簿記の勉強をしていると、「理屈は理解しているのに、仕訳を暗記していないから解けない。」あるいは「仕訳は暗記しているけど、理屈が理解できないから解けない。」といった状況に直面することがあります。
ここで問題となるのが、「暗記」と「理解」はどちらが大事なのか?といった点です。
そこで今回は、簿記検定3級・2級を受験する人を想定して、簿記検定において「暗記」と「理解」どちらが大切なのか?といった点について、解説していきます。
また後半では、簿記検定におすすめの暗記法3選についても紹介しておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
1. 簿記は暗記と理解どっちが大事?
1) 簿記検定における暗記と理解
2) 暗記と理解それぞれのメリット
3) 商業は暗記、工業は理解を重視
2. おすすめ暗記法3選
1) 数多く触れる
2) 青ペンで書いて覚える
3) 章ごとに1度戻って復習する
3. 終わりに
4. まとめ
1. 簿記は暗記と理解どっちが大事?
1) 簿記検定における暗記と理解
そもそも簿記検定において「暗記」「理解」といった場合、どのような内容を指すのでしょうか?
本記事で「暗記」「理解」といった場合は、以下を意味しております。
テキストの内容を、テキストを見ないで言えるようになることを指します。
特に簿記検定においては、問題に答えるために必要な『仕訳』が暗記の中心となります。
なぜそうなるのか?といった理由がわかることを指します。
特に簿記検定においては、1つ1つの仕訳が導き出される過程や、原価計算における原価の集計過程を知ることが中心となります。
2) 暗記と理解それぞれのメリット
それでは具体的に、簿記検定において暗記・理解を重視することで、それぞれどのようなメリットがあるのでしょうか?
順に解説していきます。
① 暗記のメリット
・問題に解答できる
例えば、リース取引の理屈をどんなに理解していても、仕訳を暗記していなければ、試験で解答することができません。
試験本番で解答する上で、最低限の暗記は必須となります。
・解答スピードが上がる
例えば、建物を購入した際の未払額について、買掛金と未払金のどちらの勘定科目を使用するか考える際に、「営業取引以外により生じた債務」に該当するため未払金となる、と理解していたとします。
この理屈を理解することも大切ですが、試験本番では「建物の購入による未払額=未払金」と暗記していた方が、圧倒的に解答スピードが上がるため、この点も暗記の大きなメリットと言えます。
② 理解のメリット
・暗記の効率が上がる
例えば、ファイナンス・リース取引は、リース物件を「購入した」のと同様の経済的実体を持つリース取引であるため、「資産・負債」を計上し、反対にオペレーティング・リース取引は、リース物件を「借りた」のと同様の経済的実体を持つリース取引であるため、リース料を「費用」として計上します。
この際に、単にファイナンス・リース取引では資産・負債が、オペレーティング・リース取引では費用が計上されると暗記するよりも、「買って自分のものになったから資産・負債が計上される。」「借りているだけだから借りた分だけ費用が計上される」と理屈を理解した方が、暗記しやすくなるのです。
・応用問題が解ける
先程の建物の購入取引における未払額の例において、実は未払金ではなく買掛金を使用するケースもあります。
不動産業を営んでいる場合などは、建物の購入取引が営業取引に該当するため、その未払額は買掛金となるのです。
(詳細は「簿記:未払金と未収入金とは?建物の購入は必ず未払金になる?」をご参照ください。)
このような応用的な問題は、理屈を理解していないと解けません。
3) 商業は暗記、工業は理解を重視
それでは本題ですが、簿記検定において、暗記と理解どちらを重視すべきなのでしょうか?
結論としては、「商業簿記は暗記」「工業簿記は理解」を重視して学習することをおすすめします。
商業簿記においても理解は当然に大切ですが、詰まるところ仕訳を暗記できているか否かが、大きな差となります。
商業簿記でも応用的な問題はある程度出題されますが、合否を決定づけるような問題は広く浅く出題されるため、深い理解よりもいかに多く暗記しているか?といった点が重視されます。
これに対して、工業簿記の問題は狭く深く出題されるため、1つ1つの論点をいかに理解しているか?といった点が大切となります。
例えば、単に総合原価計算といっても、「単一工程単純総合原価計算」「工程別総合原価計算」「等級別総合原価計算」「組別総合原価計算」といった複数の種類があり、それぞれの計算方法や違いを理解しておく必要があるのです。
(商業簿記と工業簿記については、「商業簿記と工業簿記の違いとは?先にどっちを勉強すべき?」も合わせてご確認ください。)
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2. おすすめ暗記法3選
暗記と理解のどちらを重視するか?といった問題はあるにせよ、暗記が必要であることには変わりありません。
そこでここでは、少しでも暗記の効率を上げるために、おすすめの暗記法3選について紹介していきます。
1) 数多く触れる
1つ目の簿記におすすめの暗記法は、「数をこなす」ことです。
1回で全て覚えられれば理想ですが、土台無理な話です。
まずはその事実を受け入れて、読む・書く・見る・聞くなどどの方法でもかまいませんので、とにかく暗記したい内容に数多く触れることが大切となります。
例えば、1回で完璧に覚えるために1時間使用するなら、1回1回は簡単に触れる程度でいいので、10分×6回を繰り返した方が、長期的には記憶に定着しやすいです。
特に、仕訳の暗記はスポーツと同じで反復が重要となりますので、「覚える⇒テストする」をひたすら繰り返す必要があります。
また、スキマ時間を有効活用するためには、アプリもおすすめです。
簿記検定におすすめのアプリについては、「簿記2級のアプリおすすめ5選!」をご参照ください。
以上より、「数多く触れる」ことは、簿記におすすめの暗記法と言えます。
2) 青ペンで書いて覚える
2つ目の簿記におすすめの暗記法は、「青ペンで書いて覚える」ことです。
やり方はいたってシンプルで、簿記の勉強をする際に青色のボールペンを使用するだけです。
ポイントは「青色」と「書く」の2つ。
① 集中力を高める青色
青色には精神をリラックスさせる、セロトニンというホルモンを分泌する効果があります。
つまり、勉強中に青色を見ることでリラックスすることができ、結果的に集中力が高まり暗記の効率が高まるのです。
② 書くことの効果
手を動かして書くことは、一見すると非効率的な勉強に思えるかもしれません。
ただ、できるだけ多くの五感を刺激した暗記の方が、視覚だけの暗記よりも記憶に定着しやすいです。
つまり、手を動かして視覚だけでなく触覚を刺激し、あるいは書く際の音により聴覚も刺激することが、効率的な暗記につながるのです。
以上より、「青ペンで書いて覚える」ことは、簿記におすすめの暗記法と言えます。
3) 章ごとに1度戻って復習する
3つ目の簿記におすすめの暗記法は、「章ごとに1度戻って復習する」ことです。
例えば、テキストの目次が以下のようになっていたとします。
2.売掛金・買掛金
3.手形
4.有価証券
最初から最後まで一通りやった後にまた最初に戻るのが一般的な学習方法かと思いますが、この方法では以下の順番で勉強します。
⇒ 2.売掛金・買掛金
⇒ 1.現金預金
⇒ 3.手形
⇒ 2.売掛金・買掛金
⇒ 4.有価証券
⇒ 3.手形
短期記憶を長期記憶にするためには、その日や1週間後の復習が推奨されており、章ごとに1度戻る方法では、比較的早いタイミングで復習することができるため、暗記の観点からおすすめと言えるのです。
ただし、この方法で1回1回の復習をしっかりすると、一通り終えるのに膨大な時間がかかってしまうため、1回1回の復習はさらっとするのがコツとなります。
以上より、「章ごとに1度戻って復習する」ことは、簿記におすすめの暗記法と言えます。
3. 終わりに
簿記における暗記と理解の違いや重要度についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
言うまでもなく、暗記と理解はどちらか片方だけをやればいいものではなく、バランスが大切となります。
暗記と理解のバランスをうまくとりながら、簿記検定合格に向けて勉強を進めてください。
4. まとめ
・そもそも暗記しないと解答できない。
・解答スピードが上がる。
◆理解のメリット
・暗記の効率アップ。
・応用問題に対応できる。
◆商業簿記は暗記重視。
◆工業簿記は理解重視。