経理の作業の中でも重要な「予算管理」。
重要であることは何となく理解できても、具体的に何に注意して取り組めばいいのかわからない方も多いかと思います。
そこで今回は、そもそも経理の予算管理とは何なのかをお伝えした上で、予算管理のポイントについて解説していきます。
まだ予算管理を経験したことがない人も、事前にポイントを押さえておくことで、いざその時が来た際に、自信を持って作業に取り組むことができますので、ぜひご一読ください。
1. 経理の予算管理とは?
2. 経理の予算管理のポイント6選!
1) 他部署の報告を鵜呑みにしない
2) 予実比較だけでなく経営課題も考える
3) 毎月予算管理を行う
4) 初めは大きな項目だけ設定する
5) 途中結果を可視化する
6) 必要に応じて予算を修正する
3. 終わりに
4. まとめ
1. 経理の予算管理とは?
1) 予算とは?
予算とは、事前に設定しておいた目標数値のことを言います。
勘定科目ごとや各部署ごとに設定されており、例えば「売上予算」「原価予算」「販管費予算」「利益予算」などが各部署ごとに設定されています。
そして、予算管理とは、以下のようなPDCAサイクルで構成されております。
予算の設定。
【Do】
予算を考慮しながら日々の活動を行う。
【Check】
予算と実績の比較。(予実比較)
【Action】
予算に達しなかった(超えてしまった)項目について、原因を分析して改善案を作成して実行する。
2) どうやって設定する?
それでは、予算はどのように設定されるのでしょうか?
大きく分けてトップダウンで設定される場合と、ボトムアップで設定される場合の2つがあります。
トップダウンの場合は、あるべき理想の姿が予算として設定されやすく、現場からすると達成困難な予算になりがちです。
一方でボトムアップの場合は、達成できそうな保守的な予算が設定されやすく、経営層からすると物足りないものになりがちです。
どちらに傾いても現場のモチベーションが低下しやすいため、適度な予算を設定する必要があります。
いずれにしろ、基本的には前年・前々年を見ながら予算を設定していくことが多いです。
また、予算の設定自体は各部署ないし経営層が行うものですが、その情報が経理に集まり、経理が会社全体の予算管理を行うのが一般的となります。
あまりに高い目標は現場のやる気をそぐため、本来は望ましくありません。
ただ、現状の方法に行き詰っている時などには、飛躍した目標を設定してみることも必要です。
前年より10%アップの売上予算を達成しようと思った場合は、やり方自体は前年と同じで後は頑張れば何とかなるかもしれません。
一方で、前年より100%アップの売上予算の場合、前年と同じ方法では到底達成できません。
そのため、普段では考えないような突飛なアイデアが検討されることとなり、それが現状打破のきっかけになることもあります。
ベンチャー時代に事業が伸び悩んだ際に、過度に高い予算を設定して、現状打破をしたこともありました。
3) 予算管理のメリット
それでは、予算管理にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
順に3つ解説していきます。
① 業績予測ができ戦略を立てやすい
予算管理の1つ目のメリットは、「業績予測ができ戦略を立てやすい」ことです。
予算は会社の未来予測でもあるため、しっかりとした予算を立てれば、1年間の会社の業績や1年後の財務状況を予測することができます。
つまり、今後の1年間の予算を立てることで、その数値をもとにさらに先の年度の戦略を立てることができ、長期の戦略を策定することができます。
また、短期的にも具体的な目標ができるため、より現実的な戦略を立てることが可能となります。
以上より、「業績予測ができ戦略を立てやすい」ことは、予算管理のメリットと言えます。
② 各部門のモチベーションになる
予算管理の2つ目のメリットは、「各部門のモチベーションになる」ことです。
「とりあえず頑張って。」と言われたら、皆様どう思うでしょうか?
新卒1年目であれば、とりあえずがむしゃらに頑張ることも可能かもしれません。
しかし、多くの人は、「何をどの程度頑張ればいいの?」と思われることでしょう。
人は目標が具体的になるほど現実的に自分がすべきことがわかり、モチベーションが上がります。
もちろん過度に高い目標や低い目標は逆にモチベーションを低下させるおそれがありますが、適度な目標を予算として設定すれば、各部門の従業員のモチベーションアップにつながります。
以上より、「各部門のモチベーションになる」ことは、予算管理のメリットと言えます。
③ 評価が明確になる
予算管理の3つ目のメリットは、「評価が明確になる」ことです。
ただ単に「頑張ったから」評価されたり、逆に「頑張っているように見えないから」評価されなかったりといった経験が、皆様一度はあるのではないでしょうか?
この点、予算を設定することで、各部門ごとの目標が決まり、達成・未達成が明確にわかるようになります。
つまり、客観的な評価基準ができあがります。
部門の予算は、最終的には従業員一人一人の予算までブレークダウンすることが多いため、従業員一人一人の立場でも客観的な評価基準が出来上がります。
以上より、「評価が明確になる」ことは、予算管理のメリットと言えます。
2. 経理の予算管理のポイント6選!
1) 他部署の報告を鵜呑みにしない
1つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「他部署の報告を鵜呑みにしない」ことが挙げられます。
例えば営業部門から、「今月の利益予算は達成見込みなので大丈夫です!」と連絡がきても、鵜呑みにしてはいけません。
部門別の利益は「売上-原価-販管費」で計算され、経費などの販管費を抑えた結果の利益予算達成である場合は、売上予算は未達の可能性もありえます。
また、営業の中に2つの事業部があり、A事業部が大幅な黒字でB事業部が大幅な赤字の結果として、営業部全体で利益予算を達成している場合には、B事業部に経営課題がある可能性があります。
このように、各部署から上がってくる大枠の予算達成・未達成だけを経理は鵜呑みにするのではなく、その背景に隠れている事実についても検討する必要があります。
以上より、「他部署の報告を鵜呑みにしない」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
2) 予実比較だけでなく経営課題も考える
2つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「予実比較だけでなく経営課題も考える」ことが挙げられます。
予算管理は、ただ予算と実績の差額を計算するだけで終わらせてはいけません。
そもそもただ差額を計算するだけであれば、経理でなくてもできる仕事であり、自動化することも比較的簡単です。
予算管理で経理に求められているのは、予実比較の結果として、どのような経営課題が浮き彫りになったのかといった点を、経営層や各部署に伝えることです。
例えば、「先月は100万円ほど予算よりも多くの経費が発生していました。」と報告するだけでは不十分です。
その原因は何で、当月もまた起こりえるのかどうか、起こる得る場合はその対応策などについても言及する必要があります。
「経営管理の肝は経理にあり!経営管理のポイントをご紹介」でお伝えした通り、経理とは経営管理を担う部署であり、ただ単に計算だけをしていればよい部署ではありません。
以上より、「予実比較だけでなく経営課題も考える」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
3) 毎月予算管理を行う
3つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「毎月予算管理を行う」ことが挙げられます。
毎月毎月予実を比較して原因究明するのは大変なので、四半期に1回や2ヶ月に1回にしたいと思われる方もいるかもしれません。
ただ、経理の予算管理は必ず「毎月」行ってください。
予算の達成度合いに応じて、事業戦略が変わることも多く、より適時に予実の状況を把握しておく必要があるためです。
例えば、4~6月の予実管理を7月頭に行った場合、4月時点で大幅な売上の予算未達が起きており、その原因がライバル企業が新たなキャンペーンを打ったことだったとします。
この場合に、自社でも同様のキャンペーンを打つことが考えられますが、7月にその判断を行っていては遅すぎます。
この点、毎月予算管理を行っていれば、翌月の5月には手を打つことができます。
以上より、「毎月予算管理を行う」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
4) 初めは大きな項目だけ設定する
4つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「初めは大きな項目だけ予算を設定する」ことが挙げられます。
新たに予算管理に取り組む場合に、初めから細かい項目まで予算を設定すると、適正な予算が設定できず、すぐ修正が必要となり、修正に修正を重ねることで、予算が形骸化していきます。
初めはそもそも前例がないため、どの程度が適正な予算水準であるかがわかりません。
そのような状況で細かい予算を立てても、絵に描いた餅になります。
であれば、とりあえず前年ベースで一定以上の金額の項目だけ予算を設定してみてください。
その他の細かい項目は、初めは文字通り「その他」としてまとめて、適当に予算を設定する程度でかまいません。
初めからうまく予算を立てることは不可能ですので、大きい項目から慣れていきましょう。
以上より、「初めは大きな項目だけ予算を設定する」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
5) 途中結果を可視化する
5つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「途中結果を可視化する」ことが挙げられます。
月の予算について、毎月その月が終わって初めて達成状況がわかるといった状況では、月の途中で従業員一人一人が、あとどの程度頑張ればいいのかわかりません。
簡単な速報値で構わないので、例えば売上予算であれば「あと○○万円売り上げれば予算達成!」、販管費予算であれば「あと○○万円以内に抑えれば予算達成!」と経理から発信することも大切です。
各従業員が1ヶ月間モチベーションを保ち続けるためにも、途中途中での速報値の報告が大事となります。
もちろんあまり細かい点まで速報値を出していては、経理の負担が重くなりますので、費用対効果を冷静に見極めて、報告内容や頻度を判断する必要があります。
以上より、「途中結果を可視化する」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
6) 必要に応じて予算を修正する
6つ目の経理の予算管理のポイントとしては、「必要に応じて予算を修正する」ことが挙げられます。
予算は一度決定したら、簡単に変更すべきではないです。
といいますのも、予算をコロコロ変更していると、予算が形骸化してしまうためです。
では、全く変更しないのが良いかと言うと、これも問題があります。
年の途中で市場環境や自社の状況が変化し、当初想定の予算を達成することがあまりにも難しい、あるいは簡単な状況となってしまった場合に、そのままの予算を使い続けるのも、結果として予算の形骸化を招きます。
そのため、状況によっては予算の修正を検討するのも、経理の重要な役目となります。
以上より、「必要に応じて予算を修正する」ことは、経理の予算管理のポイントと言えます。
3. 終わりに
経理の予算管理のポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
予算管理は会社を成長させるためにも、非常に重要な仕事です。
もし皆様が予算管理を担当することになった場合、今回紹介したポイントをぜひ思い出して取り組んでください。
4. まとめ
◆経営課題は何なのかを考える。
◆「毎月」予算管理を実施。
◆初めは大きな項目だけ設定する。
◆月中の速報値を出す。
◆必要があれば年度途中に修正する。