どんな資格でも、合格するためには相応の費用がかかります。
中小企業診断士でいえば独学で5万円、講座受講で10万円というのが、最低限意識しておくべき費用です。
しかし実は、試験合格後にもかなりの費用が発生します。
「合格したらすぐに肩書を名乗れて仕事ができる」と思っていると、合格後に発生するいろいろな出費に、面食らうことになります。
事前にチェックして、心の準備をしておきましょう。
この記事では、中小企業診断士の
・合格までにかかる費用
・登録にかかる費用
・維持にかかる費用
について、どんな費用がどのくらいかかるのかを、まとめました。
1. 合格にかかる費用
1) 勉強費用
2) 受験費用
2. 登録にかかる費用
1) 実務補習受講料
2) 中小企業診断協会入会費用
3. 維持にかかる費用
1) 知識の補充
2) 実務の従事
4. 他資格との費用の比較
1) 社会保険労務士との比較
2) 行政書士との比較
5. 終わりに
6. まとめ
1. 合格にかかる費用
診断士試験に合格するまでにかかる費用は、どんなスタイルで勉強するかによって、違ってきます。
できるだけ安く済ませるなら独学、効率的に合格を目指すなら資格講座の受講が、選択肢になります。
1) 勉強費用
① 独学:約5万円
独学で挑戦する場合、教材選びは特に重要です。
「教材選びのポイント」はいくつかありますが、独学者がそれらのポイントを網羅した教材を選ぶのは、至難の業。
そこでおすすめしたいのが、「みんなが使っている教材を使う」という選び方です。
実は中小企業診断士試験では、大手資格予備校のTACが出している公式テキストや問題集が、定番教材として有名です。
TACの講座で実際に使われている公式テキストですから、解説のわかりやすさには定評がありますし、広範な出題範囲もしっかりと要点を抑えて網羅されています。
また、テキストと問題集がそれぞれ独立しているので、インプットとアウトプットの量もしっかりと確保できます。
これに同じくTACの最新過去問集と、2次試験対策で不動の定番教材と言われる「ふぞろいな合格答案」を揃えれば、まずは理想的です。
費用は以下の通りです。
教材 | 費用 |
TAC 中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト(7科目分) | 20,020円 ※2,860円×7科目 |
TAC 中小企業診断士 最速合格のための スピード問題集(7科目分) | 13,090円 ※1,870円×7科目 |
TAC 中小企業診断士 最短合格のための 第1次試験過去問題集(7科目分) | 12,320円 ※1,760円×7科目 |
中小企業診断士2次試験 ふぞろいな合格答案(最新年度版) | 2,860円 |
合計 | 48,290円 |
ただし、学習を進めていくうちに、必ず内容による得手不得手が出てきます。
その時にはその分野に特化した教材を、サブテキストのような形でそろえる必要があるので、十中八九、追加の費用がかかってきます。
② 通信講座:約5万~30万円
試験勉強を始めるに当たって、多くの人が検討するのが、資格学校の利用です。
資格学校は通学コースと通信コースに分かれ、通学コースは30万円前後かかりますが、通信コースは5万円前後から受講できて人気です。
以下は、中小企業診断士の1次試験と2次試験対策がカバーできる、Web通信講座の費用一覧です。
スクール | 講座費用 (2024年9月) |
TAC | 300,000円 |
LEC | 264,000円 |
クレアール | 145,000円 |
アガルート | 107,800円 |
フォーサイト | 77,800円 |
診断士ゼミナール | 59,780円 |
スタディング | 59,400円 |
通信講座の魅力は何と言っても、時間と場所に縛られないところにあります。
通勤・通学の電車内や昼食後のちょっとした時間、就寝前のベッドの中など、ネットにつながってさえいれば、隙間時間を使った学習が可能です。
各社とも合格者を輩出しているので講座内容も信頼できますし、費用は独学パターンに少し足したくらいから受講できます。
講座によっては合格祝い金まで出してくれるところもあるので、コストパフォーマンスは間違いなく一番。
独学を選ぶくらいなら、安い通信講座を選ぶ方が賢い選択です。
2) 受験費用
中小企業診断士試験の受験手数料は、以下の通りです。(令和4年度から改定されています。)
・第2次試験:17,800円
1次試験は科目免除制度があるため、受験科目が少ない人もいますが、受験する科目数に関わらず、一律で14,500円必要となります。
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
2. 登録にかかる費用
2次試験に合格しても、中小企業診断士として国に登録されなければ、活動はできません。
登録するためには要件を満たす必要があり、費用がかかります。
この段階でかかる費用は「実務補習受講料」と「中小企業診断協会の入会費と年会費」の2つです。
これらの費用は、全員に義務付けられたものではありませんが、多くの人は必要となってくる費用です。
以下で解説します。
1) 実務補習受講料
実務補習受講料は、以下の通りです。
・実務補習(5日間):6万円×3回
2次試験に合格した人が中小企業診断士として登録されるためには、「15日以上の診断実務への従事」が必要とされています。
すでに仕事として企業相手のコンサルティング業務をしている人であれば、日常業務が診断実務そのものですから、手続きをすれば実務補習の受講は不要で費用もかかりません。
しかし、そうでない多くの人は診断実務をさせてくれる企業を探すか、中小企業診断協会などが実施する実務補習を受講する必要があり、費用が発生します。
現実には、診断業務をさせてくれる企業を自力で探すことは困難であるため、多くの人は実務補習を受講することになります。
また、あまりないケースかもしれませんが、本業でコンサルティング業務に従事している人の場合、実務補習日数と本業でのコンサルティング業務日数を合算することも可能です。
例えば、本業で10日間のコンサルティング業務に従事した人は、実務補習を5日間だけ行えば、15日間という登録要件をクリアできます。
なお、実務補習はPCがなければ業務になりません。
もしPCを持ってないのであれば、購入費用も別途必要になってきます。
2) 中小企業診断協会入会費用
業界団体である中小企業診断協会へ入会する場合は、入会金と年会費がかかります。
・年会費:3万円~5万円
中小企業診断協会は全国各地にあり、入会金も年会費もそれぞれ独自に定めているため、金額は地域による差があります。
ちなみに東京都中小企業診断士協会の場合は入会金3万円、年会費5万円で計8万円が必要になります。
しかし、診断協会への入会は任意ですから、自身の状況に照らし合わせて入会不要ということであれば、費用はかかりません。
3. 維持にかかる費用
中小企業診断士の資格は取得したら終わりではなく、5年に1度、更新登録をしなければ維持できません。
更新登録をするためには「知識の補充」と「実務の従事」という、2つの要件を満たす必要があり、それぞれ費用がかかります。
⇒5年で31,500円(6,300円×5回)
・「実務の従事」要件
⇒0円もしくは3万~5万円/年
1) 知識の補充
「知識の補充」要件は、「理論政策更新(理論政策)研修の受講」「論文審査に合格」「理論政策更新(理論政策)研修講師を務める」の3つのうち、どれでも良いので合計5回以上行えば、要件を満たしたことになります。
研修受講や論文審査は1回あたり6,300円の費用がかかるため、5年間で31,500円必要になります。
2) 実務の従事
「実務の従事」要件は、「経営診断助言業務」や「窓口相談業務」に従事し、5年間で30点以上得点することとなっています。
「経営診断助言業務」の場合は1日で1点、「窓口相談業務」は5時間で1点加算されます。
もし、本業でコンサルティング業務を行っていれば、それを「実務の従事」として申請することができるので、費用はかかりません。
また、企業内診断士であっても、取引先や下請け企業、あるいは自社に対して経営診断や助言を行ったなら、それも「実務の従事」として申請可能です。(企業内診断士については「企業内診断士のメリット・デメリット」も合わせてご確認ください。)
しかし、そうでない場合は自力でコンサルさせてくれる中小企業を見つけるか、実務補習を受講する必要があります。
なお、中小企業診断協会が実施する実務補習は、診断協会に入会してないと受講できないため、年会費という形で費用が発生します。(年間費3万円~5万円)
また、民間企業が実務従事支援サービスを展開している例もあります。
その場合はサービス利用時に、数万円の費用が発生します。
4. 他資格との費用の比較
ここでは、「資格の取得~維持更新」までにかかる費用の概算を、他の資格と比較していきます。
なお、表中の「合格までにかかる費用」は通信講座などの学習費用と受験料、「登録にかかる費用」は登録手数料や業界団体への入会費用、「更新にかかる費用」は業界団体の年会費などを元に算出しています。
1) 社会保険労務士との比較
中小企業診断士 | 社労士 (開業) |
|
合格まで | 約10万円 | 約10万円 |
登録 | 約25万円 | 約27万円 |
維持 | 約5万円 | 約9万円 |
社会保険労務士は、合格までにかかる費用や登録にかかる費用が中小企業診断士とほぼ同じですが、業界団体への年会費はやや高めです。
なお、社会保険労務士の業界団体も都道府県ごとに存在し、年会費は数万円単位で差があります。
2) 行政書士との比較
中小企業診断士 | 行政書士 | |
合格まで | 約10万円 | 約10万円 |
登録 | 約25万円 | 約25万円 |
維持 | 約5万円 | 約7万円 |
行政書士も都道府県によって、行政書士会への年会費などが変わってはきますが、大まかには上記のような金額になります。
社労士同様、資格取得までの費用も登録にかかる費用も中小企業診断士と変わりませんが、入会必須の行政書士会の年会費については年額7万円前後のところが多く、中小企業診断士より若干高めです。
(行政書士と中小企業診断士については「中小企業診断士と行政書士のダブルライセンスはあり?なし?」も合わせてご確認ください。)
5. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
資格取得を意識し始めたころは、合格までの受講費用くらいしか気にしないものですが、いざふたを開けてみれば、合格後に思いのほか多額の費用がかかって、びっくりする人もいます。
登録時に20万円を超える費用がかかり、毎年3万円~5万円の診断協会会費がかかり、更新に向けた勉強にも5年で3万円ちょっとの費用がかかります。
本業で経営コンサルをしている人なら、それらの費用の多くを無しにすることも可能ですが、コンサルする場に恵まれない人は、最初から想定しておかないと資格の維持がストレスになってしまいかねません。
最初から想定したうえで、動いていくことをお勧めします。
6. まとめ
◆コンサルが本業の人以外は登録時に20万円以上の費用が必要となる。
◆診断士資格は更新要件があり、多くの場合、年5万円程度が必要になる。
◆社労士や行政書士も同様に登録手数料や業界団体年会費が必要になる。