公認会計士試験合格には、一般的に3,000時間程度の勉強時間が必要だと言われることが多いです。
「3,000時間かければ本当に合格できるの?」
と思われる方も多いかもしれません。
実際、私は公認会計士試験合格までに、3倍の9,000時間を必要としました。
改めて数字にしてみると、自分でもすごい勉強時間だと思います。
そこで今回は、そもそもなぜ3,000時間と言われているのかを解説した上で、私の体験談についてお伝えしていきます。
1. 勉強時間は3,000時間必要?
1) なぜ3,000時間と言われているの?
まず、一般的になぜ、公認会計士試験合格に必要な勉強時間が3,000時間と言われているか、私が考える2つの理由を解説していきます。
① 誰かが言い始めて皆それに従った
1つ目の3,000時間の勉強時間が必要と言われている理由としては、「誰かが言い始めて皆それに従った」ことが考えられます。
、、、えっ?そんな理由?
と思われるかもしれませんが、そんな理由で3,000時間という数字が、独り歩きしている可能性があります。
突然ですが、公認会計士の勉強時間を調べようと思った場合に、皆様どのような行動をとっているでしょうか?
まさに今この記事に行き着いたように、Googleなどの検索エンジンで検索して調べる方も多いと思います。
あるいは、YoutubeやX(旧Twitter)などのSNSを利用して、調べる方もいるかと思います。
では、ネット上の記事やSNSなどで勉強時間について情報発信している人達は、どのようにしてその情報を集めて、検索上位を狙っていると思いますか?
私も実際にこうして記事を書いているのでわかるのですが、GoogleやYoutubeなどで検索して上位に表示された数記事を見て、情報収集している人が非常に多いです。
現在上位の記事をある程度マネれば、同じように上位表示される可能性が高いためです。
つまり、昔誰かが「公認会計士試験合格には3,000時間の勉強時間が必要」と記事を書いて、それが検索上位に表示されたため、後の人達はその記事から情報収集して、同じような内容が量産された可能性があります。
以上より、「誰かが言い始めて皆それに従った」ことは、3,000時間の勉強時間が必要と言われている理由と考えられます。
② 予備校の都合上あまり長いと困る
2つ目の3,000時間の勉強時間が必要と言われている理由としては、「予備校の都合上あまり長いと困る」ことが考えられます。
予備校としては、当然ビジネスで公認会計士試験の講座を運営しています。
つまり、多くのお客様に受講していただく必要があります。
そして、公認会計士試験ほどの難関試験になると、残念ながら1つの事実として、大多数の人は不合格となります。
つまり、予備校側としては、講座受講者の大多数は不合格となって、また来年講座を受講する可能性があるため、いかにして受講生を囲い込むかが重要となります。
そのためには、あまりに長い勉強時間が必要と言うと、そもそも受験自体をあきらめてしまう人達も多いため、「とりあえず3,000時間頑張ってみよう」というメッセージングを発信して、受験&予備校の利用を決断するように促している可能性があります。
こういうと予備校が何か悪の組織のように見えるかもしれませんが、基本的に多くの講師は受講生の合格を第一に考えてくれる教育者であるため、そこは安心してください。
そのような質の高い講師を雇うためにも、ビジネス上お金を稼ぐ必要があるということは、受講生の側としても理解が必要です。
以上より、「予備校の都合上あまり長いと困る」ことは、3,000時間の勉強時間が必要と言われている理由と考えられます。
難関資格と言われている他の資格と比較すると、公認会計士の3,000時間という勉強時間は多いのでしょうか?
他資格の勉強時間の目安を記載しましたので、参考にしてみてください。
・予備試験/司法試験:10,000時間
・税理士:5,000時間
・中小企業診断士:1,000時間
・簿記1級:1,000時間
2) 本当に3,000時間必要なの?
3,000時間の勉強時間と聞いて、
「多いな。。。本当にそんなに必要なの?」
といった声も聞こえてきそうですが、1つ残念なお知らせがあります。
確かに3,000時間以内で合格している人もいるにはいますが、多くの人は3,000時間以上かかると思った方が賢明です。
私が考える3,000時間以上かかる理由について、以下で4つ順にお伝えしていきます。
① 少なめに言う人が多い
3,000時間以上の勉強時間が必要な1つ目の理由としては、「少なめに言う人が多い」ことが考えられます。
周りの合格者の人に勉強時間について話を聞くと、「意外に少ないな。。」ということが多々あるかもしれません。
ただ、周りの人が言うことを、真に受けてはいけません。
良くも悪くも、公認会計士試験に合格した人達は、プライドが高い人が多いです。
そのため、意識的か無意識かは別としても、「短時間で合格した人の方が優秀」と思ってしまうことがあり、その結果として、自身の勉強時間についても過少申告してしまうことがあります。
根拠は特にないですが、申告している時間に対して、実際は1.5倍程度の時間がかかっていると思った方が良いかもしれません。
そのため、実際は3,000時間以上の勉強時間を費やしている人が多いと推測できます。
以上より、「少なめに言う人が多い」ことは、3,000時間以上の勉強時間が必要な理由と考えられます。
公認会計士試験合格から3年後に、多くの人は「修了考査」という最後の試験を受けることになります。
この試験に合格すれば、晴れて公認会計士となることができるのですが、実は5割が落ちる試験です。
5割受かるのであれば合格率は高いのでは?と思うかもしれませんが、公認会計士試験に合格した人達の5割が落ちるとなると、不安になる人も多い試験です。
ただ、先輩に聞くとみんな「普通にやれば合格できる」と言います。
私も私の同期も受験する時は受かるかどうか不安に陥っていたのに、合格すると不思議なことに、先輩たちと同じように「普通にやれば合格できる」とみんな言い始めます。
要は、公認会計士試験も修了考査も同じで、合格してしまうとプライドが発生して、不安や苦戦していた過去を他人に伝えようとしなくなる傾向があります。
そのため、周りの話は参考程度に聞いておきましょう。
② 正確に記録している人が少ない
3,000時間以上の勉強時間が必要な2つ目の理由としては、「正確に記録している人が少ない」ことが考えられます。
突然ですが、皆様高校時代に何時間勉強していたか、答えられますでしょうか?
あるいは、社会人の方であれば、大学時代に何時間勉強したか覚えていますでしょうか?
おそらく、ほとんどの人は答えられないかと思います。
最近は勉強時間を記録するアプリの普及により、一昔前と比べると勉強時間の記録が容易になりましたが、それでもまだ自分の勉強時間を正確に記録している人は少ないかと思います。
公認会計士試験合格者についても同様であり、自分の勉強時間を正確に記録している人は少なく、仮に記録していたとしても、合格後もそのデータを持っている人は少ないです。
一方で勉強時間を覚えている人は、3,000時間以内などの短時間合格者が多いです。
そのため、3,000時間程度が一般的な勉強時間と言われることがありますが、実際は正確に記録していない、3,000時間以上の勉強時間を必要とした合格者が多数いると推測できます。
以上より、「正確に記録している人が少ない」ことは、3,000時間以上の勉強時間が必要な理由と考えられます。
③ 短時間合格者が目立っているだけ
3,000時間以上の勉強時間が必要な3つ目の理由としては、「短時間合格者が目立っているだけ」であることが考えられます。
短時間で合格した人は、本人が望もうが望むまいが、目立ってしまいます。
各予備校や大学からすれば、短期間での合格者を輩出したことは、ブランド価値を高めるため、全面的に宣伝したいと考えます。
その結果として、公認会計士試験に関するパンフレットやネットの記事上には、短時間合格者の情報が多く目につくようになります。
ただ、短時間合格者は、あくまでも合格者のほんの一部であるということを忘れてはいけません。
以上より、「短時間合格者が目立っているだけ」であることは、3,000時間以上の勉強時間が必要な理由と考えられます。
④ 机に座っている時間も数える
3,000時間以上の勉強時間が必要な4つ目の理由としては、「机に座っている時間も数える」ことが考えられます。
予備校やネット上の記事で紹介されている勉強時間は、本当に集中して勉強していた時間が掲載されている可能性があります。
例えば、休日の8時から20時まで勉強し、昼ごはんと夜ごはんにそれぞれ1時間ずつかけたとして、残り10時間は机に座っていたとします。
この場合、勉強している側からすれば、10時間勉強したと思う人が多いのではないでしょうか?
ただ、実際に集中して勉強していた時間となると、このうち8時間程度となるかもしれません。
そして、予備校やネット上の記事で語られる「勉強時間」とは、この8時間のことを指している可能性があります。
そのため、受験生が自身の勉強計画を立てる時に必要となる「勉強時間」は、先の例でいうところの10時間に相当する時間であり、それを合計すると、一般的に言われている3,000時間よりも多い時間が必要となると言えます。
以上より、「机に座っている時間も数える」ことは、3,000時間以上の勉強時間が必要な理由と考えられます。
2. 9,000時間の体験談
それでは、世間で言われている3,000時間の3倍、つまり9,000時間の勉強時間を必要とした、私の体験談について、お伝えしていきます。
1) 基本情報
まず、勉強時間を考える上で必要な、私の基本情報について箇条書きしておきます。
・大学3年生(厳密には2年の終わり)から勉強開始。
・公認会計士試験の勉強を始める時点で簿記検定の受験経験なし。
・大手予備校の公認会計士講座を利用。
・公認会計士試験勉強時代はずっと一人暮らし。
・当時身近に公認会計士試験合格者はいなかった。
・大学のサークル、部活には何も入らず。
・ローソンで週3程度アルバイト。
2) 9,000時間の体験談
厳密に言えば大学2年生の終わりの方からですが、大学3年生から本格的に公認会計士試験の勉強を開始しました。
それから合格するまでの、おおまかな推移は以下の通りとなります。
大学の授業と会計士試験の勉強を両立。
・大学4年生
5月・12月に短答受験も不合格。
・資格浪人1年目
5月に短答受験も不合格、12月に合格。
・資格浪人2年目
8月に論文受験で一発合格。
そして、かかった勉強時間はそれぞれ平均すると、おおよそ以下の通りとなります。
1,460時間(1日4時間×365日)
・大学4年生
2,555時間(1日7時間×365日)
・資格浪人1年目
3,650時間(1日10時間×365日)
・資格浪人2年目
1,400時間(1日10時間×140日)
⇒合計9,065時間。
順に見ていきましょう。
① 大学3年生:1,460時間
先ほど大学3年生から本格的に勉強を開始したとお伝えしましたが、
「本格的に勉強を開始したのに1日4時間だけ?」
と思われるかもしれません。
ただ、この時期はまだ大学の授業も多くあり、また、アルバイトも週3程度やっていたので、平均すると1日あたり4時間程度の勉強時間でした。
まだ公認会計士試験の全体像もしっかりと把握できておらず、今思えば無駄なことをけっこうやっていたと思います。
その1つが、勉強法探しでした。
「初めに効率的な勉強法を身に付ければ、その後の成果が何倍にもなるはずだ!」
と思い、合格体験記や勉強法などの本、ネットの記事などをあさっていました。
しかし、最終的に合格した年に何をしたかというと、予備校の教材をただ愚直に繰り返しただけでした。
勉強法を探したり、試したりするのに費やした時間が、今になって考えればもったいなかったです。
② 大学4年生:2,555時間
大学3年時に比べると大学4年時は、後期に大学での授業がなかったため、勉強時間が増えました。
ただ、前期は引き続き授業があり、後期はゼミの卒論などもあったため、年間を通して平均すると1日あたり7時間程度の勉強時間でした。
この時期に短答式試験を2回受験しているのですが、ともに不合格でした。
しかも、合格点にかすりもしない点数でした。
当時は「こんなに勉強しているのに。。」と思ったこともありましたが、受かった今だから言えるのですが、圧倒的に勉強時間が足りていなかったです。
大学3年生と4年生で合わせて4,000時間程度の勉強時間となっており、一般的に言われている3,000時間を超過していますが、最終的に私が合格するのに必要となる9,000時間には遠く及ばない時間でした。
③ 資格浪人1年目:3,650時間
資格浪人1年目の5月に受験した短答式試験も不合格となり、引き続き同じ予備校に通うか少し迷いましたが、通うことを決断しました。
結果的にこの判断は良かったと思っています。
その予備校が良かったというよりは、同じ予備校を信じて、同じ教材を使い続けることに意味がありました。
隣の芝生は青く見えると言われる通り、結果が出なかった時は予備校など周りに原因を求めて、他の予備校の方が良く見えてしまいがちです。
ただ、9割以上は自分の努力不足が原因であり、予備校側に原因はありません。
ここで予備校を変えてしまうと、教材や講師の表現の違い、新しい予備校に慣れるのに、無駄に時間を使ってしまいます。
さらに、予備校側に原因を求めて予備校を変える人は、思考が他責となってしまい、自分の中にある原因を振り返ろうとせず、結果ずっと合格できないということも起こりえます。
また、この年は12月に短答式試験に合格することができました。
12月までに成績が良くなることはなく、苦しい時期もありましたが、結果が出ない時期は誰にでもあり、その時期を乗り越えられるかが勝負であると自分に言い聞かせました。
後から考えると、結果が出ていないあの時期こそ、実はすごく成長していたのだと思います。
④ 資格浪人2年目:1,400時間
資格浪人2年目の時期は、短答に合格していたので、8月後半の論文に向けて勉強をしていました。
結果的に8月の論文に合格したので、勉強日数はおおよそ140日となりました。
この時期は論文試験間近であり、あまり余計なことを考えている余裕はなく、毎日ひたすら勉強していました。
余談ですが、資格浪人時代は有料自習室を借りて勉強していました。
予備校の自習室も利用できたのですが、以下の理由で有料自習室を利用していました。
・有料自習室には個別ブースがあり、より勉強に集中できた。
・予備校で下手に受験仲間を作るよりは、一人で黙々と作業したかった。
以上の約9,000時間の勉強時間の末に、合格を勝ち取りました。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
3. 終わりに
一般的に公認会計士試験合格に必要な勉強時間が3,000時間と言われている理由や、私の実際の体験談をお話しましたが、いかがでしたでしょうか?
人によって、必要な勉強時間は当然異なります。
ただ1つ言えることは、勉強した分だけ合格に近づきます。
毎日少しずつ勉強を積み重ねていきましょう。
4. まとめ
◆大学4年生:2,555時間
◆資格浪人1年目:3,650時間
◆資格浪人2年目:1,400時間
◆合計:9,065時間