資格の勉強をする際は、事前にその資格のメリット・デメリットを知っておくことが大切です。
思ったほどメリットがない、あるいはデメリットが大きいと感じたら、その資格の勉強をやめることも、大事な決断となります。
中小企業診断士も、例外ではありません。
そこで今回は、中小企業診断士のメリット・デメリットについて、解説していきます。
本記事で紹介する内容を踏まえて、中小企業診断士を目指すか否か、判断してみてください。
1. 中小企業診断士のメリット4選
1) 自分に足りない知識に気付ける
2) 活躍できる領域が広い
3) 横のつながりが増える
4) 独立・起業に役立つ
2. 中小企業診断士のデメリット4選
1) 独占業務がない
2) 更新手続・更新費用が必要
3) 認知度が低い
4) お金と時間の先行投資が必要
3. 終わりに
4. まとめ
1. 中小企業診断士のメリット4選
1) 自分に足りない知識に気付ける
中小企業診断士の1つ目のメリットとしては、「自分に足りない知識に気付ける」ことが挙げられます。
中小企業診断士試験は、以下の7科目から出題されます。
B. 財務・会計
C. 企業経営理論
D. 運営管理
E. 経営法務
F. 経営情報システム
G. 中小企業経営・政策
科目数からわかるように、会社経営に必要となる、多岐にわたる内容を学習します。
つまり、自分に何の知識が足りないのか?といった点について、理解することができます。
中小企業診断士試験で足りない知識について理解し、その基礎を学んだあとは、その分野について別途集中的に学習することも可能となります。
「会社経営を考えているわけではないから、自分には関係ない。」
と思われる方もいるかもしれません。
しかし、経営層以外のビジネスパーソンにも、会社経営に関する知識は必要です。
例えば営業であれば、取引先企業の経営状況を把握しながら、商談に臨む必要があります。
また、経理であれば、自社の経営資源の流れを把握しながら、会計数値を作成する必要があります。
このように、何の職種であろうが、会社経営に関する知識を持っておくことは、プラスとなります。
以上より、「自分に足りない知識に気付ける」ことは、中小企業診断士のメリットと言えます。
2) 活躍できる領域が広い
中小企業診断士の2つ目のメリットとしては、「活躍できる領域が広い」ことが挙げられます。
前述の通り、中小企業診断士試験では、経済・財務会計・経営・マーケティング・法務・ITなど、幅広い分野について学習することができます。
そのため、資格を活かせる領域が、非常に多岐にわたります。
営業・マーケター・経理・人事・エンジニアなど、多くの職種で中小企業診断士の資格を活かすことが可能となります。
例えば、過去に私が一緒に仕事をした中小企業診断士には、以下のような人達がいました。
・診断士の知識を活かして自営業として活躍しつつ、エンジニアとして仕事を受託していたBさん。
・大手物流企業で診断士の知識を活かして、マーケターとして活躍していたCさん。
・診断士試験の財務会計の知識を応用して、社内研修で後輩達に会計を教えていたDさん。
中小企業診断士試験で幅広い知識を学び、自分の守備範囲を広げることで、自身のキャリアの選択を広げることができます。
以上より、「活躍できる領域が広い」ことは、中小企業診断士のメリットと言えます。
3) 横のつながりが増える
中小企業診断士の3つ目のメリットとしては、「横のつながりが増える」ことが挙げられます。
中小企業診断士には、独占業務もないですし、試験合格後に多くの人が就職できる、大手中小企業診断士法人といったものもないです。
(これに対して、例えば公認会計士の場合は、試験合格後にほとんどの人が就職する、大手監査法人という受け皿があります。)
つまり、中小企業診断士を取得したからといって、必ずしも恵まれた環境が用意されているとは限りません。
しかし、それがゆえに、中小企業診断士は横のつながりを強化して、互いに助け合っています。
研修を通じて知り合ったり、中小企業診断士協会経由で知り合ったり、他の中小企業診断士からの紹介であったりといった具合に、横のつながりができていきます。
中小企業診断士は一見すると個人プレーに見られがちですが、実際は互いに仕事を紹介し合い助け合う、チームプレーで活躍している人が多いです。
しかも、前述の通り中小企業診断士は多様な分野で一人一人が活躍しているため、横のつながりを駆使すれば、多くの分野の専門知識・人脈・技術を集めることができます。
以上より、「横のつながりが増える」ことは、中小企業診断士のメリットと言えます。
4) 独立・起業に役立つ
中小企業診断士の4つ目のメリットとしては、「独立・起業に役立つ」ことが挙げられます。
中小企業診断士として経営コンサルのスキルを鍛えていけば、コンサルタントとして独立して活動することも、夢ではありません。
前述の中小企業診断士同士の横のつながりも活用すれば、顧客獲得もスムーズにいく可能性があります。
また、起業の際に自分に対して経営コンサルを行うことで、事業の欠点や改善点を発見することができ、事業を軌道に乗せるのに、中小企業診断士の知識が役立ちます。
さらに、対法人相手のビジネスを行う場合に、取引相手となる社長や役員の方であれば、中小企業診断士の資格の価値を理解している方も一定数いるため、資格を持っていること自体が、そのまま信用につながります。
以上より、「独立・起業に役立つ」ことは、中小企業診断士のメリットと言えます。
2. 中小企業診断士のデメリット4選
1) 独占業務がない
中小企業診断士の1つ目のデメリットとしては、「独占業務がない」ことが挙げられます。
独占業務とは、その資格を持っている人達しか、行うことができない業務のことを言います。
そして、独占業務を持つ資格は、業務独占資格と言われ、例えば以下のような資格・独占業務が該当します。
・社会保険労務士:労働社会保険諸法令に基づく書類の作成、提出代行。
・司法書士:登記・供託手続きの代理。
・弁理士:特許出願の代理。
・公認会計士:監査業務。
・税理士:税務申告や税務書類の作成の代理、税務相談。
これに対して、中小企業診断士には、独占業務がありません。
そのため、資格を取ったからといって、約束されている業務があるわけではありませんし、中小企業診断士の活動領域に無資格者が入ってきて、ライバルとなる可能性もあります。
以上より、「独占業務がない」ことは、中小企業診断士のデメリットと言えます。
中小企業診断士は独占業務がないからこそ、業務範囲が限定されず、幅広いフィールドで活躍することができます。
事業計画作成、経理・人事などのバックオフィス支援、営業・マーケティング支援、生産管理、店舗管理、ITの導入支援、補助金活用、社内研修・講師業など、活躍フィールドは広がっています。
そのため、独占業務がないことは、必ずしもデメリットとは言えません。
2) 更新手続・更新費用が必要
中小企業診断士の2つ目のデメリットとしては、「更新手続・更新費用が必要」なことが挙げられます。
中小企業診断士の資格を維持するためには、5年に1度、以下2つの要件を満たして、資格の更新手続きをする必要があります。
②「実務の従事」に関する要件(5年間で30点以上)
具体的には、以下となります。
① 「知識の補充」に関する要件
中小企業診断士としての知識を補充するために、「理論政策更新研修」を5年間で5回受講する必要があります。
主催団体により1回あたりの金額は異なりますが、中小企業診断協会の研修であれば、1回あたり6,000円で受講できます。
つまり、更新には「3万円」(=6,000円×5回)必要となります。
② 「実務の従事」に関する要件
中小企業診断士としての経営診断(経営課題の相談、助言)実務1日分を1点とカウントして、5年間で30点以上の点数をとることが要件となっております。
単なる調査・分析やセミナー講師・執筆活動などは、実務要件の対象とならず、実際に中小企業に出向いて直接経営者等に経営診断を行う必要があります。
自身で活動先を見つけることができない場合は、中小企業診断協会の各支部に入会すれば、実務従事の機会を得ることができますが、1年間で「5万円」程度の会費が必要となります。
以上より、「更新手続・更新費用が必要」なことは、中小企業診断士のデメリットと言えます。
独占業務を持つ資格の場合は、資格を維持するのに、中小企業診断士以上の費用が発生することが多いです。
例えば、弁護士であれば、所属する支部によりかなり金額に差がありますが、数十万円程度の年会費が必要となります。
公認会計士であれば、12万円程度の年会費が必要となります。
3) 認知度が低い
中小企業診断士の3つ目のデメリットとしては、「認知度が低い」ことが挙げられます。
中小企業診断士の主なお客様は中小企業の社長や役員であるため、一般の従業員が中小企業診断士と話す機会は少ないです。
そのため、世間全体で見ると、中小企業診断士という資格の認知度は、そこまで高くありません。
資格の利点の1つとして、資格を持っているだけで、特定の分野のエキスパートであることを証明できる点があります。
しかし、認知度が低いということは、そもそも中小企業診断士がどのような資格であるのか、その都度相手に説明する必要があり、資格の利点を十分に活用できない可能性があります。
以上より、「認知度が低い」ことは、中小企業診断士のデメリットと言えます。
2016年に日経新聞が実施した調査によると、新たに取得したい資格ランキングで、中小企業診断士が1位に選ばれていました。
この1つの調査を持って、認知度の高さを判断することはできませんが、毎年13,000人前後の人が受験している資格であるため、社会的な認知度が毎年高まっていても、不思議ではありません。
4) お金と時間の先行投資が必要
中小企業診断士の4つ目のデメリットとしては、「お金と時間の先行投資が必要」なことが挙げられます。
中小企業診断士に限らず、難関資格全般に言えることですが、予備校の講座を受講する費用と、合格するまでに費やす勉強時間を、先行投資する必要があります。
中小企業診断士の場合は、最低でも1,000時間程度の勉強時間が必要と考えられます。
しかも、先行投資をしたからといって、必ずしも合格できるわけではありません。
むしろ、1次試験と2次試験を共に合格できるのが、5%前後であることを考えると、大多数の人にとっては、先行投資は無駄に終わってしまう可能性があります。
以上より、「お金と時間の先行投資が必要」なことは、中小企業診断士のデメリットと言えます。
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
3. 終わりに
中小企業診断士のメリット・デメリットについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
メリットに魅力を感じた人は、今すぐにでも、勉強を開始してみてください。
反対に、デメリットにリスクを感じた人は、中小企業診断士だけが選択肢ではありませんので、他の道を検討してみるのも1つの方法です。
いずれにしろ、しっかりと自身で決断して、悔いの残らない選択をしてください。
4. まとめ
◆資格を活かせる分野が広い。
◆診断士同士のつながりができる。
◆独立に役立つ。
◆独占業務がない。
◆更新手続・費用がかかる。
◆認知度が高くない。
◆費用・時間の先行投資が大きい。