「中小企業診断士って、取っても意味ない資格なの?」
中小企業診断士に興味がある方であれば、このような疑問を持ったことがあるのではないでしょうか?
確かに、「独占業務がないから儲からない。」「認知度が低く社会的なニーズがない。」といった意見があるのは事実です。
そこで今回は、中小企業診断士が意味ない・使えない資格と言われる、5つの理由について解説していきます。
本記事の内容を、受験するか否かの判断材料として、ぜひ利用してください。
1. 中小企業診断士とは?
2. 意味ないと言われる5つの理由
1) 独占業務がない
2) 資格がなくてもコンサルはできる
3) 儲からない
4) 認知度が低い
5) 費用対効果が悪い
3. 資格の価値を上げるコツ
4. 終わりに
5. まとめ
1. 中小企業診断士とは?
1) 中小企業診断士とは?
経営コンサル資格の中で、唯一国から認定されている国家資格が、中小企業診断士です。
日本版MBAとも言われております。
*MBA:経営に必要な高度な知識・スキルを大学院で学び、その修了の証として与えられるもの。
2) ゼネラリストでありスペシャリスト
中小企業診断士は、経営・財務会計・法務・IT・マーケティング・経済など、幅広い分野の知識を有している、ゼネラリストと言えます。
と同時に、経営に関するスペシャリストでもあります。
また、社会経験をある程度積んだ人達が受験するため、現職・前職の知見を活かして、中小企業診断士の中でも自身の専門領域を確立して、スペシャリストとして活躍することも可能です。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
・経理⇒財務会計に強い診断士
・営業、マーケター⇒マーケティングに強い診断士
3) 資格を活かせる領域が広い
中小企業診断士試験では、以下の7科目について学習します。
B. 財務・会計
C. 企業経営理論
D. 運営管理
E. 経営法務
F. 経営情報システム
G. 中小企業経営・政策
試験科目の多さ・幅広さからわかるように、資格を活かすことのできる領域が非常に広いのも、中小企業診断士の特徴となります。
なお、中小企業診断士の日程については、「中小企業診断士試験の日程・スケジュールは?」をご参照ください。
2. 意味ないと言われる5つの理由
1) 独占業務がない
中小企業診断士が意味ない資格と言われる1つ目の理由としては、「独占業務がない」ことが考えられます。
一般的に有名な士業には、独占業務(その士業以外は、行うことが禁止されている業務。)があるものが多いです。
例えば、以下のような独占業務があります。
・税理士:税務申告や税務書類の作成の代理、税務相談。
・弁護士:弁護士業務。
独占業務があるということは、その分競争優位に立つことができ、資格の価値が高いと言うことができます。
一方で中小企業診断士には独占業務がないため、意味ない資格と言われることがあります。
ただ、資格というのは持っていること自体に大きな意味があるというよりは、資格取得の過程で学習した知識に大きな意味があります。
もちろん、監査業務がしたい、弁護士業務がしたいといった目的があるのであれば、公認会計士や弁護士を目指す必要があります。
しかし、そうではなく、漠然とビジネスの役に立つ資格がほしいと考えているのであれば、経営・会計・法務・IT・マーケティング・経済など、多岐にわたる分野の知識を学習することができる、中小企業診断士の資格はおすすめです。
また、独占業務がある場合は、変に独占業務があることに縛られてしまい、柔軟なキャリア形成ができない可能性も考えられます。
この点、中小企業診断士であれば、キャリアプランの選択肢が非常に多く、柔軟なキャリア形成が可能となります。
2) 資格がなくてもコンサルはできる
中小企業診断士が意味ない資格と言われる2つ目の理由としては、「資格がなくてもコンサルはできる」ことが考えられます。
前述の通り、中小企業診断士は経営コンサルの資格です。
ただ、コンサルティング自体は、資格がなくても行えます。
巷に溢れる「○○コンサル」といった人達は、全員が何か資格を持っているわけではなく、基本的には自称となります。
つまり、わざわざ中小企業診断士の資格をとって、遠回りしなくても、コンサルタントとして今すぐに活動することができます。
ただ、コンサルタントとして活躍するためには、以下の2つの知識が必要となります。
・特定の分野の専門的な知識。
このうち、横断的な基礎知識を身に付けるためには、経営コンサルに必要な知識が体系的にまとまっている、中小企業診断士の試験勉強を行うことが、効率的な知識獲得方法と言えます。
また、漠然とコンサルタントとして必要な知識を学習しようと思っても、モチベーションが継続できない可能性がありますが、試験合格という中間目標があれば、モチベーションを維持しやすいです。
さらに、中小企業診断士同士の横のつながりも、コンサルを行う上で重要となってきます。
そのため、コンサルタントとして活躍したいのであれば、中小企業診断士の資格取得を目指すのは、1つの方向性として間違っていないと言えます。
3) 儲からない
中小企業診断士が意味ない資格と言われる3つ目の理由としては、「儲からない」ことが考えられます。
中小企業診断士の平均年収は、500万~1,000万円と言われることがあります。
しかし、そもそも中小企業診断士は、一定のキャリアを積んだマネージャーや経営層などの人達が取得する傾向があるため、平均年収はもとから高く、資格があったから儲かったわけではないと考えられます。
また、中小企業診断士を取得したからといって、資格手当が出る会社は、そこまで多くないかと思います。
つまり、中小企業診断士という資格を取ったからと言って、それ自体が収入増加につながるとは、必ずしも言えません。
ただ、中小企業診断士は短期的には収入増加につながらないかもしれませんが、長期的には収入増加に貢献する可能性が高いです。
独占業務がある場合は、資格取得後にその業務に従事するために、転職をする必要がある可能性があります。
一方で、中小企業診断士の場合は独占業務がない分、とりあえずは今の仕事を続けながら、中小企業診断士で身に付けた知識を活かしてキャリアアップを目指したり、あるいは副業として中小企業診断士業務を行ったりしながら、活動することができます。
つまり、現状の収入水準を変えることなく、中小企業診断士として活動した分の収入を、現状プラスアルファとして積み上げることができるのです。
また、中小企業診断士は、公認会計士でいうところの監査法人のように、資格取得者の確実な受け皿となる就職口がない分、中小企業診断士同士の横のつながりが非常に深いです。
そのため、他の診断士から仕事を紹介してもらう機会も多く、儲け話が転がり込んできやすい環境とも言えます。
4) 認知度が低い
中小企業診断士が意味ない資格と言われる4つ目の理由としては、「認知度が低い」ことが考えられます。
中小企業診断士は中小企業の経営者を相手にすることが多いため、一般的なビジネスパーソンの間での認知度は、そこまで高くはないと考えられます。
弁護士のように、社会的に広く認知されている資格であれば、その資格を持っていること自体が信用につながりますが、まだ認知度が低い中小企業診断士は、社会的認知の面で意味ない資格と言われることがあります。
ただ、経営者や取締役など、中小企業診断士の顧客となりえる人達には知られており、一定の社会的ニーズがあると言えます。
また、日経新聞が2016年に発表した、「新たに取得したい資格に関する調査」の結果では、中小企業診断士が1位に選ばれており、認知度が必ずしも低くはないことが証明されております。
さらに、資格自体よりも、資格取得の過程で得られた知識や、横のつながりに意味があるので、仮に社会的な認知度が低いからと言って、中小企業診断士は意味ない資格とは言えません。
5) 費用対効果が悪い
中小企業診断士が意味ない資格と言われる5つ目の理由としては、「費用対効果が悪い」ことが考えられます。
大手の予備校の中小企業診断士講座であれば、30万円程度の代金が必要となり、また、少なくとも1,000時間程度の時間を先行投資する必要があります。
それに見合うだけの価値が感じられず、中小企業診断士は費用対効果の悪い資格と言われることがあるのは事実です。
ただ、前述の通り、中小企業診断士という資格は、非常に価値の高い資格であり、大きな先行投資をしてでも取得する価値のある資格と言えます。
また、オンライン専業の予備校を利用すれば、講座代金も抑えられ、さらに、効率的な勉強も可能となります。
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
3. 資格の価値を上げるコツ
中小企業診断士が意味ない・使えない資格ではなく、価値ある資格であることを、ここまで説明してきました。
ここでは、中小企業診断士という資格の価値を高めるためのコツについて、2つ紹介していきます。
中小企業診断士の勉強をする段階から意識できる内容ですので、ぜひとも今日から頭の片隅に入れておいてください。
1) 専門分野を見つける
1つ目の中小企業診断士資格の価値を上げるコツとしては、「専門分野を見つける」ことが考えられます。
中小企業診断士には、経営に関する横断的な知識が求められ、経営者からの多様な要求に応える力が必要となります。
ただ、単に横断的な知識を持っているだけでは、他の中小企業診断士と差別化をはかることができず、結果としてその他大勢の中に埋もれてしまいます。
「何でもできます!」という何でも屋ほど、頼む側からしてみれば扱いづらく、結果として依頼があまりこないものです。
そのため、「会計に強い中小企業診断士」「ITに強い中小企業診断士」といったように、自分の専門分野を1つ持っておくのがおすすめです。
何か難しいことのように思われるかもしれませんが、現職の知識を活かせば、専門分野を持つことは難しくないかと思います。
ITエンジニアとして働いているのであれば、IT分野を専門とすればいいですし、経理として働ているのであれば、会計分野を専門とすることができます。
試験勉強の段階から、試験合格後にどの分野を専門領域とする中小企業診断士として活躍するのか、考えておく必要があります。
以上より、「専門分野を見つける」ことは、中小企業診断士資格の価値を上げるコツと言えます。
会計を得意分野にしたいなら、財務諸表を「作成する」スキルを学べる簿記検定の他に、財務諸表を「分析する」スキルを学べるビジネス会計検定もおすすめです。
財務諸表から企業の安全性・収益性・成長性を読み解き、現状の経営課題を会計面から見つけ、必要な改善提案を行うためにも、ビジネス会計検定で基礎を磨いてみてください。
ビジネス会計検定と中小企業診断士については、「ビジネス会計検定と中小企業診断士試験の意外な共通点は?」も合わせてご確認ください。
2) 横のつながりを強化する
2つ目の中小企業診断士資格の価値を上げるコツとしては、「横のつながりを強化する」ことが考えられます。
中小企業診断士同士の横のつながりを、どの程度持っているかというのは、立派な差別化要素となり、資格の価値を上げる要素となります。
中小企業診断士同士の横つながりが多いいほど、そこから派生して、取引先や金融機関、社長さんなど多くのつながりを得ることができます。
横のつながりを強化すると聞くと、中小企業診断士となってからの話に思えるかもしれません。
しかし、試験勉強の段階からでも、受験仲間を作り・大切にすることで、横のつながりを長期的に育てることができます。
受験生時代であれば、例えば以下のような方法が考えられますので、積極的に利用してみてください。
・合格祝賀会に参加。
・SNSで仲間を見つける。
以上より、「横のつながりを強化する」ことは、中小企業診断士資格の価値を上げるコツと言えます。
4. 終わりに
中小企業診断士が意味ない・使えない資格と言われる理由について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
中小企業診断士という資格は、目的次第では非常に意味のある資格と言えます。
ご自身の目的に中小企業診断士資格が少しでも役に立ちそうなのであれば、まずは勉強を開始してみてください。
5. まとめ
◆コンサルティングは資格がなくてもできる。
◆儲からない。
◆社会的認知度が高くない。
◆資格取得にかける費用や時間を考えると、費用対効果が悪い。