経理の仕事に英語は必要でしょうか?
日本の会社の99%は日系の中小企業であり外資系に就職・転職するわけではないため、自分には関係ないと思われるかもしれません。
しかし実際は多くの場面で今後英語は必要となってきます。
今回は経理における英語の必要性や経理に必要な英語の学び方の留意点、英語を生かした経理職への就職・転職のポイントについてお伝えしていきます。
後半におすすめ資格についてもご紹介しておりますので、ぜひご確認ください。
1. 経理で英語が求められる場面は?
1) 外資系企業
まず真っ先に思い浮かぶのは、外資系企業の日本法人の経理です。
職場によっては社内公用語が英語となっている場合や、本国とのやりとりが英語で行われることが想定されます。
また、本国へ送る財務数値を英語で作成する必要もあります。
相手が英語ネイティブの場合、やりとりのスピードも格段に上がるので、かなりの英語力が求められます。
ただ、周りに日本人が多くいる環境であれば、普段の会話は日本語で行われることもあり、その場合はライティングとリーティングができれば多くの業務をこなすことができます。
2) 日系企業の海外進出・海外取引
海外に子会社や提携会社がある場合や、海外の取引先とのやりとりがある場合も、経理上英語を使用する場面が発生します。
海外子会社や関連会社がいる場合は連結財務諸表を作成するために、海外子会社の担当者から財務数値を入手する必要があり、また、海外子会社などがなくても海外の企業と取引をしている場合は、取引先に対して請求書や内容確認などを行うなども想定され、英語でやりとりをする必要性があります。
日本の市場には限界があり、今後は中小企業でも海外取引をさらに加速させていくことが考えられるため、より多くの企業で英語の必要性が増していきます。
3) 英文経理
海外の担当者との基本的なやりとりから、英文財務諸表の作成まで、英語を使用した経理職のことを「英文経理」と呼ぶことがあります。
前述のように今後は一般の中小企業でも海外との取引を拡大させる必要があり、英文経理の必要性は増していくことが想定されます。
2. 英文経理を学ぶ上での留意点
次は、英文経理の職務に必要な知識を学ぶ上で、留意すべき点について紹介させていただきます。
1) 準拠している基準は?
これから目指そうとしている、あるいは、今会社から求められているのは、日本基準・US基準・IFRSのどの基準で作成された財務諸表の知識でしょうか?
ここを見誤ると、かなり遠回りをしてしまうことになります。
英文経理には一般的な英語力も必要ですが、会計特有の専門用語を英語で覚える必要があります。
その際に、準拠している基準によって英語での表現方法や意図している内容が異なります。
そのため、まずは自分が学ぶべき基準を明らかにしてください。
2) どのレベルまで求められている?
次に留意していただきたいのは、自分が就きたい英文経理に求められる英語のレベルです。
勘定科目が単に英語で記載されているだけでやりとりは日本語で可能な職場であれば、おそらく英語の勉強をしなくてもすぐに覚えることが可能です。
また、スピーキングやリスニングが苦手でも、ライティングやリーティングだけでほとんどの業務ができてしまう場合もあります。
4技能全てを高いレベルで求められる職場でなければ、最低限の英語の能力でとりあえず入社して、現場で覚えた方が早い場合もあります。
求められている英語のレベルを把握することで、必要以上に事前準備に時間をかけなくてすみます。
3) まずは専門用語から覚える
英文経理を学ぶ上でまず必要となってくるのは、専門用語を覚えることです。
日本語から何となくイメージできる単語であれば問題ないのですが、多くの単語は英語を見ただけではどの科目かわからないことが多いです。
例えば以下のような科目となります。
・無形固定資産:Intangible assets
・引当金:Allowances of the nature of liability
・買掛金:Accounts amount payable
後述する各資格試験の勉強などを通じて、まずは専門用語を押さえていきましょう。
3. 英文経理に就職・転職するためのポイント!
1) 時期を見極める
英文経理の求人は現在はまだ外資系企業のものが多いです。
外資系企業は12月決算であるため、12月決算が締まる前後の年末年始あたりに次年度の決算に向けた求人が増える傾向にあります。
また、夏ごろにも求人が増える傾向にあります。
会社や職種により当然異なりますが、年末年始や夏などに照準を合わせて転職準備をするのも1つの方法です。
2) 自身の英語力・経験を見極める
英文経理への就職・転職を考えた場合、自分の今の英語力や過去の経験を冷静に分析する必要があります。
読み・書きはビジネスレベルでできるか?
TOEICは何点か?
売掛・買掛金管理、給与計算、支払い業務の経験はあるか?
月次決算・年次決算の経験回数は何回か?
英文経理の経験はあるか?
管理職の経験はあるか?
など、企業によって求められている英語力・経験は多様となります。
自分の現状を箇条書きでいいので整理し、また、具体的な求人をいくつか見て、現状だとどの程度の求人があてはまるのかを確認してください。
3) 英文レジュメを極める
履歴書や職務経歴書の英語バージョンである「英文レジュメ」は英文経理の求人では求められることが多いです。
自分のアピールポイントを英語で記述するのは簡単ではありません。
必要に応じて多少お金がかかってもいいので、プロの方に頼むのも1つの方法です。
面接に自信があってもその前ではじかれては意味がありません。
しっかりと準備しておきましょう。
4. おすすめ資格!
1) 簿記検定
英文経理に限らず経理職に就くのであれば、簿記2級までは取得しておいた方が良いです。
特に英文経理の場合は、「経理」×「英語」となり「経理」の部分を簿記で基礎固めしておくことで、「英語」部分に集中することができます。
経理と簿記の関係については「経理は簿記を持ってないとダメ!?」も合わせてご確認ください。
2) USCPA
US基準の英文経理として働きたい場合は、USCPAがおすすめです。
USCPAとは米国の公認会計士資格であり、日本の公認会計士と比べると難易度が下がる一方で、英文経理として働く上で評価されやすい資格です。
英文経理の第一歩としてまず必要になるのが、英文経理独特の専門用語になれることです。
そのうえでも英語で試験が実施されるUSCPAはおすすめです。
3) IFRS検定、BATIC
IFRS基準の英文経理に興味がある場合は、IFRS検定やBATICがおすすめです。
共に国際財務報告基準について学べ、英文経理として働く基礎を学べます。
また、BATICは試験自体が英語で実施されるため、英語表記の専門用語になれる意味でも勉強になります。
4) ビジネス会計検定
最後におすすめするのがビジネス会計検定です。
英語であっても日本語であっても、経理の醍醐味は財務諸表を「作成」するだけでなく「分析」して上長や外部の人に対して報告することにあります。
そんな財務諸表を分析する力を養えるのがビジネス会計検定となります。
割と手軽に実用的な知識が得られるため、コストパフォーマンスが非常に高いです。
英文経理でビジネス会計検定を取得していれば、「英語」×「ビジネス会計検定」で他の経理との差別化を図ることができます。
じわじわと注目度が上がっている資格ですので、この機会にぜひ受験を検討してみてください。
ビジネス会計検定については「ビジネス会計検定とは?試験の内容をご紹介!」も合わせてご確認ください。
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。
頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
5. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
英語を使った経理職での活躍は十分に可能です。
今後は需要がさらに高まってきますので、この機会に自分の強みの1つとして「英語」を磨いて、英文経理として活躍することを目指してみるのはいかがでしょうか?
6. まとめ
◆準拠している基準や自身の英語力・経験などを整理する。
◆時期や要求されているレベルを見極めながら英文経理の転職活動をする。
◆必要に応じて簿記・USCPA・IFRS検定・ビジネス会計検定などの資格取得も検討する。