中小企業診断士を大学生が勉強するメリット・デメリット

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大企業に就職しても、人生安泰とは言えない昨今。

中小企業診断士の資格は、大学生にとって非常に強力な武器になりえる資格です。

就活で高く評価されますし、就職後も俯瞰した視点を持って、社内情報にあたることができます。

さらに、今後より一層緩和されるであろう副業においても、この資格があれば収入の桁が一つ違ってきます。

その一方、中小企業診断士は一般社会人であっても、取得が大変難しい資格です。

先輩社員や管理職の人たちが、チャレンジと挫折を繰り返しているのも事実であり、大学生が取得するにはそれなりのハードルを、覚悟しなければなりません。

今回は、大学生が中小企業診断士を目指すことについて、メリットとデメリットをピックアップしながら、解説していきます。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・中小企業診断士講座の元運営責任者
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 大学生が診断士を勉強するメリット

大学生が中小企業診断士を勉強するメリット

ここでは、大学生が中小企業診断士を勉強するメリットを、6つピックアップして解説します。

 

1) ビジネスの基礎知識が身につく

中小企業診断士にチャレンジする過程で学ぶ知識は、様々な業種や職種で必要となる知識です。

 

《1次試験科目と学ぶこと》

経済学・経済政策 マクロ経済(国家単位)とミクロ経済(企業や家計単位)について学ぶ。金融系企業やコンサル系企業などで役立つ。
財務・会計 財務諸表(BS/PL)による経営分析や資金調達、投資などについて学ぶ。金融系企業では必須の知識。一般企業でも経理部や販売部門で役立つ。
企業経営理論 経営戦略論、組織論、マーケティング論、労働法規について学ぶ。事業計画策定に役立つため、経営企画部や商品企画部などで特に有用。また、組織論の知識は人事部や総務部で有用。
運営管理 生産管理、店舗販売管理について学ぶ。製造業や小売業で役立つ。
経営法務 会社法や民法など、創業期から倒産にいたるまでの会社を取り巻く法律について学ぶ。コンプライアンスの知識は法務部で、知的財産関連の知識は研究開発に関連する部署で役立つ。
経営情報システム 企業のIT化・情報化について学ぶ。IT関連企業でももちろん役立つが、情報化を進める企業であればニーズが高い知識。
中小企業経営・政策 中小企業の動向調査や中小企業に対する行政施策などを学ぶ。補助金申請などの業務に役立つ。

 

上の表を見てもわかるように、財務会計から店舗や工場などの運営管理、さらには法務やIT情報システムまでを網羅する資格は、他に類を見ません。

普通に会社員として定年まで働いていたのでは、これらと同じ知識を身につけるのはまず不可能でしょう。

それだけ範囲が広く、かつ深い知識を身につけなければ、試験に合格することはできません。

大学生は会社での業務経験がないため、中小企業診断士の資格取得は簡単ではありませんが、知識だけでも持っておくと、就職後に必ず役立つ場面がやってきます。

 

2) 論理的思考が身につく

2次試験で合格するためには、論理的思考、つまりロジカルシンキングが不可欠と言われています。

ロジカルシンキングとは、物事の因果関係を飛躍や矛盾がないように、体系的に整理していく思考法のことです。

日本人は普段、何となくのニュアンスや感覚でコミュニケーションをとることが多いですが、ビジネスの場においてはそれが意思伝達や意思決定に悪影響を及ぼしてしまいます。

ましてや、中小企業診断士の主要業務は経営コンサルティングであり、相手に現状の分析結果を説明し、理解してもらわなければ話になりません。

つまり、感覚的な話ではなく、論理的に説明できるスキルが必須なのです。

そのため、「なぜそうなるのか」という因果関係を、論理的かつ明快に整理して伝える必要があり、それを実現する手段として、ロジカルシンキングが用いられています。

また、企業が実施する管理職や経営層が対象の研修では、ロジカルシンキングをテーマにしたものが少なくありません。

つまり、企業にとってもロジカルシンキングは、ぜひとも社員に身につけさせたいスキルなのです。

中小企業診断士の試験では、2次試験でこのロジカルシンキングのスキルが必要になってきます。

経験のない人は皆、最初に苦労しますが、繰り返し演習することで身についていきます。

 

3) 人脈ができる

中小企業診断士は、人脈を広げやすい資格として有名です。

もちろん本人の意識が重要で、何もしないで人が寄って来るわけではありませんが、意識的に人脈形成に取り組んだ人の中には、「爆発的な人脈の広がりに驚いた」という経験をしている人も少なくありません。

「意識的」といっても、方法は極めてシンプルです。

中小企業診断協会という業界団体に加入し、意欲的に活動をすればよいのです。

中小企業診断協会では研究会や勉強会などのグループがあり、そこに参加することで同じ資格を持つ者同士のつながりができます。

中小企業診断士の合格者は、30代~50代がメインです。

その中には会社を興している人、大手企業に勤めている人、専門スキルを持った人など、多種多様な人たちがいます。

若いうちからそういった人たちとつながりが持てたら、その後のメリットは計り知れません。

そもそも、学生の合格者ということであれば嫌でも注目を浴びますし、注目されれば良きメンター(お手本となる人)に巡り合える可能性も高まります。

また、異業種交流会といったイベントに参加して、積極的に他の人たちと絡んでいけば、それが元で新たな人脈の広がりにつながることもあります。

とにかく、「そんなに若いのに合格できたの?」と言われるような出会いがたくさんあることが、大きなメリットなのです。

 

4) 就活でアピールできる

中小企業診断士の資格は、就活でも大きな威力を発揮します。

そもそもこの資格は、会社員に大変人気がある資格です。

「ぜひ取りたい!」と勉強に励んでいる人が多くいる中で、ストレート合格率はわずか4%~7%しかありません。

つまり、履歴書の資格欄に「中小企業診断士」の文字があれば、普通の会社員なら目を留めるはずですし、人事担当者ならなおのこと注目して、話題に上げてくることでしょう。

学習時間を確保するための継続的な努力、そして実際に合格を勝ち取る能力、その結果としての企業経営に関する幅広い知識。

一般的な大学生と比べたら、1歩2歩どころじゃない先を走っているわけで、「この資格を持っていたらよほどのことがない限り落とさない」と考える採用担当者もいるはずです。

油断は禁物ですが、中小企業診断士の資格を持っていれば、他の学生と比べてかなり有利であることは間違いないでしょう。

ちなみに、学生の合格者は年に数十人しかいません。

 

《令和5年度受験状況》

1次試験 申込者数 合格者数
全体 25,986人 5,521人
学生 639人 106人

 

2次試験 申込者数 合格者数
全体 8,601人 1,555人
学生 149人 28人

 

令和5年度の場合、学生の1次試験合格率は16.6%、2次試験の合格率は18.8%です。(*申込者数を分母にして計算。)

狭き門ではあるものの、一般の人と比べても、そん色ない合格率ですから、決して無理な話ではありません。

また、大学時代に中小企業診断士の資格を取得した人の口コミを見て回ると、

・資格自体を評価してもらえた
・面接前に経営資料を読むことで自信がでた
・就職後にメリットを感じるケースが多い
・学生のうちに社会人との人脈が広がった
・大学の勉強との相乗効果が得られた

といった口コミが見られました。

どの口コミも満足度の高いものばかりであり、少なくとも就活においては、メリットしかないといえます。

 

5) 学業との相互作用が期待できる

中小企業診断士の試験勉強で学ぶ知識は、大学の授業とも少なからず被っています。

学部による差は大きいものの、相互に学習することで、より理解を深めることができるでしょう。

 

① 経営学部・商学部・経済学部

「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営理論」が一部の授業と被ります。

中小企業診断士の勉強との、高い相乗効果が見込めます。

 

② 法学部

「経営法務」では、民法や会社法などの法律を学ぶので、法学部の一部授業と相乗効果が見込めます。

 

③ 工学部・理工学部

「経営情報システム」で情報通信技術と経営情報管理を学ぶので、一部の授業と内容が被ります。

「経営情報システム」は暗記科目とも言われているので、覚えさえすれば一定の相乗効果が見込めるでしょう。

 

6) 就職後の資格取得に役立つ

多くの企業では、業務に関連する資格の取得を奨励しており、中小企業診断士の勉強がそれらの資格取得に役立つことも、少なくありません。

通常、新入社員は経験を積みながら、資格の勉強をして試験にチャレンジしていきます。

しかし、中小企業診断士の知識を持っている人であれば、どんな分野であれ、それなりの知識を習得しているはずなので、新たに勉強することは少なくてすみます。

3年目4年目の社員が取得するような資格を1年目から取れれば、社内での評価も高まるでしょう。

ここでは、中小企業診断士の勉強が役立つとされる資格を、いくつかご紹介します。

 

① 日商簿記検定

中小企業診断士の科目である「財務・会計」と高い関連性があります。

あらゆるビジネスの基本である簿記が学べます。

 

② ビジネス実務法務検定

「経営法務」と高い関連性があります。

昨今のコンプライアンス意識の高まりを受け、このような法律系の資格はニーズが急増しています。

 

③ 販売士

「運営管理」と高い関連性があります。

販売やマーケティング分野の企業だと、高く評価される傾向があります。

 

④ ITパスポート、情報処理技術者

「経営情報システム」と高い関連性があります。

ITパスポートはIT関連の基礎知識を問うもの、情報処理技術者はさらに専門的な知識を問われる試験となっています。

 

関連資格の詳細については、「中小企業診断士試験の関連資格7選」も合わせてご確認ください。

★おすすめ通信講座
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。

・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト

詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。

 

2. 大学生が診断士を勉強するデメリット

大学生が中小企業診断士を勉強するデメリット

それでは次に、大学生が中小企業診断士の試験勉強をすることの、デメリットについてみていきます。

 

1) 大学生活が犠牲になる

最も大きなデメリットは、試験勉強のために大学生活の一部を犠牲にしなければ、合格は難しいという点です。

中小企業診断士は資格取得までに、1,000時間程度の勉強時間が必要となります。(参考「中小企業診断士の勉強時間は1,000時間?半年合格は無理?」)

1日1~2時間の勉強をやったりやらなかったり、というペースでは全然足りません。

毎日3時間弱の勉強をして、やっと1年で1,000時間の勉強時間になります。

大学生活が4年間しかない中で、1,000時間もの時間を試験勉強に充てるとなると、ある程度は他のことを犠牲にする必要が出てくるわけです。

例えば、アルバイトやサークル活動に少なからず影響が出ますし、環境がガラッと変わる留学などは、人によってはかなり厳しいでしょう。

また、就活に間に合わせたい場合は、3年生の2月ごろまでに、資格を取得しておく必要があります。

3年生の2月に合格となると、1次試験は3年生の8月です。

ということは、遅くとも2年生の春ごろからは始めておかなければ、ちょっと厳しいということです。

ただ、朗報があります。

令和3年より、1次試験の合格者に対しても、名称が付与されています。

1次試験、もしくは1次試験のどれかの科目に合格できていれば、「令和3年度 中小企業診断修得者」とか「令和3年度 中小企業支援科目合格者(経営法務)」といった具合に、履歴書に記載することができます。

「資格取得には至っていませんが、計画的に科目合格しています。」といった具合にアピールすれば、面接官の心証も良いでしょう。

 

2) 将来に関係しない分野もある

中小企業診断士の試験は勉強する分野が幅広いうえに、4割未満の科目は不合格となってしまうため、まんべんなくしっかりと勉強する必要があります。

中には自分が思い描くキャリアとは、無縁と思える分野も勉強しなくてはならず、その点がモチベーション維持に悪影響を与えることも考えられます。

例えば、英語力を磨いておきたいと思っている人にとっては、同じ時間を費やすなら、TOEICの勉強をした方が将来につながるのではと思ってしまうはずです。

そして、そのような疑念を抱いてしまうと集中力を欠いてしまい、勉強のパフォーマンスが低下してしまいます。

結果として試験合格が遠のくことになりますから、取得を目指すと決心する前に、十分に検討することが大切です。

 

3) お金がかかる

当たり前の話ですが、中小企業診断士の資格取得には、お金がかかります。

大きく分けると、勉強するための費用と、受験するための費用があります。

 

① 勉強するためにかかる費用

勉強するためには独学、通学講座受講、通信講座受講の3パターンがあり、それぞれの費用の目安は、以下のような金額になります。

 

《勉強手段別費用》

通学講座 30万円前後
通信講座 5万円~30万円
独学 5万円前後~

通学講座とは、昔からある資格予備校などで、教室に通って講義を受けるタイプの勉強法です。

受講費用は高額ですが、サポートは手厚く、オンライン講座がセットされているものもあります。

通信講座はパソコンやスマホ、タブレットなどでの受講を前提に、カリキュラムが組まれています。

大手資格学校では通学講座と変わらない価格設定で高額なものもありますが、中堅の資格学校では5万円を切るコースも用意されており、人気です。

独学の場合は、メインのテキスト代に模擬試験対策も含めて5万円程度、という場合が多いです。

独学は気軽に始められて費用も安いですが、社会人経験のない学生が独学で中小企業診断士の試験に合格するのは、至難の業です。

結果的に遠回りになりかねないので、通信講座などの受講をおすすめします。

 

② 受験するための費用

中小企業診断士の資格試験を受けるには、以下の手数料を払う必要があります。

 

《受験手数料》

1次試験 13,000円
2次試験 17,200円

 

1次試験、2次試験トータルで3万円程度が必要になります。

 

3. 終わりに

以上、大学生が中小企業診断士にチャレンジすることについて、いろいろとみてきました。

結論からいえば、「時間が確保できるならメリットしかない」と考えて間違いありません。

中小企業診断士は、多くのビジネスパーソンがプライベートな時間を割いて、チャレンジする資格です。

10年、20年と経験を積んだ人たちが、「この資格があったらいいな」と感じる資格に、大学在学中のうちからチャレンジできるメリットは、とてつもなく大きいといえます。

最終合格はかなりのハードルではあるものの、令和3年からは1次試験の合格者であることを示す名称も使えることになりました。

将来を見据えて勉強したことの証しにもなりますので、気になる人はぜひチャレンジしてみてください。

 

4. まとめ

Point! ◆様々な業種や職種で役立つ基礎知識を学べる。
◆論理的思考を身につけることができる。
◆人脈形成に役立つ。
◆就活で評価される。
◆大学授業との相乗効果が期待できる。
◆就職後に会社の奨励資格を取得する際役立つ。
◆一番のデメリットは多くの時間を取られてしまうこと。
◆お金もそれなりにかかるので通信講座がおすすめ。

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