き着くのが、「最短合格」という甘い言葉です。
ただ、公認会計士試験において、凡人は最短合格を目指すと失敗してしまいます。
私も勉強し始めた頃は、最短合格を目指していましたが、結果的に合格するまで9,000時間という長い時間をかけてしまいました。
そこで今回は、凡人が最短合格を目指さない方が良い理由について、6つ紹介していきます。
また後半では、最短合格を目指してもよい人についてもお伝えしておりますので、ぜひご一読ください。
1. 最短合格を目指さない方が良い理由
1) 勉強法探しに時間をとられる
2) 勉強計画が破綻しやすい
3) 自分に酔ってしまいやすい
4) 挫折した際のダメージが大きい
5) 非凡な人のマネをしてしまう
6) 体調を崩しやすい
2. 最短合格を目指してもよい人
3. 終わりに
4. まとめ
1. 最短合格を目指さない方が良い理由
1) 勉強法探しに時間をとられる
1つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「勉強法探しに時間をとられる」ことが考えられます。
最短合格を目指す場合に、まずみなさんがとる行動は、最短合格のための勉強法探しではないでしょうか?
確かに、ネットやSNS、書籍などを探してみると、「最短合格」の方法について言及されているものが、多数存在します。
私自身も公認会計士試験の勉強を開始した際は、正直なところ最短合格の情報に心ひかれておりました。
ただ、多数の最短合格の勉強法に関する情報があり、どの勉強法がいいのか探すだけで、かなりの時間がかかってしまいます。
例えば、最短合格の勉強法について調べると、以下のような勉強法が出てくるかと思います。
・全ての空き時間を勉強に捧げる。
・出題されそうな論点だけ覚える。
・録音して聞きながら覚える。
・とにかく書きまくる。
・音読する。
・短答に特化する。
…etc.
上記を見ていただければわかるように、どれも間違っているわけではなく、また、おそらく書き手の人には実際に当てはまった方法であることが想定されます。
つまりは、どれもそれなりの説得力があるため、どの勉強方法が良いのか絞ることができず、結果的に無駄な時間を過ごしてしまうのです。
また、そもそも勉強法の合う・合わないというのは、実際に自分で試してみなければわかりません。
しかし、1つ1つの勉強法を試していたら、時間が全くといっていいほど足りなくなります。
そのため、最短合格を目指して自分に合う勉強方法を探すくらいであれば、王道ですが愚直にインプットとアウトプットを繰り返した方が、結果的に短い時間で合格することが可能となります。
以上より、「勉強法探しに時間をとられる」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
2) 勉強計画が破綻しやすい
2つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「勉強計画が破綻しやすい」ことが考えられます。
最短合格のための勉強計画を立てる場合、直近の短答式試験合格に合わせた日程になるかと思います。
短答式試験は5月と12月の年2回実施されているため、長くても次回の短答式試験まで半年程度であり、かなり無理のある勉強計画を立てることとなります。
「公認会計士の短答式試験に4回目で合格した私の体験談&攻略法3選」でお伝えしている通り、短答式試験合格のためには、1,500時間~3,000時間程度の勉強時間が必要と考えられます。
半年で1,500時間~3,000時間の勉強時間をこなすことは、ほとんど不可能です。
にもかかわらず、最短合格にこだわり無茶な勉強計画を立てた場合は、必ず計画の修正を迫られることなり、結果として余計な時間をくってしまいます。
また、勉強計画を修正するも、最短合格があきらめきれず、より詰め込んだ勉強スケジュールを作成してしまい、また計画が破綻するといった、負のループに陥ってしまう可能性もあります。
さらに、予備校の講座を申し込む際も、最も短いプラン(1年)を選択して、さらにそのプランを倍速以上で進める必要があり、どこかで短期合格が無理なことに気付きます。
そして、長期のプランへ変更し、結果として費用が余計にかかることにもなるのです。
以上より、「勉強計画が破綻しやすい」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
3) 自分に酔ってしまいやすい
3つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「自分に酔ってしまいやすい」ことが考えられます。
最短合格を目指す人は、少なからず「他の人は無理でも自分ならできる。」といった思いを持っています。
確かに、公認会計士試験合格を目指す上で、自分に自信を持つことは大切であり、この考えは必ずしも間違っているとは言えません。
かく言う私も、「自分ならきっとできる。」といった気持ちは、合格するまで持ち続けていました。
ただ、自信を持つだけであればよいのですが、最短合格を目指す人ともなると、「最短合格を目指している自分はすごい。」といったように、自分に酔ってしまうことがあります。
そして、プライドだけが次第に大きくなっていき、周りのアドバイスに耳を貸そうとしなくなります。
結果として、周りからの客観的な意見をもとに努力の方向性を修正することができず、自己流の誤った努力と肥大化したプライドだけが残ってしまうのです。
言うまでもないことですが、最短合格を目指すこと自体は何もすごいことではなく、大切なのは合格に向けて着実に勉強を積み上げていくことです。
変に最短合格にこだわる必要はなく、普通の方法で、普通の勉強期間で、普通に合格することを目指しましょう。
以上より、「自分に酔ってしまいやすい」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
4) 挫折した際のダメージが大きい
4つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「挫折した際のダメージが大きい」ことが考えられます。
最短合格を実現した人の体験記を見てしまうと、最短合格した際の自分のバラ色の未来を想像してしまうものです。
時間やお金が無駄にならず、周りからは褒められ、場合によっては講師などの引き合いがあるかもしれないのが、最短合格者です。
自分がそうなることを想像するだけで、やる気が満ちてくるかもしれません。
ただ、これには大きな落とし穴があります。
最短合格というベストなシナリオだけを頭に描いていると、勉強が長期化することへの覚悟ができておらず、最短合格できなかった際の挫折を受け入れることができません。
例えば、1年での最短合格を目指していたが挫折して、勉強計画を2年に変更する場合、それに合わせて出世や転職といったキャリアの計画、結婚・出産や資産形成といったプライベートの計画も変更する必要があり、非常にダメージが大きいです。
言うまでもなく、ベストなシナリオというのは、ほとんど実現しません。
最短合格というベストシナリオを描いて挫折するよりは、現実的に合格できそうなベターなシナリオを検討した方が賢明です。
以上より、「挫折した際のダメージが大きい」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
5) 非凡な人のマネをしてしまう
5つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「非凡な人のマネをしてしまう」ことが考えられます。
公認会計士試験に最短合格できる、つまりは1年以内で合格できる人の多くは、非凡な人であることが想定されます。
非凡と言うと、頭の回転がものすごく早い、記憶力が抜群によいなどがイメージしやすいですが、異常に勉強を頑張れることも立派な非凡さと言えます。
つまり、「自分は普通の人間なので、ただ人の倍頑張っただけです。」と書いている人の最短合格法を見て、「これなら自分でもできるかも!」と思ってしまいがちですが、そもそも人の倍以上頑張ることは、凡人には難しいです。
非凡な人のマネをしてしまうと、以下のようなデメリットが想定されます。
・結果的に勉強が長期化する。
・自分との違いを思い知らされる。
・そもそも凡人にはマネできない。
ただ、安心してください。
公認会計士試験は、最短合格を目指さなければ、凡人でも十分合格可能です。
「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」でお伝えしている通り、私自身9,000時間もの勉強時間を費やしてしまうほど凡人ですが、最終的には公認会計士試験に合格できています。
凡人は凡人なりに、王道の方法で頑張れば良いのです。
以上より、「非凡な人のマネをしてしまう」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
6) 体調を崩しやすい
6つ目の凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由としては、「体調を崩しやすい」ことが考えられます。
最短合格するためには、普通に勉強するだけでは足らず、必ず何かしらの無理をする必要があります。
そして、無理することの中には、健康を害するようなものも多々あります。
例えば、以下のようなものが想定されます。
・早食いで勉強時間を確保する。
・家に1日中こもって勉強する。
・精神的に自分を追い込む。
・休日も勉強し続ける。
一時的であれば、上記のような無理をしても問題ないことが多いですが、半年~1年の間このような無理を継続すると、どこかで体調を大きく崩す可能性があります。
将来的に公認会計士となってキャリアを築く際に、一番の資本となる健康が害されてしまったら、元も子もありません。
短期的なメリットを重視して最短合格を目指すよりも、長期的に働き続けるための健康にも目を向けつつ、無理のない勉強期間で合格を目指す方が賢い選択となります。
以上より、「体調を崩しやすい」ことは、凡人が公認会計士試験の最短合格を目指さない方が良い理由と言えます。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
2. 最短合格を目指してもよい人
最短合格を目指すべきではない理由についてお伝えしてきましたが、反対に、最短合格を目指してもよい人というのは、どのような人なのでしょうか?
この点について、以下で解説していきます。
1) 最短合格の定義
そもそも論ですが、「最短合格」といった場合に、どの程度の期間が想定されるのでしょうか?
もちろん人によって異なりますが、公認会計士講座を提供する予備校の、最短のプランが1つの目安となります。
つまりは、「1年」以内の合格が、最短合格の目安と言えます。
それでは具体的に、1以内の合格を目指しても良い人を、以下で順に2パターンお伝えします。
2) 勉強時間を確保できる人
1パターン目の公認会計士試験の最短合格を目指しても良い人は、「勉強時間を確保できる人」です。
前述の通り、直近の短答式試験に最短合格することを考えると、半年で1,500時間~3,000時間の勉強時間を確保する必要があります。
そして、最終的に論文まで1年以内で合格するためには、少なくとも1年で3,000時間程度の勉強時間が必要となります。
つまり、1年以内の最短合格を目指す場合、膨大な勉強時間を確保できる環境であることが、必須条件となるのです。
1年で3,000時間とは具体的には、1年間休まず毎日8時間ちょっと勉強し続ければ、到達できる時間となります。
そのため、普通に大学に通っている人や働いている人にとっては、まず不可能な時間となりますが、もしこの勉強時間を確保できるのであれば、最短合格を目指してみても良いかもしれません。
以上より、「勉強時間を確保できる人」は、公認会計士試験の最短合格を目指しても良いと言えます。
3) 過去に最短合格経験がある人
2パターン目の公認会計士試験の最短合格を目指しても良い人は、「過去に最短合格経験がある人」です。
大学受験や他の資格試験などにおいて、過去に最短合格、つまりは普通の人よりも圧倒的に早く合格した経験がある人は、公認会計士試験の最短合格を目指しても良い可能性があります。
過去に最短合格の経験があるということは、そもそも非凡な人であるケースが考えられます。
また、仮に凡人であっても過去に最短合格できたということは、何かしらの勉強のコツを掴んでいるため、そのコツを公認会計士試験に応用すれば、同じように最短合格が狙えるかもしれません。
さらに、過去に最短合格できたという成功体験があるため、公認会計士試験で最短合格を目指しても、挫折しにくいです。
以上より、「過去に最短合格経験がある人」は、公認会計士試験の最短合格を目指しても良いと言えます。
3. 終わりに
凡人は公認会計士試験の最短合格を目指してはいけない理由についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
誰しも一度は最短合格に憧れますが、本当に大切なのは最短という「過程」ではなく、最終的に合格するという「結果」です。
変に最短合格にこだわらず、自分のペースで着実に勉強を積み上げていきましょう。
4. まとめ
◆勉強スケジュールが破綻しやすい。
◆最短合格を目指す自分に酔いやすい。
◆挫折のダメージが大きい。
◆非凡な人のマネをしてしまう。
◆健康を害しやすい。