多くの公認会計士が、監査法人で働いています。
これから公認会計士を目指す人の多くも、監査法人で働くキャリアを想像しているのではないでしょうか?
一方で、一般企業で公認会計士として働くことに興味がある人も、多いかと思います。
しかし、一般企業で働く会計士の情報はそこまで多くなく、実際のことろ良いのか?悪いのか?、イマイチわからないのではないでしょうか?
そこで今回は、監査法人と一般企業の双方を経験した筆者が、公認会計士が一般企業で働くことのメリット・デメリットについて、それぞれ5つずつ解説していきます。
1. 一般企業で会計士が働くメリット
1) キャリアの選択肢が幅広い
2) 価値観が広がりやすい
3) 転職しやすい
4) 副業しやすい
5) 仕事ができそうと思われる
2. 一般企業で会計士が働くデメリット
1) 会計士登録するまで苦労しやすい
2) 年会費を実費で支払う必要がある
3) 給料が下がる可能性がある
4) 専門的情報を仕入れづらい
5) プライドが高くなりやすい
3. 終わりに
4. まとめ
1. 一般企業で会計士が働くメリット
1) キャリアの選択肢が幅広い
1つ目の公認会計士が一般企業で働くメリットは、「キャリアの選択肢が幅広い」ことです。
監査法人内でパートナーまで昇進するのが、公認会計士の理想のキャリアなのでは?
このように思われている人も、いるかもしれません。
確かに、公認会計士の独占業務である監査で活躍したいのであれば、監査法人内でパートナーを目指すのも、1つのキャリアです。
一方で、一般企業に目を向ければ、公認会計士の活躍の場所は、非常に多くあります。
監査法人だけでなく一般企業で会計士として働くことを考えた場合、例えば以下のようなキャリアの選択肢が考えられます。
・監査役
・経営企画
・マーケティング部
・中小やベンチャーのCFO
・会計コンサルティング会社
私自身も、公認会計士として経理で働いたり、公認会計士の知識を活かしながら、一般企業の予算作成やマーケティングも経験して、公認会計士という資格の活躍の場の広さを実感しました。
以上より、「キャリアの選択肢が幅広い」ことは、公認会計士が一般企業で働くメリットと言えます。
2) 価値観が広がりやすい
2つ目の公認会計士が一般企業で働くメリットは、「価値観が広がりやすい」ことです。
公認会計士試験に合格すれば、過去の学歴や職歴がどうであれ、皆同じ地点からスタートします。
そのため、監査法人の同僚には様々な経歴の人がおり、世間の人が思っているよりは個性的な人が多い集団だと思います。
一方で、全員が公認会計士試験合格者であり、どこか似たような人達が多いのも、1つの事実です。
この点、一般企業であれば公認会計士以外の人が多く、監査法人とは異なった価値観に触れることができます。
例えば私の場合、一般企業で以下のような人達に出会いました。
・弁護士から起業した社長
・薬学部を中退したエンジニア
・ベトナムの会社で働いていた人
・元美容師
・元キャバクラの店員
私の場合は、一般企業といっても外資系金融機関やベンチャーでの経験だったので、少し特殊な人材も多かったですが、取引先の一般企業を見ていても、やはり監査法人にはいないような、多様な人材に会える可能性が高いと感じました。
以上より、「価値観が広がりやすい」ことは、公認会計士が一般企業で働くメリットと言えます。
「別に多様な価値観に触れなくても、自分は問題ない。」
こう思った人も、いるかもしれません。
ただ、あなたがどのようなキャリアを歩むにせよ、多様な価値観に触れ視野を広げることは、以下の点から大切と言えます。
・固定観念にとらわれない、柔軟な発想ができる。
・専門外の分野についても、興味関心が持てるようになる。
3) 転職しやすい
3つ目の公認会計士が一般企業で働くメリットは、「転職しやすい」ことです。
公認会計士にとって監査法人でのキャリアは、経理など一定の職種への転職においては、有利に働くケースがあります。
ただ、転職できる会社の幅は、かなり狭まることが多いです。
監査法人でのキャリアの大部分を占めるのは監査業務となりますが、監査業務は公認会計士の独占業務であるがゆえにかなり特殊性が強く、他の会社での汎用性が必ずしも高いとは言えません。
この点、一般企業であれば、監査法人よりは転職できる企業の幅が広がりやすいです。
例えば、一般企業で経理としての経験を積めば、監査法人で監査だけをしてきた人材よりも、転職の際に経理として高く評価されやすいです。
あるいは、同業他社や取引先の企業などに転職するケースも考えられます。
監査法人の場合は、同業他社といっても、選択肢は一桁程度しかありません。
(一方で、監査先の企業に転職するケースは、時々あります。)
以上より、「転職しやすい」ことは、公認会計士が一般企業で働くメリットと言えます。
(公認会計士である筆者の一般企業への転職体験談については、「公認会計士の転職体験談!「バカじゃないの?」と言われた転職」をご参照ください。)
4) 副業しやすい
4つ目の公認会計士が一般企業で働くメリットは、「副業しやすい」ことです。
監査法人では独立性の観点から、副業に関しての縛りが大きいです。
どこまで副業が可能か明確にはわからず、みなリスクを感じてやらないケースが多いです。
この点、一般企業であれば、監査法人よりははるかに副業がしやすい環境と言えます。
特に近年では、副業ブームと言われるほど、明確に副業を解禁する一般企業が増えてきているほどです。
「公認会計士であればお金に困ることもないし、別に副業できなくても問題ない。」
と考える人も多いかもしれません。
ただ、副業には以下のようなメリットがあるため、可能なら取り組んだ方が良いです。(もちろん、本業をしっかりと頑張っていることが前提となります。)
以上より、「副業しやすい」ことは、公認会計士が一般企業で働くメリットと言えます。
5) 仕事ができそうと思われる
5つ目の公認会計士が一般企業で働くメリットは、「仕事ができそうと思われる」ことです。
監査法人であれば周りもみんな公認会計士なので、公認会計士であること自体が差別化要素になることはありません。
一方で一般企業の場合は、公認会計士が組織内に多数いることはめずらしく、公認会計士であること自体が差別化要素となります。
実際に私も経験したことなのですが、一般企業では公認会計士であるだけで、「何だか仕事ができそう」と思われることがあります。
「実際に仕事ができるかどうかが大事であり、仕事ができそうと思われることに意味はない!」
という意見も当然あるかと思います。
確かに、本当に大切なのは実力であることは、疑いようのない事実です。
ただ、中身を磨くことも大切ですが、公認会計士という肩書で「できるやつ」と思わせることも、実は大きな意味を持ちます。
「できるやつ」と思われれば、その分仕事が回ってきて、経験を積むことができます。
「できるやつ」と思われれば、外見とのギャップを埋めるために、中身を磨くようになります。
「できるやつ」と思われれば、自分はできると錯覚して、自信がつきます。
公認会計士という肩書を最大限に活かせる場所は、実は監査法人ではなく一般企業かもしれません。
以上より、「仕事ができそうと思われる」ことは、公認会計士が一般企業で働くメリットと言えます。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
2. 一般企業で会計士が働くデメリット
1) 会計士登録するまで苦労しやすい
1つ目の公認会計士が一般企業で働くデメリットは、「会計士登録するまで苦労しやすい」ことです。
公認会計士試験に合格しても、実はすぐに公認会計士として登録できるわけではありません。
会計士として登録するまでには、数年の期間が必要となります。
なぜか?というと、登録までに以下の要件を満たす必要があるためです。
・実務補修所での所定の単位。
・修了考査に合格する。
まず実務経験と実務補修所での単位の要件を満たして、通常は3年後に修了考査を受けて合格すれば、晴れて公認会計士として登録できることとなるのです。
この点、監査法人であれば、実務要件は当然満たせますし、実務補修所の日程を考慮して仕事が配分されます。
また、修了考査前には、1ヶ月程度の試験休みをとることも、可能となります。
一方で一般企業の場合は、そもそも実務要件に該当しないかもしれません。
さらに、実務補修所に対する理解も当然にないため、土日にまとめて通う必要があり、相当ハードな日程となります。
修了考査があるからと、長期の休みをもらうこともできません。
そのため、公認会計士として登録するまでは、監査法人にいた方がメリットが大きいかもしれません。
以上より、「会計士登録するまで苦労しやすい」ことは、公認会計士が一般企業で働くデメリットと言えます。
2) 年会費を実費で支払う必要がある
2つ目の公認会計士が一般企業で働くデメリットは、「年会費を実費で支払う必要がある」ことです。
公認会計士という肩書を名乗るためには、毎年登録料を支払う必要があります。
その額はおよそ「12万円」です。
多いか少ないかは、人それぞれ感じ方が異なるかもしれませんが、多くの人にとっては、小さくない金額だと思います。
私も毎年登録料を支払っているのですが、正直「高いな。。」と感じることがあります。(それだけの価値を感じているので、毎年支払っているのも事実ですが。)
この点、監査法人に勤めていた場合は、監査法人側が登録料を全額支払ってくれます。
これに対して一般企業の場合は、本人が実費で支払うケースがほとんどです。
毎年のことなので何十年単位で見比べてみると、登録料の点に関しては監査法人の方が圧倒的にメリットが大きいです。
以上より、「年会費を実費で支払う必要がある」ことは、公認会計士が一般企業で働くデメリットと言えます。
3) 給料が下がる可能性がある
3つ目の公認会計士が一般企業で働くデメリットは、「給料が下がる可能性がある」ことです。
「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は・・・万円でした!」でお伝えしている通り、監査法人の場合は1~4年目で500~700万円程度の給料をもらうことができます。
また、10年程度勤めれば、年収1,000万円を超えることも難しくありません。
一方で一般企業の場合は、いくら公認会計士といえども、必ずしも監査法人ほどの給料をもらえるとは限りません。
公認会計士に用意されている求人数から考えれば、むしろ監査法人より給料が低い求人の方が多いかと思います。
(ただ、給料が上がる求人に多くの人が応募し、落ちた人は転職しないことが想定されるため、公認会計士の実際の転職事例だけを見れば、給料が上がるケースの方が多いです。)
給料の上がるスピードに関しても、監査法人のように役職が上がると急激に上がる一般企業は少ないでしょう。
以上より、「給料が下がる可能性がある」ことは、公認会計士が一般企業で働くデメリットと言えます。
4) 専門的情報を仕入れづらい
4つ目の公認会計士が一般企業で働くデメリットは、「専門的情報を仕入れづらい」ことです。
公認会計士に対する周りの期待は、「財務会計の専門家として最新の知識を提供してくれること」であることが多いです。
そのため、公認会計士として活躍するためには、常に最新の財務会計情報をキャッチアップして、理解しておく必要があります。
監査法人であれば、専用の部署があるほど最新の情報は充実しており、アップデートがあるたびにメールやホームページで情報を仕入れることができます。
また、1次情報がただ共有されるだけでなく、その情報をかみ砕いてポイントを端的にまとめたサマリーも、監査法人内であれば適時に共有されます。
これに対して一般企業の場合は、最新情報のキャッチアップを全て自分一人で行う必要があります。
これは実際にやってみればわかるのですが非常に大変であり、そもそも通常業務が忙しいので、情報のキャッチアップに時間を割くのは限界があります。
結果として、一般企業にいる会計士よりも、監査法人にいる会計士の方が、最新の財務会計情報に詳しいケースが多いです。
以上より、「専門的情報を仕入れづらい」ことは、公認会計士が一般企業で働くデメリットと言えます。
5) プライドが高くなりやすい
5つ目の公認会計士が一般企業で働くデメリットは、「プライドが高くなりやすい」ことです。
監査法人内であれば周りも自分と同じ公認会計士なので、「自分はすごい」と勘違いすることは、あまりないかと思います。
一方で一般企業の場合は、本心は別としても、周りから「公認会計士なんてすごいですね」と言われることが多く、言われた本人が変に勘違いしてしまう可能性があります。
結果としてプライドが高くなり、謙虚に周りの声に耳を貸すことができなくなってしまいます。
公認会計士であろうが初めて働く企業であれば、その企業での経験年数はまだ0年であり、先輩に教えを乞うべきです。
周りの声に耳を貸さなければ、次第に社内で孤立してしまい、誰も助けてくれなくなってしまいます。
肥大化したプライドは、必ずどこかで公認会計士としてのキャリアに傷をつけることとなりますので、余計なプライドは捨てた方が賢明です。
以上より、「プライドが高くなりやすい」ことは、公認会計士が一般企業で働くデメリットと言えます。
3. 終わりに
公認会計士として一般企業で働くメリット・デメリットについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
私自身の経験からも、一般企業での経験は、公認会計士としてキャリアに必ずプラスになると思います。
将来の公認会計士としてのキャリアプランの中に、一般企業を組み込んでみるのも、おもしろいかもしれません。
4. まとめ
・キャリアの幅が広がる。
・価値観が広がる。
・転職しやすくなる。
・副業をしやすくなる。
・「できるやつ」と思われやすい。
◆デメリット
・会計士登録までが大変。
・会計士の年会費は実費。
・年収が下がる可能性。
・専門情報が手に入りづらい。
・プライドが高くなりやすい。