公認会計士試験の選択科目は論文のみの出題であり、他の科目と比べるとボリュームも少ないため、まだ対策をできていない受験生も多いかと思います。
ただ、事前に何を選択すべきか、考えておいて損はありません。
結論としては、多くの人が選択する「経営学」がおすすめです。
そこで今回は、公認会計士試験の選択科目は経営学を選ぶべき理由について、解説していきます。
また、後半では、経営学の勉強対策についても解説しますので、ぜひご一読ください。
1. 公認会計士試験の選択科目とは?
1) 選択肢は4つある
公認会計士試験は、以下のような科目構成となっております。
・財務会計
・管理会計
・監査論
・企業法
必須科目
・会計学
・監査論
・企業法
・租税法
選択科目
・経営学
・経済学
・統計学
・民法
上記の通り選択科目とは、論文式試験において必須科目とは別に、4つの科目から選択して受験する受験科目となります。
以下で順に、各科目の概要について解説していきます。
2) 経営学
経営管理・財務管理の基礎的な内容が出題されます。
詳細は後述します。
3) 経済学
マクロ経済学とミクロ経済学に大別されます。
経済学部出身者であれば、見たことがある問題も多いかと思います。
4) 統計学
記述統計・推測統計の理論、金融工学の基礎的理論について出題されます。
あくまで会計士試験では基礎的な問題が出題され、高校数学レベルで十分対応可能な内容となります。
5) 民法
民法典第1編から第3編が主な出題範囲となります。
120年ぶりの民法大改正が2020年度より施行され、学習教材もまだ整っていないことが想定されるため、積極的な受験は避けるべき科目と言えます。
2. 経営学をおすすめする3つの理由
4科目ある選択科目のうち、私は受験生時代に「経営学」を選択して合格しました。
そんな私の経験から、経営学をおすすめする3つの理由について、お伝えしていきます。
1) 大多数の受験生が選択する
経営学をおすすめする1つ目の理由としては、「大多数の受験生が選択する」ことが挙げられます。
公認会計士試験において、選択科目は他の受験生と差をつけるための科目ではありません。
選択科目に関しては、他の受験生に差をつけられない程度の勉強に抑えておいて、必須科目にその分勉強時間を割くのが、合格の秘訣となります。
そのため、9割以上の大多数の受験生が受験する経営学を選択して、最低限の勉強をしておけば、周りと差をつけられる心配はありません。
反対に、経済学・統計学・民法のいずれかを選択した場合は、以下の理由で経営学の受験生と、大きな差がついてしまう可能性があります。
・受験者数が少ない分、その年その年の受験生のレベルに合わせて平均点が上下して、得点調整があてにならないため。
選択科目に関しては、多くの受験生が選択する経営学を選んで、皆と同程度の点数を目指すのが、得策となります。
以上より、「大多数の受験生が選択する」ことは、経営学をおすすめする理由と言えます。
2) 勉強時間が少ない
経営学をおすすめする2つ目の理由としては、「勉強時間が少ない」ことが挙げられます。
経済学・統計学・民法に関しては、ある程度その分野を勉強したことがある人の受験が想定されます。
そのため、純粋な初学者の場合は、学問として基礎から学ぶ必要があるため、多くの勉強時間が必要となってしまいます。
一方で、経営学の財務管理については会計士試験の必須科目の知識を活かすことができ、また、経営管理については理論を学ぶことより暗記が優先されるため、比較的少ない勉強時間で合格レベルまで到達することが可能となります。
先述の通り公認会計士試験合格のためには、いかに必須科目に時間を割けるかがポイントとなりますので、選択科目の勉強時間が少ないことは、大きなアドバンテージになります。
以上より、「勉強時間が少ない」ことは、経営学をおすすめする理由と言えます。
公認会計士試験に合格するためには、何時間の勉強時間が必要なのでしょうか?
3,000時間と言われることもありますが、私の場合は9,000時間もかかりました。
(詳細については、「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」をご参照ください。)
いずれにしろ、多くの勉強時間が必要なことに変わりはなく、最小の勉強時間で選択科目を攻略する必要があります。
3) ファイナンスの知識がつく
経営学をおすすめする3つ目の理由としては、「ファイナンスの知識がつく」ことが挙げられます。
経営学では、ファイナンス理論の基礎について学習します。
ファイナンスとは、お金の流れを管理することを意味しており、資金の調達方法ごとにかかるコストや企業・事業価値評価といった内容を学びます。
公認会計士として監査業務を行う際に、企業の事業内容や事業の置かれている環境を理解することは、必須となります。
そして、企業は事業ごと・プロジェクトごとに、資金の調達源泉やその事業の価値評価を行い、事業に関するあらゆる意思決定を行っております。
つまり、ファイナンスの知識は監査を行う上で要求される知識であり、ファイナンスの基礎知識を学べる経営学を、試験の段階で学んでおいて損はないです。
以上より、「ファイナンスの知識がつく」ことは、経営学をおすすめする理由と言えます。
(ファイナンスについては、「会計とファイナンスの違いは?関連資格もご紹介!」も合わせてご確認ください。)
企業の価値を評価するためには、財務分析の知識も必要となります。
そして、収益性・安全性・成長性といった切り口から、企業を財務分析するための基礎知識を学べるのが「ビジネス会計検定」となります。
ビジネス会計検定の詳細については、「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご参照ください。
3. 経営学の勉強対策
1) 2つの分野がある
経営学の勉強対策として、まず押さえてほしのが、経営学は大きく分けて、以下の2つの分野に分けられるという点です。
・ファイナンス理論
・経営戦略論
・モチベーション理論
・リーダーシップ論
・コーポレート・ガバナンス論
大枠を理解していないと、対策を誤ってしまう可能性があるため、2つの分野があるという点をまず押さえてください。
各分野の対策について、以下で順に解説していきます。
2) 計算問題
計算問題の勉強対策としては、「公式を暗記する」ことと、「問題集を解く」ことの2つを徹底することが考えられます。
① 公式を暗記する
ファイナンスの公式は、とにかく暗記してください。
数も限られているので、割り切って丸暗記した方が得策です。
公式の暗記というと、「応用力がなくなる」と考える人もいるかもしれませんが、公式の使い方、つまりは解法について理解すれば、応用力は十分つきます。
② 問題集を解く
では、公式を使った解法を理解するには、何をすればいいのでしょうか?
特別なことをする必要はなく、王道ですが問題集を反復して解くのが、効果的な方法と言えます。
解法というのは、問題を解くために使われるものであるため、問題集で実際に問題を解く中で理解していくのが、一番手っ取り早いです。
理解できているか否かを判断する1つの指標として、「問題を見たら、解放がすぐに頭に浮かぶか?」といった点を意識してみてください。
解法がすぐに思い浮かぶのであれば、その解法は理解できていると判断して問題ありません。
初めて問題集を解く時は、解けたか否か、あるいは、主観的でかまいませんので、間違えやすい問題か否か、チェックをつけてください。
2回目の復習の際に、全ての問題を解きなおすのか、チェックをつけた箇所だけ解きなおすのかでは、勉強効率に格段の差があります。
ただでさえ勉強時間を割くことができないのが、選択科目。
そのため、効率的に学習に取り組む必要があります。
3) 理論問題
理論問題に関しては、テキスト・答練や問題集など、予備校から与えられた教材だけをやることが大切です。
深入りし過ぎないでください。
試験委員対策のため、自分で書籍を読むなどはもってのほかです。
理論問題に関しては、勉強し始めるときりがありませんので、周りと差をつけられなければOKと割り切って勉強する必要があります。
学習の順番としては、以下を参考にしてみてください。
② テキストのうち、その他の箇所
③ 答練で出題された内容
④ 問題集の内容
*時間がなければ③まででOK。
問題集より答練が優先されるの?と思われたかもしれません。
これは、答練の方が直近の試験委員対策が反映されているためです。
計算問題にしろ、理論問題にしろ、経営学に関してはいかに最小の努力で、周りに差をつけられない程度の点数をとるかがポイントとなります。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
4. 終わりに
公認会計士試験の選択科目は経営学を選んだ方がよい理由や、勉強のポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
試験直前に勉強する人も多いかもしれませんが、事前に傾向と対策を把握しておくことで、精神的にゆとりをもって日々の勉強に取り組みましょう。
5. まとめ
◆多くの受験生が選択する経営学を選ぶのがおすすめ。
◆周りと差をつけるための科目ではなく、周りに差をつけられない程度に勉強するのがポイント。