中小企業診断士はやめとけ!と言われる6つの理由

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「中小企業診断士 やめとけ」

これは、中小企業診断士に興味を持った人が、良い情報だけでなくネガティブな情報も知りたい時に、検索するキーワードです。

確かに、中小企業診断士に関する情報は、資格学校や業界団体、もしくは現役の中小企業診断士が発信するポジティブな情報が主体なので、「本当のところはどうなの?」と思う人には、物足りないかもしれません。

そこで今回は、中小企業診断士に対するネガティブな見方を集め、なぜそのような見方になるのかを解説します。

また、後半ではそういった「やめとけ情報」に対する、逆の見方もご紹介します。

世の中、一方向だけ見ていては見方も固定されて、正しい判断はできません。

ポジティブな面とネガティブな面、双方を見たうえで、判断の参考にしてください。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・中小企業診断士講座の元運営責任者
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. やめとけ!と言われる6つの理由

中小企業診断士は「やめとけ!」と言われる6つの理由

ここでは、中小企業診断士はやめとけ!と言われる、主な理由を6つピックアップし、解説します。

 

1) 独占業務が認められていない

中小企業診断士には、独占業務が認められていません。

そのため、資格の有無に関係なく、誰でも中小企業診断士と同じ仕事を請け負うことができます。

コンサル会社、税理士、会計士など、ライバルは無数に存在しますし、ライバルが多ければ多いほど受注できる仕事量は少なくなってしまいます。

このことは、後述する他の問題の背景にもなっており、中小企業診断士に対するネガティブな見方の、大きな根拠となっています。

 

2) 働き口が少ない

知名度と難易度を兼ね備えた資格であれば、大体はその資格を全面に押し出した働き口があるものです。

例えば、弁護士なら弁護士事務所、税理士なら税理士事務所といった具合です。

中小企業診断士も中小企業診断士事務所がないわけではありませんが、数がかなり少ない上に1人事務所が多く、求人が公開されているケースはあまりありません。

普通に生きていて、中小企業診断士という肩書を目にする機会はほとんどなく、求人でも見かけないとなると、「中小企業診断士?働き口あるの?」となります。

 

3) 独立開業が難しい

中小企業診断士は取得が難しい資格で、100人受験して5人~8人程度しか合格できません。

通常、そのような難関資格であれば、合格したら独立開業というステップを誰しもが考えるはずですが、現実は中小企業診断士試験に合格できても、独立する人は少数です。

実際、業界団体である中小企業診断協会が、令和2年に行った中小企業診断士へのアンケート調査によると、独立開業しているのは47.8%でした。

つまり、半数以上が資格を持ちながら、会社員を続けているのです。

せっかく難しい試験に合格したのに、半数以上が会社員を継続しているということは、それだけ独立開業が難しく、稼げない資格だろうという見立てが成り立ちます。

背景にはやはり独占業務がないという事情もありますが、最初からスキルアップ目当てで独立を目指してない、というケースも少なくありません。

4) よく知らない

意外に多いのが、よく知らない人がただのイメージで、酷評するパターンです。

確かに、中小企業診断士はマイナーな資格で、宅建や社労士、行政書士といった他のビジネス系資格と比べると、一般的な知名度はいまひとつです。

例えば、Google検索での情報量を比較してみると、以下のようになります。

資格名称 情報量
弁護士 約53,400,000件
宅地建物取引士 約49,900,000件
税理士 約30,100,000件
行政書士 約22,600,000件
公認会計士 約11,200,000件
社会保険労務士 約10,200,000件
中小企業診断士 約7,020,000件

中小企業診断士の情報量が、他資格よりもかなり少ないのが、一目瞭然でわかります。

これは、ネットで話題にされる機会が少ないということです。

似たような傾向は、受験者数にも表れています。

(2019年~2023年受験者数平均)

資格名称 直近5年の
平均受験者数
宅地建物取引士 223,816人
行政書士 44,843人
社会保険労務士 38,791人
中小企業診断士 18,319人

このような状況なので、中小企業診断士=マイナーな資格という認識を持たれやすく、実情以上に低く見られてしまうことがあります。

 

5) 取得が難しく更新がある

中小企業診断士は取得が難しく、更新制度もあります。

診断士試験の合格率は、直近の数年で5%~8%程度です。

これでも易化した数値で、少し前までは3%~5%という、さらに狭き門でした。

出題範囲は経営にかかわる分野すべてですから、経営や経済、会計、オペレーションマネジメント、法律、政策と広範多岐にわたります。

しかも、筆記試験のみでなく口述試験があり、口述試験を合格した後は原則15日以上の、実務経験を積まなくてはなりません。

つまり、知っていて、話せて、実務もできなければ、資格は取得できないのです。

また、中小企業診断士には5年間という有効期間が定められており、更新するには以下の2つの要件を満たす必要があります。

・理論政策更新研修を5回以上受講する
・診断実務に30日以上従事する

これらの要件を満たすためは、それなりの時間と費用が発生します。

資格の取得や維持に必要なハードルの高さと、資格取得後のメリットを天秤にかけ、「やってられない」という判断に至る人もいるのです。

(参考「中小企業診断士試験の難易度・合格率は?」)

 

6) 将来的になくなる

中小企業診断士の将来性に、疑問を投げかける人もいます。

既述の通り、中小企業診断士には独占業務が認められてないため、誰でも中小企業診断士と同じ業務を行うことができます。

せっかく膨大な量の勉強をして国のお墨付きをもらったとしても、業務上の立場は無資格の人と同じ扱いであり、「資格を取ることにどれほどの意味があるのか?」と疑問を持たれるわけです。

また、中小企業診断士という名前自体も古めかしく、「ネーミングで損をしている」と指摘する声も少なくありません。

中小企業診断士の制度が創設されたのは、戦後間もない1952年です。

・1952年 中小企業診断員として創設
・1969年 中小企業診断士に改称

当時はコンサルタントといった名称も一般的ではなく、業務内容を表すには「中小企業診断士(員)」という名称が最適だったのだろうと推察されます。

しかし、半世紀以上経過した現在ではコンサルという言葉の方が浸透しており、「中小企業診断士」という名前には仰々しさや重々しさを感じてしまいます。

つまり、中小企業診断士という資格は、名前が古臭く、一般的な知名度も低く、独占業務も認められないほど扱いが軽い、にもかかわらず試験は超難関なのです。

ネガティブな目線で見る人にしてみたら「こんな割に合わない資格を取得したいと思う人はそのうちいなくなるのでは?」となるのです。

(参考「中小企業診断士がなくなると言われる理由とは?」)

 

2. 中小企業診断士は本当にやめるべき?

中小企業診断士は本当にやめるべき?

第1章では、中小企業診断士に対するネガティブな見方をピックアップしましたが、実際にはそのようなネガティブな見方とは、別の見方もあります。

 

1) 実質独占に近い業務はある

中小企業診断士の業務は主に、公的業務と民間業務の2つに分けることができます。

このうち公的業務の多くは、仕組みとして中小企業診断士を介在させるような形になっています。

例えば、国や地方自治体は中小企業基盤整備機構(中小機構)や中小企業支援センター、商工会といった組織を通じて、中小企業向けにさまざまな支援策を実施していますが、その際に専門家として経営者の相談に乗ったり、企業に赴いて経営診断をしたりするのは中小企業診断士です。

この分野では実質的に中小企業診断士の独占に近い状態にあり、無資格者が入り込む余地はあまりありません。

そしてこうした場での出会いがきっかけとなって、企業からコンサル依頼が入ったりすることもあります。

 

2) 働き口はむしろ増えている

中小企業診断士の働き口が少ない、というのは何年も前の認識で、現在はむしろ増加しつつあります。

例えば、求人サイトで「中小企業診断士」と検索をかければ、数百~数千件の求人案件がヒットします。

募集しているのはコンサル会社や税理士事務所、会計事務所などで、どれも中小企業診断士の知見を求めた募集です。

また、各都道府県の中小企業支援団体や地域の商工会議所でも、経営指導関連の業務で職員募集をしているケースがあります。

もちろん、これ以外の一般企業でも中小企業診断士の資格を高評価する企業はいくつもあり、資格としての認知度や評価は年を追うごとに高まっているといって良いでしょう。

働き口はむしろ、増えているとみることができます。

(参考「中小企業診断士になっても仕事がない?過去に出会った診断士事例紹介」)

 

3) 独立開業が少ないのには訳がある

中小企業診断士は不思議な資格とも言われています。

名前は「中小企業診断士」なのに、中小企業に勤めている人たちには知名度が相対的に低く、誰もが知るような大企業の社員間では、比較的よく知れ渡っているからです。

大企業に勤める人たちは、この資格を独立のためではなく、スキルアップのために取得するケースがよくあります。

中小企業診断士としての知識や人脈を活用できれば、社内で重用される可能性が高まる上に、資格手当がつくケースも珍しくありません。

大企業の安定感を捨てて独立するよりは、身分はそのままで手当をもらったり出世につなげたりした方がメリットが、大きいという判断もできるでしょう。

また、中小企業診断士に合格する年代は、30代~40代の独立を最も躊躇する年代がメインです。

(2023年2次試験合格者)

年齢 合格者数 構成比
20歳未満 1人 0.1%
20歳~29歳 216人 13.9%
30歳~39歳 546人 35.1%
40歳~49歳 459人 29.5%
50歳~59歳 279人 17.9%
60歳~69歳 52人 3.3%
70歳以上 2人 0.1%

家族のことを考えれば、会社員は続けながら診断士資格を活用する形の方が安全です。

このような背景を考慮すれば、独立する人が少ないのは、ある意味当たり前だといえるでしょう。

 

4) 知っている人からは高評価

中小企業診断士は一般的な知名度はありませんが、知っている人には人気のある資格です。

例えば、2016年、日経新聞がビジネスパーソンを対象に行ったアンケート調査では、取得したい資格ランキングで1位になっています。

TOEIC(2位)や宅建(5位)を抑えての1位ですから、当時はかなり話題になりました。

また、受験者数も年々増加しています。

(中小企業診断士1次試験受験者数)

平成27年度 15,326人
平成28年度 16,024人
平成29年度 16,681人
平成30年度 16,434人
令和元年度 17,386人
令和2年度 13,622人
令和3年度 18,662人
令和4年度 20,212人
令和5年度 21,713人

令和4年にはついに受験者数が2万人を突破して、令和5年度には過去最高を記録しました。

このように、一般的な知名度はなくても、スキルアップを指向するビジネスパーソンの間では知れている資格であり、国の方針も手伝ってますます注目が集まっています。

(参考「中小企業診断士の受験者数推移:人気が落ちない4つの理由」)

 

5) 効率的に合格/更新する方法がある

中小企業診断士の試験や更新制度は確かに面倒なものですが、面倒だからこそ同業者が簡単には増えないというメリットもあります。

また、合格するための試験勉強は通信講座をうまく利用すれば、大変効率的に合格を目指せます。

最近の通信講座は、スマホやタブレットなどの持ち歩けるデバイスを利用してどこでも受講でき、わからないところを繰り返し見たり、AIによる学習支援を受けたりできる講座もあります。

そしてさらに、受講費が5万円~10万円程度に抑えられるという、金銭的なメリットもあります。

次に更新要件についてですが、これは地域の中小企業診断協会に入って活動していれば、更新要件が満たせるような経験を積む機会に恵まれます。

また、更新用に有料で実務経験を積ませてくれるサービスもあるので、どうしても実務経験を積む機会がないという人でも、資格を更新することができます。

★おすすめ通信講座
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。

・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト

詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。

 

6) 将来はむしろ有望

国の政策もあり、中小企業診断士の業務環境は好転しつつあり、将来性がないどころかむしろ有望です。

その理由をいくつか解説します。

 

① 国は診断士を増やそうとしている

以下の表は、中小企業診断士の2次試験合格者数の推移を表したものです。

(2次試験合格者数)

平成28年度 842人
平成29年度 828人
平成30年度 905人
令和元年度 1,088人
令和2年度 1,174人
令和3年度 1,600人
令和4年度 1,625人
令和5年度 1,555人

表を見れば一目瞭然ですが、合格者数は増加傾向にあり、特に令和3年度(2021年)からの増加は顕著です。

実はこの前年の令和2年(2020年)に、国の経済財政諮問会議や成長戦略会議において、中小企業診断士の在り方について議論が行われました。

その時に強調されていたのが「中小企業の経営を担うことのできる人材の裾野を拡げる」という方向性です。

中小企業診断士試験の難易度の高さについても指摘があり、それを受けたかのように、翌令和3年度からは1次試験の科目合格者に「中小企業診断修得者」や「中小企業支援科目合格者」といった新たな肩書が与えられることになりました。

このような流れを見る限り、国が中小企業診断士やその受験生をもっと活用しようという方向にあるのは間違いなく、中小企業診断士が将来なくなるということは考えられません。

 

② 活動している診断士は高収入

中小企業診断士が食えない資格、というのも間違っています。

中小企業診断協会のアンケートによれば、コンサルティング業務を年間100日以上行っている診断士の約67%が、年間501万円以上のコンサルティング売上があると回答しています。

1,001万円以上あるという人は、なんと34%にもなります。

売上なので年収ではありませんが、中小企業診断士としての業務にそれほど高額な原価は発生しないはずですから、売上はほぼ粗利とみてよいでしょう。

疑義を呈するとすれば、これは活動的な診断士に限った話なので、そこまでいかなかった人たちは含まれてないということです。

中小企業診断士を目指すならば、年間100日以上のコンサル業務をいかにして受注するか、という点が大変重要になってきます。

そこがクリアできれば、3分の2以上の確率で年収は500万円近くになり、さらに3分の1位の確率で1,000万円以上の年収も目指せます。

 

③ AI代替可能性は弁護士より低い

最近はChatGPTやNHKのAI自動音声など、AIの進化に驚かされることが増えてきました。

この流れは資格保有者が担当するべき業務にも波及するとみられ、野村総研と英オックスフォード大学の共同研究によれば、行政書士や税理士は90%以上の確率でAIに取って代わられるとされています。

司法書士や公認会計士、社会保険労務士なども同様で、こちらは多少低いものの、それでも代替可能性は80%前後と算出されています。

では中小企業診断士はどうかというと、驚くべきことに、AIへの代替可能性はわずかに0.2%でした。

ちなみに、弁護士の代替可能性は1.4%です。

つまり、中小企業診断士は弁護士以上にAI時代に強い資格である、という結果が出たのです。

中小企業診断士の仕事はコミュニケーションベースで進める仕事なので、似たような事例でも全く違う対応を取る場合があります。

AIはそのような駆け引きが苦手なので代替可能性が低くなっているのでは、というのが大方の見立てです。

 

3. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

中小企業診断士は今まで何度も、不要論がささやかれてきました。

確かに、国から明確な位置づけを保証されているわけではないため、存在価値に疑問を投げかけられても仕方がない側面もあるのかもしれません。

しかし、日本企業の99%以上は中小企業であり、経済の維持・向上のために、今後も国が中小企業の振興策を実施するのは間違いありません。

そして、施策を実行に移す際には国家資格である中小企業診断士の活用を、可能な限り検討するはずです。

一方、中小企業の経営陣も、国が実施する支援策を有効に活用するためのノウハウを、知りたいと考える人は多いでしょう。

中小企業診断士に対する需要は、このような公的な需要と民間のコンサル需要が相互に影響し合って形作られていくため、今後さらに需要が拡大していく可能性はかなり高いと思われます。

 

4. まとめ

Point! ◆中小企業診断士の働き口は増加傾向にある。
◆中小企業診断士の仕事がAIに取って代わられる可能性は弁護士よりも低い。
◆資格の取得や更新に効率的に取り組めるようなサービスがいろいろと出てきている。
◆中小企業診断士という資格を良く知る人からは高く評価されている。
◆中小企業診断士の業務は民間の他に公的機関にも存在し、今後も一定の需要が見込める。

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