中小企業診断士試験の関連資格の1つである「簿記検定」。
関連資格の勉強はマイナスにならないので、「とりあえず簿記検定の勉強をしておこう」と考えたことはないでしょうか?
ただ、診断士試験の合格を第一に考えた場合、簿記検定の勉強をする必要はありません。
そこで今回は、簿記検定の勉強をする必要がない理由について、解説していきます。
また、後半では反対に、簿記検定の勉強が必要となるケースについても紹介しておりますので、ぜひご一読ください。
1. 中小企業診断士試験と簿記検定の関係
2. 簿記検定の勉強が必要ない3つの理由
1) 似て非なる試験
2) 勉強期間が長期化する
3) 出費が増える
3. 簿記検定が必要な3つのケース
1) 会計分野の適性確認
2) 他の選択肢も残しておきたい
3) 成功体験を積みたい
4. 終わりに
5. まとめ
1. 中小企業診断士試験と簿記検定の関係
中小企業診断士試験は、マークシート式の1次試験と、論述式の2次試験から構成されます。(口述はほぼ100%合格できるため割愛します。)
このうち、簿記検定との関連があるのは、以下の2つとなります。
・2次試験:事例Ⅳ
上記2つは会計分野が試験範囲となっており、会計の基礎となる簿記検定の内容と、重なる部分が多くあります。
例えば、以下は中小企業診断士1次試験の過去問の抜粋であり、簿記検定2級程度の知識が前提となっていると言えます。
購入時の固定資産圧縮損と決算時の減価償却費の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
固定資産圧縮損 | 減価償却費 | |
ア | 6,000千円 | 2,000千円 |
イ | 6,000千円 | 2,750千円 |
ウ | 22,000千円 | 2,000千円 |
エ | 22,000千円 | 2,750千円 |
(令和元年度 第1次試験 B財務・会計 第2問:正解は「ア」)
その他、中小企業診断士試験の関連資格については、「中小企業診断士試験の関連資格7選」も合わせてご確認ください。
2. 簿記検定を勉強する必要がない3つの理由
前述の通り簿記検定の内容は、中小企業診断士試験の内容と重なる部分がありますが、中小企業診断士試験のために簿記検定の勉強をすることは、あまり得策ではありません。
ここでは、簿記検定を勉強する必要がない理由を、順に3つお伝えしていきます。
1) 中小企業診断士試験とは似て非なる試験
中小企業診断士試験において、簿記検定を勉強する必要がない1つ目の理由としては、「中小企業診断士試験とは似て非なる試験」であることが挙げられます。
確かに両試験の内容は似ている部分がありますが、完全に一致するわけではないことも事実です。
各試験特有の出題方法や、試験範囲が存在します。
つまり、まず簿記検定を勉強した場合、簿記検定での問われ方と中小企業診断士試験での問われ方の違いについて、中小企業診断士試験の勉強をしていく中で慣れていく必要があります。
わざわざこのような手間をかけるくらいであれば、始めから中小企業診断士試験の勉強をした方が賢明です。
以上より、「中小企業診断士試験とは似て非なる試験」であることは、簿記検定を勉強する必要がない理由と言えます。
2) 勉強期間が長期化する
中小企業診断士試験において、簿記検定を勉強する必要がない2つ目の理由としては、「勉強期間が長期化する」ことが挙げられます。
前述の通り、簿記検定のための勉強をある程度進めてしまうと、中小企業診断士試験に慣れるために、余計な時間が発生してしまいます。
また、簿記検定は年3回実施されますが、簿記検定本番前の1ヶ月は、どうしても簿記の勉強の比重が多くなってしまい、中小企業診断士試験としての勉強スケジュールが後ろ倒しになる可能性があります。
その結果として、中小企業診断士試験になかなか合格できず、勉強期間が長期化してしまうため、簿記検定を受験せずに、始めから中小企業診断士試験のためのスケジュールに従って勉強を開始した方が得策です。
以上より、「勉強期間が長期化する」ことは、簿記検定を勉強する必要がない理由と言えます。
3) 出費が増える
中小企業診断士試験において、簿記検定を勉強する必要がない3つ目の理由としては、「出費が増える」ことが挙げられます。
簿記検定を受験するためには、簿記検定用の教材代金や試験の受験料、予備校の受講料などが必要となります。
また、簿記検定のために勉強期間が長期化してしまった場合、中小企業診断士試験の対策講座をもう1年受講するための費用や、勉強のための余分な生活費もかかってしまいます。
教材や予備校の料金に関してはピンキリですが、出費は少ないに越したことはありません。
以上より、「出費が増える」ことは、簿記検定を勉強する必要がない理由と言えます。
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
3. 簿記検定が必要な3つのケース
ここまでお伝えしてきた通り、基本的には中小企業診断士試験のために、簿記検定を受ける必要はありません。
ただ例外的に、以下でお伝えする3つのケースに該当する場合は、簿記検定の受験を検討してみても良いかもしれません。
1) 会計分野の適性確認
1つ目の簿記検定を受けた方が良いケースとしては、「会計分野の適性を確認したい」場合が考えられます。
1次試験の財務会計や2次試験の事例Ⅳなどの会計分野は、中小企業診断士試験において苦手とする人が多い論点です。
つまり、会計分野の適性がないと、そもそも中小企業診断士試験に合格することが難しいと言えます。
また、実務においても、中小企業の経営者から会計面での相談を受けることがあるため、最低限の会計分野に対する適性は、中小企業診断士として活躍する上で必要となります。
そして、自分が会計分野の適性があるか否か判断するのに、簿記検定3級がおすすめとなります。
大事なのは、簿記検定3級の勉強を通じて、「簿記が好きか・嫌いか?」を理解することではなく、簿記検定3級に「合格できるか・否か」です。
仮に簿記が嫌いでも、簿記検定3級に合格できるのであれば、最低限の会計分野に対する適性があると考えられます。
反対に、いくら簿記が好きでも、簿記検定3級に合格できないのであれば、会計分野に対する適性がないと言わざるを得ません。
以上より、「会計分野の適性を確認したい」場合は、簿記検定を受けた方が良いと言えます。
2) 経理など他の選択肢も残しておきたい
2つ目の簿記検定を受けた方が良いケースとしては、「経理など他の選択肢も残しておきたい」場合が考えられます。
「中小企業診断士のメリット・デメリット4選!」でお伝えしている通り、中小企業診断士には多くのメリットがあり、中小企業診断士を目指す理由は人それぞれかと思います。
ただ、多くの人が何かしらのキャリアチェンジを考えて、中小企業診断士を目指しているのではないでしょうか?
キャリアチェンジを考えて中小企業診断士試験に臨んだ結果、不合格だった場合は目的を果たせず終わってしまいます。
あくまで中小企業診断士は目的達成のための手段であると考えれば、目的達成のために他の手段も用意しておくべきです。
この点、経理へのキャリアチェンジであれば、簿記検定2級程度を持っておけば、かなり有利に働く可能性があります。
そのため、中小企業診断士という高い目標に挑戦しつつも、目的達成のための最低限の備えとして、簿記検定を受けておくのも1つの考えです。
以上より、「経理など他の選択肢も残しておきたい」場合は、簿記検定を受けた方が良いと言えます。
3) 成功体験を積みたい
3つ目の簿記検定を受けた方が良いケースとしては、「成功体験を積みたい」場合が考えられます。
中小企業診断士試験の合格率は、1次試験が30%・2次試験が20%となり、単純計算ですが最終合格率は6%程度となります。
つまり、96%の人は不合格になってしまう試験と言えます。
もし自分がこの96%に入ってしまった場合、「時間だけ無駄にして、何も得ることができなかった。。」と落ち込んでしまう可能性があります。(実際は勉強過程で身に付けた知識が、今後に活きてくると考えられます。)
そのような事態に陥らないためには、少なくとも簿記検定に合格しておいて、成功体験を積んでおくのも1つの方法です。
また、中小企業診断士試験の合格を考えた場合でも、途中に簿記検定合格という結果を手にして成功体験を積むことで、自信が付き長丁場の中小企業診断士試験に耐えることができます。
以上より、「成功体験を積みたい」場合は、簿記検定を受けた方が良いと言えます。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
4. 終わりに
中小企業診断士試験と簿記検定の関係や、簿記検定を受験しない方が良い理由・受験した方が良いケースについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
自分の目的を明確にして、その目的に対して簿記検定が本当に必要なのか否か、冷静に判断してください。
5. まとめ
◆遠回りして勉強期間が長期化してしまう。
◆出費が増える。