簿記で最初に学習する、最も基本的な勘定科目である「現金」。
簿記検定において現金に関連する勘定科目には、以下の3つがあります。
・現金過不足(雑益・雑損)
・小口現金
そこで今回は、この3つの論点について、詳細をお伝えしていきます。
1. 現金とは?
1) 現金の範囲
2) 現金の仕訳
2. 現金過不足とは?
1) ズレを表す仮勘定
2) 現金過不足の仕訳
3. 小口現金とは?
1) 小口現金とは?
2) 小口現金の仕訳
4. 終わりに
5. まとめ
1. 現金とは?
1) 現金の範囲
現金と聞いてまず思い浮かぶのは、1万円札・千円札・500円玉・100円玉・10円玉・1円玉といった、紙幣や硬貨かと思います。
紙幣や硬貨といった「通貨」は、当然に現金に含まれます。
ただ、簿記においては通貨以外にも、現金に含まれるものがあるのです。
それが、「通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)」です。
通貨代用証券とは、銀行や郵便局に持っていくと通貨と交換することができるものであり、読んで字のごとく、通貨を代用することができる証券のことを指します。
具体的には、以下のようなものが通貨代用証券に該当します。
他人が振り出した小切手。(「簿記:小切手とは?」参照)
郵便為替という証書を利用して現金を送る手段。郵便局の窓口で利用できる。
普通為替証書の銀行版。
配当金を受領できる引換券。
公社債の利息を受領できる引換券。
以上を整理すると、簿記において「通貨」または「通貨代用証券」の増減がある場合は、「現金」勘定を使用します。
2) 現金の仕訳
現金の仕訳はシンプルで、現金が増加した場合は借方に、減少した場合は貸方に記載します。
いくつか仕訳の例題を見ていきましょう。
① 商品10万円を売り上げて代金を現金で受け取った。
借方 | 貸方 |
現金 100,000 |
売上 100,000 |
② 商品5万円を仕入れて代金を現金で支払った。
借方 | 貸方 |
仕入 50,000 |
現金 50,000 |
③ 保有していた株式の配当金領収証3万円が郵送されてきた。
借方 | 貸方 |
現金 30,000 |
受取配当金 30,000 |
④ 商品10万円を売り上げて代金を普通為替証書で受け取った。
借方 | 貸方 |
現金 100,000 |
売上 100,000 |
*①と同じ仕訳になる。
2. 現金過不足とは?
1) ズレを表す仮勘定
現金過不足とは、帳簿上の現金勘定の残高と実際の現金の残高が異なる場合に、その差額に対して使用する仮勘定科目のことを指します。
つまり、「現金は50万円あるはずだ」と思っていたら、「実際に数えてみると45万円しかない…」といった場合の差額の5万円が、現金過不足となるのです。
あくまで仮の勘定科目であり、決算時には他の勘定科目に振り替える必要があります。
2) 現金過不足の仕訳
現金過不足の仕訳が発生するのは、以下の3つの場面となります。
① 過不足が見つかった時
帳簿上の現金残高と実際の現金残高の過不足が見つかった場合は、「現金過不足」勘定を使用してズレを修正します。
・帳簿残高100万円>実際残高90万円
⇒帳簿上の現金残高を10万円減らして実際の現金残高に修正する。
借方 | 貸方 |
現金過不足 100,000 |
現金 100,000 |
・帳簿残高90万円<実際残高100万円
⇒帳簿上の現金残高を10万円増やして実際の現金残高に修正する。
借方 | 貸方 |
現金 100,000 |
現金過不足 100,000 |
② 過不足の原因が分かった時
発生した現金の過不足について、原因がわかった際は正しい勘定に振り替えます。
・現金が10万円少ない原因が発送費だった
⇒借方にある現金過不足勘定を取り消して発送費に振り替える。
借方 | 貸方 |
発送費 100,000 |
現金過不足 100,000 |
・現金が10万円多い原因が発送費だった
⇒貸方にある現金過不足勘定を取り消して発送費に振り替える。
借方 | 貸方 |
現金過不足 100,000 |
発送費 100,000 |
③ 決算までに原因が分からなかった時
決算時には仮勘定である現金過不足勘定は使用できないため、決算までに現金過不足の原因が判明しない場合は、「雑損」または「雑益」に振り替える。
・現金が10万円少ない原因が判明しなかった
⇒借方にある現金過不足勘定を取り消して「雑損」に振り替える。
借方 | 貸方 |
雑損 100,000 |
現金過不足 100,000 |
・現金が10万円多い原因が判明しなかった
⇒貸方にある現金過不足勘定を取り消して「雑益」に振り替える。
借方 | 貸方 |
現金過不足 100,000 |
雑益 100,000 |
3. 小口現金とは?
1) 小口現金とは?
会社のお金は、経理部がまとめて管理しています。
そのため、取引先への支払や経費の支払いなどが発生した場合は、各部署から経理部へ連絡がいき支払いが行われます。
しかし、例えば営業が出張先の電車代を支払ったり、総務部が文房具を購入したりする際に、いちいち経理部に報告して現金をもらい、その都度経理部が仕訳を切ることは、非常に煩雑であり手間となります。
そこで、一定額の現金を各部署の担当者(小口現金係)に渡しておき、細々とした支払いはこのお金で対応してもらい、後からまとめて経理部に報告する定額資金前渡制度(インプレストシステム)が一般的に採用されております。
この際に担当者に渡すお金のことを、「小口現金」と言います。
小口現金の対象となる費用には、以下のようなものがあります。
・旅費交通費
電車/バス/タクシーの料金
・消耗品費
文房具代/コピー用紙代/封筒代
・通信費
切手代/電話料金/インターネット料金
・水道光熱費
ガス代/電気代/水道代
・雑費
お茶代など上記以外
2) 小口現金の仕訳
以下の4つの場面で、小口現金に関する仕訳について見ていきましょう。
① 担当者に小口現金を渡す時
経理担当者は当座預金から引き出した10万円を小口現金係に渡した。
借方 | 貸方 |
小口現金 100,000 |
当座預金 100,000 |
② 小口現金が使用されたとき
小口現金係は旅費交通費2万円と文房具代5千円を支払った。
仕訳なし
*各部署での支払い時には仕訳は発生せず、経理担当者への報告時に仕訳が発生する。
③ 担当者から使用内容の報告を受けた時
小口現金係から経理担当者へ旅費交通費2万円と文房具代5千円の支払い報告があった。
借方 | 貸方 |
旅費交通費 20,000 消耗品費 5,000 |
小口現金 25,000 |
④ 小口現金を補充する時
経理担当者は当座預金から引き出した2.5万円を小口現金として補充した。
借方 | 貸方 |
小口現金 25,000 |
当座預金 25,000 |
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・フォーサイト
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4. 終わりに
簿記の最も基本的な勘定科目である「現金」や、現金に関連する「現金過不足」「小口現金」についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
難しい論点ではないですが、確実に覚えておく必要があります。
この機会に、しっかりと頭にいれておきましょう。
5. まとめ
◆現金の帳簿残高と実際の残高とのズレは現金過不足で処理する。
◆各部署の細かな支払いは小口現金を渡して、後からまとめて報告を受けた際に仕訳を切る。