皆様はなぜ公認会計士を目指すのでしょうか?
人それぞれ理由はあるかと思いますが、何かしら公認会計士という資格にメリットを感じているので、目指される方がほとんどかと思います。
せっかく目指すのであれば、その他の公認会計士のメリットについてもしっかりと把握しておき、モチベーションを高めてみるのはいかがでしょうか?
そこで今回は、公認会計士でありながら、監査法人・経理・ベンチャー企業と多様な経験をした筆者が、公認会計士のメリットについてお伝えしていきます。
1. 会計士のメリット:監査法人編
1) 安定した報酬
2) メリハリのある日程
3) 社会的信用が高い
4) 複数企業の内情を知れる
5) 海外で働ける
2. 会計士のメリット:それ以外編
1) キャリアプランが豊富
2) 自信を持てる
3) 独立して食っていける
4) 士業同士のつながりをもてる
5) 企業分析に強くなれる
3. 終わりに
4. まとめ
1. 会計士のメリット:監査法人編
まずは、公認会計士試験に合格したら初めに就職することとなる、監査法人に勤務している公認会計士のメリットについて、解説していきます。
1) 安定した報酬
監査法人に勤めている公認会計士の1つ目のメリットとしては、「安定した報酬」が挙げられます。
大手監査法人の公認会計士の、ざっくりとした給与テーブルとしては、以下のようなものが想定されます。
年次 | 役職 | 年収 |
1~4年目 | スタッフ | 600万円 |
4~8年目 | シニアスタッフ | 800万円 |
8~12年目 | マネージャー | 1,100万円 |
12~20年目 | シニアマネージャー | 1,300万円 |
20年目~ | パートナー | 1,500万円~ |
何歳から監査法人で働き始めるかにもよりますが、普通の会社員の給料からすると、それなりに高い部類に入るかと思います。
いつの年次で上がるかの差はあるにしても、マネージャーまでは基本的に昇進できます。
つまり、1,000万円プレーヤーとなれます。
役職が上がれば給料が右肩上がりに増えていき、また、残業代もちゃんと入ってきますので、公認会計士は安定して稼げる職業と言えます。
以上より、「安定した報酬」は、監査法人勤務の公認会計士のメリットと考えられます。
(公認会計士の年収については、「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は○○○万円でした!」も合わせてご確認ください。)
2) メリハリのある日程
監査法人に勤めている公認会計士の2つ目のメリットとしては、「メリハリのある日程」が挙げられます。
監査法人では、仕事の繁忙期と閑散期を事前に予測することができます。
3月決算の会社をメインに担当する場合、4・5月は繁忙期となりかなり忙しく、その他は四半期決算のタイミング(7月・10月・1月)がそれなりに忙しいですが、それ以外は比較的余裕ができるのが一般的です。
また、8月は閑散期となることが多く、この時期に長期の休暇を取る人も多いです。
実際に私も監査法人時代に、8月・9月あたりに長期の旅行に行っていたこともありました。
繁忙期と閑散期が事前にわかっていれば、それに応じて年間のプライベートの計画も立てることができ、計画的に1年を過ごすことができます。
以上より、「メリハリのある日程」は、監査法人勤務の公認会計士のメリットと考えられます。
なぜ8月が閑散期になりやすいかというと、主に以下の2つの理由が考えられます。
・監査の日程的に、主だったものがないため。
・クライアント側がお盆休みであり、資料請求や質問などに対応してもらえないため。
3) 社会的信用が高い
監査法人に勤めている公認会計士の3つ目のメリットとしては、「社会的信用が高い」ことが挙げられます。
医師・弁護士と並んで、3大国家資格に位置付けられている公認会計士。
具体的な仕事内容は知らない人も多いですが、公認会計士と聞くと「何かすごそう。。」と思われることは多いです。
私も職業を言っただけで「すごいね」と言われたことは、何度もあります。
また、監査法人に勤めている場合は、さらに信用力が高く、住宅ローンなどを借りやすくなります。
今自営業として働いているので余計に感じるのですが、社会的な信用力というのは、非常に大事なものです。
数年勉強するだけで、社会的な信用力が得られるので、非常にコストパフォーマンスが高い資格と言えます。
以上より、「社会的信用が高い」ことは、監査法人勤務の公認会計士のメリットと考えられます。
公認会計士試験に合格してしまえば、それまでの学歴や職歴とは関係なく、皆「公認会計士」としての道を歩むことができます。
つまり、どんな学歴だろうが、どんな職歴だろうが、数年勉強して合格しさえすれば、社会的信用を手にすることができます。
4) 複数企業の内情を知れる
監査法人に勤めている公認会計士の4つ目のメリットとしては、「複数企業の内情を知れる」ことが挙げられます。
監査法人では、基本的に複数の監査チームに所属して、複数の企業の監査を行うこととなります。
つまり、普通の会社員であれば、自社1社の内情しか把握することはできませんが、公認会計士の場合は、監査を通じて複数社の内情を知ることができます。
このことは、より多くの会社のビジネスを理解するのに役立ちます。
また、仮に経理職などで一般の事業会社に転職する際も、複数社を見てきた経験が役に立ちます。
さらに、将来起業することを検討している人にとっては、内情を知ることで組織について学ぶこともできます。
企業は「事業×組織」で回っており、組織について学ぶことは、起業において非常に有益なことです。
以上より、「複数企業の内情を知れる」ことは、監査法人勤務の公認会計士のメリットと考えられます。
5) 海外で働ける
監査法人に勤めている公認会計士の5つ目のメリットとしては、「海外で働ける」ことが挙げられます。
大手監査法人は以下のように、世界の4大会計事務所のいずれかに属しています。
⇒デロイト トウシュ トーマツ
(Deloitte Touche Tohmatsu)
・有限責任あずさ監査法人
⇒KPMG
・新日本有限責任監査法人
⇒アーンスト&ヤング
(Ernst & Young)
(通称:EY)
・あらた有限責任監査法人
⇒プライスウォーターハウスクーパース
(PricewaterhouseCoopers)
(通称:PwC)
つまり、グローバルな企業間のつながりがあり、人材交流も盛んに行われています。
そのため、海外で働きたいと考えている人は、監査法人でキャリアを積めば、チャンスをつかむことができる可能性は高いです。
実際に私が所属していた監査チームの事例を紹介します。
毎年1人ずつ、NYの監査チームに2年間ほど出向していました。
同じチームに配属される同期が毎年2~3名程度であり、辞めていく人もいたため、実質的な倍率はそこまで高くありませんでした。
海外のグループ企業へ転職した先輩もいました。
その先輩の場合は、上述のNYへの出向を経験して、いったん日本に戻ってきましたが、その後NYの監査チームに転職しました。
上記はあくまで一例であり、この他にも監査法人全体で応募者を募り選考して、海外に駐在させるといった制度もありました。
生活費なども監査法人から補助が出るケースが多く、また、帰ってくる場所も用意されているため、海外志向の人にとっては、非常に恵まれた環境と言えます。
以上より、「海外で働ける」ことは、監査法人勤務の公認会計士のメリットと考えられます。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
2. 会計士のメリット:それ以外編
次に、監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットについて、解説していきます。
1) キャリアプランが豊富
監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットの1つ目としては、「キャリアプランが豊富」なことが挙げられます。
公認会計士試験に合格すると、まずは監査法人からキャリアをスタートさせるのは、基本的に皆同じあり、そのまま監査法人に勤務し続ける人も多いです。
しかし、キャリアプランは人によってまちまちであり、監査法人以外のキャリアを歩む人もたくさんいます。
実際に私が見聞きした範囲では、例えば以下のようなものがあります。
・大手企業の経理職。
・外資系投資銀行の経理職。
・会計事務所に転職。
・独立開業。
・税理士登録して税理士として活動。
・コンサルティング会社に転職。
・財務分析力を活かしてトレーダーとして活躍。
・会計士の知見を活かして起業。
・公認会計士講座や簿記講座の講師、教材作成。
・ベンチャー企業で他職種を経験。(私です。)
このように、会計・財務という自分の専門領域を持つことで、キャリアの可能性が広がり、多様な選択肢の中から選ぶことができるようになります。
以上より、「キャリアプランが豊富」なことは、公認会計士のメリットと言えます。
2) 自信を持てる
監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットの2つ目としては、「自信を持てる」ことが挙げられます。
公認会計士試験は一般的に、難関資格に分類されます。
合格するためには、数千時間勉強し続ける必要があります。
例えば私の場合は、9,000時間勉強して、何とか合格することができました。
(詳細については、「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」をご参照ください。)
難関資格に合格したこと、あるいは、数千時間勉強し続けたことは、自分の自信となり、その後の人生に大いに役立ちます。
1つのことを頑張り続けて結果を残した人は、次に何か新しいことに挑戦した時も、頑張り続ければきっと成果が出ると、信じることができるようになります。
さらに、「公認会計士」というわかりやすい肩書も手にすることができるため、より自信を持ちやすいです。
以上より、「自信を持てる」ことは、公認会計士のメリットと言えます。
3) 独立して食っていける
監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットの3つ目としては、「独立して食っていける」ことが挙げられます。
「公認会計士は手に職をつけることができ、食いっぱぐれない」と言われることがあります。
この理由の1つとして、最悪個人で開業して最低限のお金を稼ぐことができる点が挙げられます。
もちろん個人開業はそこまで楽なものではありません。
ただ、一般の人が独立してやっていくことに比べると、公認会計士の方がはるかにリスクが少ないです。
先述の通り、公認会計士という資格自体に社会的な信用力があり、また、自分の専門領域があるため、顧客がつきやすくなります。
また、税理士登録をして税理士業務を行うこともできます。
以上より、「独立して食っていける」ことは、公認会計士のメリットと言えます。
4) 士業同士のつながりをもてる
監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットの4つ目としては、「士業同士のつながりをもてる」ことが挙げられます。
士業のもとを訪れるお客様の中には、複数の問題を抱えている人もいます。
労務問題を相談しようと社労士事務所を訪れたお客様が、税務や法務についても実は問題を抱えているケースなどが該当します。
そのため、士業の人達は普段から他士業との交流を大切にして、コミュニティを形成している場合も多いです。
言うまでもなく公認会計士も士業の1つであり、公認会計士であるがゆえに、声をかけてもらえることもあります。
特に士業の世界では、公認会計士は高く評価されることがあります。
会計・税務面といったビジネス上必須である領域の専門家であることに加え、試験の難易度からそもそも「できるやつ」と思われていることなどが、高く評価される理由として考えられます。
他士業と連携することで活躍領域を広げることができ、また、互いに情報交換を行うこともでき、士業同士のつながりは非常に有益なものとなります。
以上より、「士業同士のつながりをもてる」ことは、公認会計士のメリットと言えます。
5) 企業分析に強くなれる
監査法人に限らず、公認会計士全般に言えるメリットの5つ目としては、「企業分析に強くなれる」なことが挙げられます。
公認会計士が行う財務諸表監査では、企業の財務数値を分析することで、間違いや不正を見つけ、正していきます。
そのため、公認会計士の実務を積み上げることで、企業を分析する力が自然に養われていきます。
企業分析に強くなることは、以下のような時に活きてきます。
① 転職
転職の際に、転職先企業を分析するのに、企業分析のスキルは役立ちます。
また、コンサルティング会社では企業分析のスキルそのものが評価されることがあるため、コンサルティング会社への転職にも有利に働く可能性があります。
② 株式投資
株式投資の際に、投資対象企業の財務状況などを分析し、株価が上がるか・下がるかを予測するのにも役立ちます。
ただ、監査法人勤務の場合は、独立性の観点から株式投資が原則不可となっている点には注意が必要です。
以上より、「企業分析に強くなれる」なことは、公認会計士のメリットと言えます。
公認会計士ほどの勉強時間をかけずに、企業分析の基礎を学びたい場合は、ビジネス会計検定がおすすめとなります。
基礎的な分析手法を学ぶのであれば、ビジネス会計検定2級までで問題ありません。
その後は、実在する企業を使って、実際に企業分析を行う、あるいは株式投資を始めるなどの方法で、スキルを磨いていくことができます。
ビジネス会計検定の詳細については、「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご確認ください。
3. 終わりに
公認会計士のメリットについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
公認会計士には多くのメリットがあることを、ご理解いただけたのではないでしょうか?
多くのメリットがある公認会計士という資格を取得するためにも、日々の勉強を頑張ってください。
4. まとめ
◆繁忙期と閑散期が明確。
◆信用力。
◆各社の内情把握。
◆海外勤務。
◆キャリアの選択肢が豊富。
◆自信が持てる。
◆食いっぱぐれない。
◆士業同士の交流。
◆企業分析力。