営業職にとって、転職先を「大手」にするか「中小企業」にするかは、分かれ道のひとつ。
その後のキャリアを左右する場合もあり、選択に困る方も多いのではないでしょうか?
今回は求人サイトなどを閲覧する前に知っておきたい、大手と中小企業の違いを、メリットとデメリットにわけてお伝えしていきます。
それぞれの強みや弱みもわかりますので、転職の予定がない方もぜひご覧ください。
1. 大手営業のメリット・デメリット
まずは、大手企業で営業をする、メリット・デメリットからみていきます。
それぞれたくさんある長所・短所の中から、代表的なものをピックアップしました。
その詳細について確認していきましょう。
1) メリット
① 中小企業に比べて給与や待遇が良い
大手企業で営業をするメリットの1つ目は、給与や待遇が良い点です。
大手企業は、事業規模が大きいため、営業に支給される給与水準も高くなります。
そのため、当然ですが年収についても、中小企業より高くなるケースがほとんどです。
賞与なども含めると大きく違う場合もある給与は、大手で勤務する一番のメリットと言えるかもしれません。
また、給与待遇以外に整備されている、細かい手当などにも違いはあります。
企業によって違いはありますが大手の場合は、残業手当はもちろん、住宅手当や家族手当など、各種手当が整っている場合がほとんどです。
生活を送るなかで必要になる、細かい経費や費用についてのサポートがあるのは、安心感にも繋がります。
営業に集中できる環境が整えられているのも、大手ならではと言えるメリットでしょう。
そして、営業職には見逃せない、インセンティブや業績給についても、中小企業より高い水重になる場合がほとんどです。
給与や手当は営業意欲にも直結しますので、中小企業の営業にとっては見たくない現実。
しかし、取引先が多く、金額のスケールも大きい傾向にある大手営業ですので、企業が得る利益が中小企業に比べ大きいのは当然です。
企業が得た利益をしっかり還元している大手企業は、必然的に給与待遇が高くなる傾向にあります。
キャリアが上がれば上がるほど、同じ業種でも違いがでてくることも否めません。
安定して水準の高い待遇を得られ、右肩上がりの将来を想像できる点に、大手企業のメリットはあります。
また、福利厚生の充実度も、大手の強みである待遇のひとつです。
大手の場合は有名チェーン店の割引やテーマパークの割引など、幅広い企業との提携をしている場合も多く、従業員だけの割引サービスも存在します。
商品や製品を扱う大手メーカーや大手販売店などは、自社商品を社員割引で購入できるのも、嬉しいポイントです。
今では、社員食堂を充実させる大手企業も増えており、福利厚生面もどんどん豪華になっている傾向にあります。
給与や待遇については、大手企業で勤務する場合の方が、メリットを感じることができるでしょう。
② 営業としてスケールの大きな案件が多い
大手企業で営業を経験するメリットは、事業やサービスのスケールもあります。
多くのユーザーやクライアントを抱える大手企業では、国内のみならず、世界に影響するサービスの営業を経験できる場合もあります。
自社サービスや事業で、多くのユーザーの課題を解決したり、喜びを提供できるスケールは、中小企業に比べ格段に大きい場合がほとんどです。
自分の営業が多くの人々や企業へ影響するやりがいは、大手企業勤務ならではと言えるでしょう。
そして、スケールの大きな案件で携わる中で営業としても成長でき、多くの有能なビジネスパーソンと仕事できるのもメリットです。
当然ですが、影響の範囲が広がるほど、責任の大きさや重さは増すものです。
プレッシャーを成果に変換する為に、努力し続ける必要があるのは言うまでもありません。
責任感を感じながら、努力を継続していくことで、成長スピードが増していきます。
そして、成果がでれば、仕事を通してより知名度や社会貢献度の高い企業との取引も可能になります。
その中で出会う企業外のビジネスパーソンとの人脈は、営業の成長にとっても非常に良い影響があるはずです。
想像を越える多くのユーザーや、能力の高いビジネスパーソンとの出会いも楽しめるのが、スケールの比較的大きな大企業勤務のメリットと言えます。
2) デメリット
① 大きな歯車の1ピースと感じる場合もある
大手企業の場合は多くの社員が所属しているため、任される役割も初めは大きくありません。
求人やWEBなどの情報をもとに、大きな事業に取組むイメージのみで入社すると、自分の役割や影響の範囲の小ささに驚くこともあります。
それは、企業全体の事業スケールと比べてしまうからでもあります。
大きな事業のなかの一部分ですので、実際は影響範囲も意外と大きいものです。
しかし、事業や組織が大きすぎて、自分の貢献度や事業の範囲が小さく思え、やりがいを得られないケースも少なくありません。
自分が組織や企業を引っ張っていきたい想いがある方や、組織を変えたい想いが強い方ほど、大きすぎるマーケットや組織に気づくと、意欲を継続できなくなってしまいます。
そうして、大きな組織において、歯車の1ピースでしかないと感じるようになることが、デメリットとなります。
個人的な考え方次第の面はありますが、実際は大きな組織の一部分でしかないのが現実です。
その現実を踏まえた上で、より成長していく想いがある営業でなければ、大企業で成功することは難しいと言えるでしょう。
② 全国転勤の場合も多い
大手企業勤務の場合は、全国各地に拠点がある場合も多く、全国転勤が必要なケースもあります。
極端に旅行が好きな方や、色んな地域に住みたい方以外は、デメリットとなるでしょう。
例えば、営業の仕事を経験するうえで、人脈は業務以上に大切なものです。
自分なりに努力し、工夫しながら築いてきた人脈を、突然の転勤によって手放さざる負えないケースも、少なくありません。
企業側としては、クライアントに寄り添いすぎて、中立な事業運営ができない場合があるために、定期的な転勤を行なう場合もあります。
しかし、営業職にとってクライアントとの関係性や築き上げた信頼関係は、かげがえのないものです。
ビジネスライクではない、本質がわかる営業であれば特に、定期的な転勤はデメリットに感じるでしょう。
そして、全国転勤のデメリットは、プライベートにも及びます。
例えば結婚して、お子さんが生まれたとしましょう。
お子さんが小さいうちは、家族みんなで転勤先へ引っ越しも可能ですが、ほとんどの方は家族全員での引っ越しができるのは、せいぜい小学生くらいまでです。
場合によっては単身赴任となる為、小さい頃のお子さんや、思春期の多感な時期に寄り添えず、寂しい想いをさせることも少なくありません。
子供に寄り添えないまま仕事をし続けることで、働く意味を考えさせられたり、自分自身も寂しい想いを感じることもあります。
生活の理想像として、家族と共に暮らすビジョンをお持ちの方や、子育てを大切にしたい方にとっては、全国転勤がある点もデメリットと感じるでしょう。
2. 中小営業のメリット・デメリット
1) メリット
① 企業を引っ張る実感を感じられる
中小企業で営業をするメリットとしては、組織内での役割が大きい事です。
大手企業に比べ、少数精鋭で事業展開する中小企業では、ひとりひとりの任される役割も、当然割合が大きくなります。
ひとつの案件が今年の賞与を左右したり、社員旅行に行けるか否かが左右される中小企業もあるほどです。
そのような環境ですので、自分自身の成長は会社の成長に繋がると実感しながら、やりがいを感じて仕事ができます。
自分の頑張りや工夫・努力が、企業の成長に反映される環境は、大手では感じられない意欲に繋がるでしょう。
また、中小企業の場合は営業職として入社した場合も、幅広い業務を行なうことも少なくありません。
企業にもよりますが、自社WEBサイトのメンテナンスをしたり、サービス開発を行なったり、海外事業を新たに始めることもあります。
企業にとって必要なことをどんどんとチャレンジしていき、あらゆる役割をこなすことも、中小企業ならではの楽しみです。
自分が携わる範囲が広ければ広いほど、愛着がわき、それが仕事の意欲にも繋がります。
また、経験を経るごとに教育やマネジメントにも関わることで、さらに組織を牽引する自覚が生まれてくるものです。
新人営業に教育を施し、一人前に活躍するまでの経緯も、一緒に経験していきます。
自らが育てた営業と共に、企業を大きくしていくことは、働く喜びを大いに感じられるはずです。
企業自体を自分の生き様と重ね合わせながら、意欲を持って勤務し続けられるのは、中小企業営業の最大のメリットだと言えます。
(営業で実感できる『楽しさ・喜び』については、「営業が楽しいと感じる瞬間とは?」も合わせてご確認ください。)
② 組織や地域との繋がりのなかで仕事できる
中小企業の場合は、会社のある地域と共存していることも、多いものです。
なかには、地域全体の成長の一端を担っている企業もあり、街の活性化をしている実感を感じられる仕事ができるのも、中小企業営業のメリットといえます。
営業職は特に、自分の喜びだけでは長くモチベーションが続かないものです。
なるべく利他的な目的も見つけながら仕事をすることが、長く活躍できる秘訣でもあります。
その点中小企業営業の場合は、利他的な目的の選択肢が、非常に多いのも特徴です。
企業が成長することで街が潤うことや、街に賑わいがでること。
食品などのメーカーやサービス業であれば、ユーザーも自分の生活圏の方が中心です。
地元のお客さんや顔見知りのお客さんが喜んでくれることを思えば、営業の意欲も非常に高まります。
自分の頑張りが誰かのためになると感じられることで、大手企業勤務では感じられない力を発揮できる場合もあるでしょう。
そして、企業内での人間関係も大手企業に比べ、より密接な関係にあります。
社員同士が家族構成や生活環境を共有している場合も多く、助けあって協調できるのが中小企業の魅力です。
子育てや休暇取得、仕事の役割なども助け合って進めることができますので、勤務しやすいと感じられるのもメリットでしょう。
営業職としても社員同士が深い関係性で関われる為、お互いの技術を共有できたり、しっかりとした協力体制や、チームワークを感じながら勤務することができます。
個人と深く関わることで、性格や環境を踏まえた教育や、特性に沿った業務分担が可能になるため、性格によっては着実に営業としての成長をしていけるのも特徴です。
家族のような仲間たちと一緒に仕事に打ち込み、企業を引っ張って成長させられることは、事業主となる以外に、中小企業営業でしかできない働き方です。
協力し合える環境の中で生まれた成果は、自分だけではなく地域にも還元されます。
自分の仕事が地域の喜びにも繋がっていると実感を得られることは、中小企業で営業をするメリットと感じられるでしょう。
(その他のモチベーションアップ方法については、「営業のモチベーションを上げる7つの方法」をご参照ください。)
2) デメリット
① 大手企業に比べ、成長のための情報を得にくい
中小企業で営業をする場合は、教育などの情報を得にくいことがデメリットです。
大手の場合は教育体制も整っており、得られる情報も新しいものがほとんど。
しかし、中小企業の場合はクライアントも限られており、外部との交流も比較的少ないため、教育に対しての情報が入ってきにくい傾向にあります。
そのため、営業理論や営業スキルもアップデートできない場合があり、成長が遅れてしまう場合があるのです。
特に若い営業の場合は、会社によっては成長が遅れてしまう場合もあるので、デメリットと感じる場合もあるでしょう。
中小企業の場合は、教育に関する情報も受け身になってしまうことが少なくありません。
教育サービス事業者からの営業などをきっかけに、教育制度を導入するのではなく、自ら情報を収集する姿勢が大切です。
企業での教育体制の整備がかなわない場合は、自ら外部研修などで情報を得ながら、成長していく必要があるでしょう。
成長意欲が高い方には不利な環境となりますので、自分のキャリアプランに合わないようであれば注意が必要です。
②事業規模や待遇に物足りなさを感じる場合がある
中小企業で営業として勤務する場合は、事業規模の小ささや待遇に物足りなさを感じる場合もあります。
特に中小企業での営業は、大手企業より小さいスケールの事業が多いもの。
身近な地域住民の課題を解決し、サービスを提供する事業も素晴らしいのですが、働く中でもっとスケールの大きな事業に関わりたいと感じる場合もあります。
そのように感じることは普通の事ですが、物足りなさを感じやりがいを失ってしまえば、この点も大きなデメリットとなります。
営業にとって、対面するクライアントに心を寄せられない状況となるのは、致命的とも言えます。
物足りなさから意欲を失えば、業績もどんどん下がることにもなるでしょう。
また、給与などの待遇に関しても、同様にデメリットとなる場合があります。
大手企業の知人から待遇を聞き、自社の待遇と比べると不満を感じる場合もあるでしょう。
中小企業で自分が行なう業務量は、大手に比べて非常に多い場合もあるので当然です。
そのため、自分より業務量の少ない知人の方が待遇が高いと、仕事の意欲が低下してしまう場合も少なくありません。
給与が能力に直結するものではありませんので、本来は比べる意味がありませんが、意欲を失う場合もあるので、待遇の考え方には注意が必要でしょう。
3. 終わりに
今回は営業が働くうえでの、大手企業と中小企業の違いをお伝えして参りました。
企業によって特性は異なりますが、参考になるものはあったでしょうか?
結論としては、大手企業も中小企業で勤務する場合も、どちらにも優劣はありません。
それぞれの特性を理解した上で、与えられた環境に感謝しながら勤務することが大切です。
そして、自分の役割に集中して力を注ぐことが、営業として成果を上げる近道でもあります。
ぜひ、今回の内容を参考にそれぞれの企業特性を理解し、今後の営業活動にお役立てください。
4. まとめ
◆大手デメリット:大きな歯車の1ピースと感じる場合もある、全国転勤の場合も多い。
◆中小メリット:企業を引っ張る実感を感じられる、組織や地域との繋がりのなかで仕事ができる。
◆中小デメリット:成長のための情報を得にくい、事業規模や待遇に物足りなさを感じる場合がある。